テキスト主体

懐中電灯と双眼鏡と写真機を
テキスト主体で語ろうとする
(当然、その他についても、語ったりする)

その昔、好きだったラーメン

2013-07-09 23:11:13 | 脱線して底抜け
まだ、ラーメン屋というものに、ランキングとか、口コミとか、テレビで紹介などという、余計なお世話が押し寄せる前の時代、ごひいきのお店がありました。
お品書きの一番高いのでも、500円という価格で、いつもは爺さんひとり、タマに婆さんの姿も見えるというお店でした。
そこで、こだわりのお気に入りが、もやし。
おそらくは、婆さんがやっているのかと思うのですが、きちんとヒゲと芽を切り取ったモヤシを入れてくれる。最近では根切りモヤシがスーパーで売ってたり業務用のヒゲとりモヤシもあるらしいのですが、そういうのとは違う、シャキッとしたモヤシをパササッと入れてあるのが、もう大層歯ごたえが良くて、ある意味、食べる快感でした。
幾度となく通うウチに、モヤシ増量とか、バター一かけとか、いまで云うトッピング追加もしてくれるようになり、ますますお気に入りになり、いろいろと爺さんともお話しさせていただきました。モヤシは生の冷たいものを入れるより、煮えてしまわない程度湯煎して温かいものの方が好きとか、ゆで卵や生卵より、半熟+加減が好きとか、好みのトッピングがだんだんと作られていきました。半熟気味のタマゴがモヤシに絡んだ食感が美味しいねなんて話をしてるウチに、爺さんが、あらかじめバターを溶かしたフライパンに、モヤシと溶き卵を入れて、ごくごく軽く炒めたものを、載っけてくれるようになりました。このラーメンと、小ご飯で500円。なんど食べても飽きない、食感の妙と、タマゴの甘みとバターの塩の効いたモヤシを、麺と一緒にほおばる刹那、味の調和が口中に広がり、思い出すだけでも、舌の両脇から唾液がにじみ出てくる、文句なしに好きな味のラーメンでした。
残念ながら、いまはもうありません。自分で似たようなものを作ることは出来ますが、ラーメンの味もさることながら、いくら丁寧にヒゲとりしても、あのモヤシの食感とはどこか違うのです。