白井健康元気村

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誰もが抱える「痛み」 【気まま連載】帰ってきたミーハー婆㉒

2021-10-28 05:20:21 | 【気まま連載】帰ってきたミーハー婆

【気まま連載】帰ってきたミーハー婆㉒

誰もが抱える「痛み」

 

岩崎邦子 

 

 

「痛いよ~、痛いよ~」
 声にはならぬ声で、何度も叫びながら目が覚めた。寝付いてからどのくらい
経ったのだろう。痛む左足の太ももをさすりながら、左足全体のあちこちが痛むことに恐怖が走る。
 何年か前にもこうした体験があった。その時の整形外科医の診断は「すべり症」。簡単に「すべり症」というが、調べてみたら「腰椎すべり症」というらしく、積み木のように連なる腰椎が、文字通り前方へ滑り出してしまい、様々な症状を引き起こすという。

「手術をしたほうが良い。良い先生を紹介します」
 と、手術をすすめる医師に、私は懇願した。
「手術は嫌です。何とか……」
 こうして薬の処方をしてもらうことに。。
 痛みの場所や種類によって、適切な手術や、より進んだ医術に委ねることが良いことも理解はしている。
「すべり症」には、背骨や椎間板などの変性によって起こる「変性すべり症」と、私のような腰椎分離症によって続発する「分離すべり症」がある。原因は違うが、出現する症状はあまり変わらない。
 その「出現する症状は変わらない」とは、腰痛になる人が多いようだが、私の場合は腰痛というより、左腰から左足全体が強い痛みと痺れるような違和感を伴ったものであった。
「痛い、痛い」と言いながらも、激痛ではないので処方される薬を飲みながら、日常生活は何とかこなしてきていた。「自然治癒力が大事なのよねぇ」「無理しない程度に、なるべく体を動かすことが大事よ」と、自分に言い聞かせてもきた。
 グループ活動や行事など、少し苦手でも積極的に出るように心がけた。いつの間にか薬の処方を頼むこともしなくなって、5、6年になるだろうか。
 好天になった10月24日の日曜日、白井健康元気村「農業クラブ」の収穫祭があった。サツマイモと落花生掘に参加するため、夫と自転車で出かける。収穫祭の細かい情報は、ブログ管理人の山本さんから詳しく説明されている。
 ところで、この農園の管理は、柳橋三郎さんが一手に引き受けていた。作物の植え付け、草取り、水の供給など、大変な作業である。が、ご事情が出来、しばらくの間は農園管理が無理となった。
 その柳橋さんであるが、彼が元気村に入村されて間もなくの頃、定例の村会に出かけるために、住まいの自転車置き場から出かける時に、その出入り口付近で出会った。
「あら? 柳澤さん?」
 私が声をかけると、にこにこしながら、
「あ、Yさんを待ってます」
 あとで、私は名前を間違えていることを他の村民の方から知らされた。その後の村会に出かける際に、道の途中で会ったりしても、またもや「柳澤さ~ん」と、声をかけていた。もう、ほとほと自分に呆れてしまう。
「サブちゃんと、呼んでください」
 と、嫌な顔もしないで、柳橋さんは笑っておられた。
 そんな失敗を夫に伝えると、「人の名前を何回も間違える奴がいるか」と、叱られたのだが……。
 農園には季節によって作物の植え付けがあるが、それ以前に草取り作業が大変だ。時々私たちが行くと、横山久雅子さんが熱心に朝早くから作業をされていた様子に出会う。
 畑を耕し、苗を植え、支え棒がいる作物には、その準備がある。もう、次から次と段取りが良く、熱心な柳橋さんには感服しきりだ。
 さて、今までにもいろいろな作物の収穫祭があったが、柳橋さんはその収穫の仕方・段取りなど、いつも丁寧に説明されてきた。ブルーベリーが実る頃になると、村民ではない人が早朝にやってきて、大量に収穫していくこともあって、村民には名札が配布された。
 他にも提案があって、夏野菜のキュウリやナスやトマト、ブルーベリーに関しては収穫する曜日が決められて、苗代もあることから、採る個数と、値段も決められた。
 ナスが大好きな夫なので、夏の間はよく畑に出かけたものだ。熱心に作物の手入れをされているサブちゃんと、横山久雅子さんはニコニコ笑顔で迎えてくださった。都合で午前中に行かれない時には、午後に出かけることも。
 最盛期のナスやキュウリは、びっくりするほど大きいのが無数に実ったままである。でも、収穫に来る人が少ないのだろう。あー、もったいない。香味野菜の大葉も沢山茂っており、夏野菜と共にこれも隣の家族におすそ分けをして喜ばれてきた。野菜の他にも百日草が畑に咲き誇り、やさしい彩りを添えていたことを思い出す。
 今回の収穫祭には玉井村長の陣頭指揮で執り行われた。長靴を履き、農作業用の手袋をして、土の重さ、硬さなどで慣れない作業ながら、精いっぱい頑張った。収穫に一段落が過ぎて、柿の木の根元付近を見ると、「ムラサキシキブ」が奇麗な紫の実を付けていて、その美しさに見入ってしまった。
 思ったより多くの収穫量があり、会員の人数分に分けられていった。三種のさつまいも(私にはあまり見分けがつかない)と、落花生のオオマサリを、自転車の後ろの荷台に乗せて、帰路につく。
 木下街道を自転車で通るのは怖いので、住宅街や学校脇、梨畑の脇を通る道を選んでいる。下り坂になった道路は楽だが、上りになると、ペダルを漕ぐことが難儀だ。
 後ろに荷台がない夫は、身軽にどんどんと先を走って行く。信号のあるところも青であれば、私を振り返ることもせず、夫は平然と渡って行ってしまった。精いっぱいペダルを漕いでも、追いつかない。道を横断する時には必ず赤信号に引っ掛かり、私はどんどん遅れてやっと家路についた。
 収穫祭の作業ですっかり汗をかいて、重い自転車を力いっぱい漕いできて、駐輪場についてみると、夫は家の鍵も持たないで、ケロリとしている。私は無性に腹が立ってきた。
 その昔、ロサンゼルスに駐在していた時、日本からの客人を乗せて夫の車と私の車の2台で出かけたことがあった。行先には少し不案内である時には、信号が変わりそうな時には停まるか、先の道の路肩で後続車を待つのが常識だろう。なのに、夫はどんどん先に行ってしまった。
 もう、何十年も前のことなのに、執念深く覚えていることに、自分でも驚くが、この時のことを思い出した。昔も今も、共に行動する時の常識や私への思いやりもない人だと、腹立ちまぎれに夫に怒りの言葉をまくし立てた。あ~あ、我ながら女は怖い! いや、女房は怖い!
 話はすっかり横道にそれてしまった。
 収穫祭での産物はお隣の息子の家にもおすそ分けをした。落花生のオオマサリははじめてなので、その茹で方をネットで調べることに。さすがに普通の落花生とは大違いで、何と美味なるかな! 
 翌日の月曜日には、八千代コースで行われているパークゴルフの会に出かけた。プレー中は、元気だったし、成績もいつもより良かったので、気分は良好であった。が、終わって家路につく頃には、すっかりヘロヘロになり、疲れがどっと押し寄せてきた。
 いつも元気そうに見える人、少し親しくなった人に、体調を聞いてみることがある。自分の体の不調や痛みは口には出さない人もいるけれど、あっちが痛い、こっちが痛いと、大袈裟に騒ぎ立てる人も。高齢になれば体のどこかに歪みが出てきても、上手に付き合わねばならない。
 夜中のあの強烈な痛みと恐怖も、いつもの時間に起きて、ゆっくり動いているうちに、なんとか静まってくれた。やれやれ、といったところである。

 

 

【岩崎邦子さんのプロフィール】 

昭和15(1940)年6月29日、岐阜県大垣市生まれ。県立大垣南高校卒業後、名古屋市でОL生活。2年後、叔父の会社に就職するため上京する。23歳のときに今のご主人と結婚し、1男1女をもうけた。有吉佐和子、田辺聖子、佐藤愛子など女流作家のファン。現在、白井市南山で夫と2人暮らし。白井健康元気村では、パークゴルフの企画・運営を担当。令和元(2018)年春から本ブログにエッセイ「岩崎邦子の『日々悠々』」を毎週水曜日に連載。大好評のうち100回目で終了した。


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