夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

「旅行支援」「マイナポイント」「ふるさと納税」の3バカ政策

2023-01-13 11:28:01 | 社会

1バカ「旅行支援」
 政府の旅行支援対策が1月10日に再開した。これは、GoToトラベルがコロナ感染再拡大で、1兆3500億円の予算が使いきれず、名前を変えて再スタートしたものである。
 この政策には、Yahooニュースのコメント欄を始め、「税金の無駄遣い。旅行しない人には恩恵が無く不公平」という声が多数上がっている。確かに、旅行する人には、その支出の一部が税金で支払われるというもので、旅行できる金銭的時間的に余裕のない人には、一円の恩恵がないからである。特に、生活困窮者は、旅行する余裕などないので、まったく恩恵を受けず、富裕層とは言えないまでも一定の生計に余裕がある人にだけ恩恵があるという意味で、不公平な制度なのは明らかである。
 そもそも、コロナ危機での旅行業界を支援するという目的なら、業界の雇用に補助金を支出するといった欧米で実施された政策の方が、直接旅行業界を支援できるのである。さらに言えば、コロナ危機での困窮は、旅行業界だけでないので、ことさら旅行業界だけを支援する理由は全く不明である。
 根本的には、この施策が旅行業界の支援に本当になっているかも疑わしい。コロナ危機で感染の不安から旅行を控えていた人たちは、いくらか安全になったと思えば、旅行支援による割引がなくても旅行に行くのである。割引があるから利用するだけで、割引がなければ旅行に行かないという者は極めて稀だろう。旅行支援が旅行者を増加させるかどうかは、全く疑わしい。旅行業界の感染への安全策を支援する方が、旅行者を増加させる効果は狙える。さらには、「宿泊施設では人手不足や事務手続きの煩雑さによるスタッフへの負担が増え、離職者が増えたという声まで上がっています。 」というニュースさえある。(2022/11/9朝日放送)
 
 このような馬鹿げた政策を実施しているのは、恐らく日本だけだろう。例えば、ドイツで実施されている公共交通機関を9ユーロで乗り放題という政策は、旅行者以外の多くの物価高騰に喘ぐ通勤労働者を支援し、マイカー利用を減らし、CO2の排出量を減らすことに貢献するという社会的意味を持つ。日本のように、社会的な意味もなく、一部の業界や旅行をする者だけに多額の税金を譲り渡すというような政策は、日本以外では不可能と言っていいだろう。

2バカ「マイナポイント」
 社会的な意味はなく、一部の業界や人に多額の税金を譲り渡す政策は、マイナポイントもふるさと納税も同様である。
 マイナポイントは、マイナンバーカードを取得した者に、総額2兆円を超える予算を供与するというものだが、これも社会的な意味はまったくない。
 国民への番号付与という制度、国民識別番号制のは、ヨーロッパ諸国で始まり、主に社会保障や税負担の公平性と行政事務の簡素化を目的としたものである。例えば、税負担の公平性では、富裕層の複数の所得を同一番号で管理し、税逃れを防ぐという目的を持つ。
 政府は、国民識別番号制の目的を前面に出し、それを国民に訴えればいいだけである。税逃れを防ぐ目的がありながら、2兆円もの税金を投入するというのは本末転倒である。

3バカ「ふるさと納税」
 ふるさと納税も大バカ政策としか言いようがない。その目的は、故郷や地方を思う気持ちをその地域への寄付によって貢献することで、都市と地方の税収格差を縮めることにあるという。しかしその実態は、その「寄付」は返礼品目当てであり、「故郷や地方を思う気持ち」などとは無関係となっている。それは自治体間で高額返礼品競争が起こり、「お得な」返礼品がある自治体が収入が多いことで明らかである。それは、本来、寄付に返礼などあり得ないにもかかわらず、寄付額が所得税・住民税の控除されるなどという寄付の主旨とは正反対の制度となっていることに起因する。そのため、居住している自治体の税収減を招くという、馬鹿げたことが起きているのである。居住している自治体の税収減は、行政サービスの低下をもたらし、ふるさと納税を利用しない多数の者の不利益をもたらすことにもなるのである。
 返礼品を提供するのは、その自治体内のすべての産業ではなく、ごく一部の業者に過ぎない。それは、行政との繋がりが深い業者であり、税金を使ってこれらの業者だけに利益をもたらすという著しい不公平な構造をも生み出している。このような著しい不公平が、「寄付」という美名のもとに行われている極めて不合理な制度なのである

目先の損得だけに目を向けさせ、一部の業者だけの利益に貢献
 これら3つの政策に共通しているのは、目先の損得勘定だけに目が行くよう設計されていることである。割引で旅行ができれば得、マイナポントがもらえれば得、高額な返礼品をもらえれば得、そういう「餌」で国民を釣る制度と言っていい。利用すれば「得」ということから、マスメディアもその欲望を満足させるため、どうすれば「もっと得」か、という記事ばかり報道している。目先の「得」が、それがどのような結果をもたらすのかは、新聞の片隅や一部のメディアを丹念に探さないと理解できないようになっているのである。
 これらの政策が不公正で不合理なのは、それだけではない。これら制度が、主にいわゆるデジタルを通じて実施されるので、デジタル関連業者に多大な利益をもたらしているからである。旅行支援は、楽天トラベルなどのデジタルツーリズム業者に、マイナポントは、デジタル関連産業全般に、ふるさと納税も
その間に「ふるなび」などのデジタル業者が入り込み、手数料収入を得ている。
 それは、自公政権のデジタル産業の育成という方針で実施されているのであるが、オリンピック同様に、一部業者と行政・政治との結びつきも加速させる。まだ表にはでないのだが、いずれ政治とデジタル産業との贈収賄等の癒着がメディアを賑わすのも、そう遅い時期ではないだろう。


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