【気まま連載】帰ってきたミーハー婆⑧
ワクチン接種と「17年ゼミ」
岩崎邦子
今年も半分が過ぎてしまい、年齢を重ねるほどに月日の経つ速さを実感する。
それにしても、コロナ騒ぎはいつまで続くのだろうか。そんな日々の中、隣に住む息子家族や遠くに住む娘家族からは、高齢者になった私たちを、小さなことも含めて何かと気遣ってくれているのは嬉しいものだ。
コロナワクチンの接種が、5月から後期高齢者から順に案内が始まった。ところが、接種申し込みに関して、電話は一向に繋がらないし、ネットでの操作もままならない。そんな話題ばかりが報じられていた。日本での混乱ぶりを、アメリカに住む娘も知ることに。
日本に居る娘の友達は、接種申し込みの電話受付をバイトでしていたが、電話が繋がった途端、
「何で、繋がらないんだ!」
と、しつこく、しつこく、大声で怒鳴られることが、度々であったとか。
人は忍耐と焦燥から解放された途端、怒りが爆発してしまう。通話時間を少しでも短くして、他にも待っている人がいるという考えには至らないようだ。
娘とはLINEでの無料電話機能を使って、時々の近況を話すことにしている。彼女はファイザー社のワクチン接種をした感想を、「参考までに」と、こう教えてくれた。
1回目のワクチンを摂取した翌日、腕の痛みが酷い。それを聞いた孫娘(アメリカの大学在学中の次女)は、注射の後に腕をぐるぐる回すことが、アメリカの若い人の通例になっていることを教えてくれたそうだ。
2回目の方が痛みは強いとのことで、「腕ぐるぐる」を実践したところ、腕の痛みが軽かったとか。ま、こうしたことは、個人差もあるだろうことは百も承知である。
我が老夫婦もワクチンを摂取する日が。無事に接種が終わった。後は待機時間である。そこで娘から聞いたことを思い出す。そこで二人は、人の目を少しは気にしながら腕をぐるぐる、と。うーん、効果抜群だった。
娘から聞いたアメリカの近況には、ワクチン以外の気になる話題もある。それが「17年ゼミ」。
「5月に入ってから大量に発生したのよ。もう凄くて大変!」
「ふ~ん。まだ、まだ、日本のセミの鳴き声は聞かれないわ」と私はのんびりと答える。「そういえば、ゴルフのアメリカツアーのテレビ画面で、木にびっしりと小さめのセミが群がっていたけど……」
「それ、それ! 玄関前も、駐車場もセミの数が凄くて! ベランダにも怖くて出られない!」
娘の家のまわりには、樹木が多い。少し行くと、昔は交通路としての運河があって、両サイドの道は散歩やサイクリングを楽しむ人たちがいる。
私の拙い知識では、蝉は地下生活から7年を経て地上に出てくるではなかったのか。それにしても「17年ゼミ」とは何なの。私の聞き間違いかしら。そう思って後日、娘に問い合わせると、やはり「17年ゼミ」で間違いないという。
ネットで調べてみると、「17年ゼミ」とは周期ゼミ・素数ゼミの一種で、16年間は幼虫として土の中で育ち、17年目に成虫になって飛び立つ。主に北米で大量発生するらしい。
ヤフー記事には、こんな面白いエピソードも。米東部メリーランド州や首都ワシントン、中西部オハイオ州の一部地域で、「17年ゼミ」が大量発生した。6月末にかけて、オスがメスに求愛のため鳴き、大合唱になる。
ちなみに、娘の住んでいるニュージャージー州のプリンストン市辺りが北限であるらしい。人を噛んだり、刺したりはしないが、木々の幹をはい回り、大きな羽音で飛び交う。うまく飛べなくて、建物や窓、車、人にぶつかっては、腹を立てたように激しい騒音を立てるとか。
この「17年ゼミ」が最も注目を浴びたのは、6月9日のことだった。バイデン大統領が就任後初の外遊で大統領専用機「エアフォース・ワン」に乗ろうとしたとき、セミの1匹が首に留まる。大統領は手で払いのけ、笑いながら記者団に忠告した。
「セミに気を付けて、私も今やられた」
結局、同行記者団の乗る飛行機のエンジン内部にセミの群れが侵入して離陸できず。別の機体で記者らは遅れて出発することになった。
周期的にやって来ると言うと、オリンピックもそうだ。東京オリンピック・パラリンピックの開幕が直前に迫った。でも、世界中に広がっているコロナ感染の幕引きが告げられない。識者たちの論争も続く。
100年程前に世界的に大流行したスペイン風邪は、ワクチンがなくても3年程で、ほぼ収束した。政府は声高にコロナワクチン接種を呼びかけているが、はたしてその効果は……。
梅雨明けを待っているが、酷暑になれば、それはそれで愚痴るのが人の常。日々の生活には無意味な恐怖心をなくして、自分らしく元気に過ごす。それに徹するしかないだろう。
【岩崎邦子さんのプロフィール】
昭和15(1940)年6月29日、岐阜県大垣市生まれ。県立大垣南高校卒業後、名古屋市でОL生活。2年後、叔父の会社に就職するため上京する。23歳のときに今のご主人と結婚し、1男1女をもうけた。有吉佐和子、田辺聖子、佐藤愛子など女流作家のファン。現在、白井市南山で夫と2人暮らし。白井健康元気村では、パークゴルフの企画・運営を担当。令和元(2018)年春から本ブログにエッセイ「岩崎邦子の『日々悠々』」を毎週水曜日に連載。大好評のうち100回目で終了した。