白井健康元気村

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くしゃみをしたら 【気まま連載】帰ってきたミーハー婆㊼

2022-04-21 05:32:12 | 【気まま連載】帰ってきたミーハー婆

【気まま連載】帰ってきたミーハー婆㊼

くしゃみをしたら  

岩崎邦子 

 

 

「ハ、ハクション!」
 こらえていたけれど、思わず出てしまった。くしゃみである。教室のあちこちの席から「ブレス・ユー!」「ブレス・ユー!」の声を掛けられた。
 もう35年は経つだろうか。夫の赴任していたロサンゼルスにあった無料の英語学校での出来事だ。この頃の我が息子は日本の学校、娘はニュージャージー州の学校、私達夫婦はロスと、一家離散状態であった。
 駐在員の妻は日本からの来客の接待をすることはあっても、この地で働くことは出来ない。当時の一流企業の奥様たちは、お茶会や、チェスやカードゲームなどで、優雅なお付き合い(?)があるらしい。
 でも、私はそうしたお仲間にはとても入れないし、日本人だけの集いには躊躇もあった。そんなわけで、もっぱら「一人行動」をしていたのである。
 リトルトーキョーにあった日本のスーパーマーケット「ヤオハン」のインホメーション広場には、いろいろな情報が掲げられていた。
 ロスの北にあるバーバンク市のお宅で絵を習ったり、フリーウェイの10番を利用してサンタモニカにあるYMCAのプールに行ったり。日本では恥ずかしいデブの私だが、「アメリカでなら可愛いものよ」と、うそぶきながら、金髪のお兄さんから泳ぎを教わった。
 やがて見つけたのが、チャイナタウン近くにある無料の英語学校「エバンス・コミュニティ・アダルトスクール」。週2日通うことになったが、日本人のおばさんは私一人である。大半はメキシコ人を含むヒスパニッシュ系の若者が占めていたが、中国や韓国のおばさんも。
 ランチタイムになると、中国の人たちは一塊になって、それぞれ持ち寄った総菜を分け合う。だが、ゴミを床に落としても平気である。授業中でも平気で大あくびをしたり、鼻をかんだり。いや、それが当たり前のような振る舞いに驚いた。
 その中にかなり美人がいたが、文化大革命の頃に女優をしていたとか。片言英語の会話から知り得たのだが、もっと細かく知りたくても、如何せん、力不足の私が情けない。
 彼女はとても社交的な人だった。気が付いたらアメリカ人の彼氏が出来ていて、学校への送り迎えをされ、ぐんぐんと会話が上達たことに驚かされた。私にも「彼氏を作ったら?」などと、妙な親切心のアドバイスをされた。
 韓国の人たちは、誰かがロスに居住を持つと、次々と一族郎党が集まってくるらしく、コリアタウンはどんどん広がっていた。その一人であろう、18歳の青年がクラスにいたが、「徴兵制度を免れるために、この地にやって来た」と言う。
 クラスの多数派であるヒスパニッシュはというと、ブロークンであっても、何も臆することもなく、英語での会話をしていた。それは働きに来ているのだから、ある程度話せなければ、仕事の機会を得る事は出来ないからだ。
 さて、私自身はどうだったのか。ペーパーテスト(日本の中学1・2年生レベルの英語)になれば、成績は良いのに、いざ会話となると、からきしダメだった。
「どうしてクニコは話さないのか?」
 体格が良くて優しいメキシコ人の若者に不思議がられるほど。その彼が一瞬、悲しい表情を浮かべた。
「オレなんか、テストの成績は、さっぱり駄目なんだ」
 でも、私には英語でコミュニケーションを取れる彼らが、うんと羨ましかった。
 クリスマスやハロウィーンの行事になると、巨大なケーキが用意されたが、日本ではあり得ないようなブルー・ピンク・イエローの原色のデコレーションに、げんなりだった。
 すっかり横道にそれてしまったが、くしゃみの話に戻そう。
 冒頭で記したが、くしゃみをした人に「ブレス・ユー(Bless you.)」とは、「お大事に」ということのようだ。「God bless you. (神のご加護がありますように)」という意味を表しているのだとか。
 16世紀にペストの大流行したとき、人々は「神のご加護を」と願った。「くしゃみをすると、魂が飛び出す」と信じられていたので、悪魔や邪悪な魂が侵入するのを防ごうと、神に祈ったのだろう。
 くしゃみの後で「Bless you.」と言われたら、学校でも道でも公園でも全然知らない相手にでも、「Thank you.」又は「Thank you, you too.」と、答えるのがマナーなんだって。
 ところで、くしゃみは何故出るのだろうか。
 鼻に侵入したウイルスやほこりなどの異物を、激しい呼吸(くしゃみ)で体外に出そうとする体の反射反応なのだ。異物を吸い込んだわけでもないのに、くしゃみをすることが。一体、どうして?
 そのケースの一つは「太陽を見た時」だ。日本人の4人に1人が強い光を見ると、くしゃみが出てしまう。その原因は、脳神経の一つである三叉神経に求められるらしい。
 なんでも、「強い光を見た!」という信号を、誤って「鼻がむずむずしているぞ」と勘違いをしてしまうのだそうだ。日本では「光くしゃみ反射」、アメリカでは「アチュー症候群」とされている。
 くしゃみは、1回で終わらない。日本ではその回数によって、いろいろな事が言われている。地方にもよるのかもしれないが、子供の頃から聞いていたのは、「一 褒められ、二 そしられ、三 惚れられ、四 風邪をひき」だった。
 高校生の頃は、ちょっとした話題でもなぜか、笑いの種になる。悪口を言っていた訳でなくても、
【笑いこけ くしゃみしたかと 友に問い】
 なぁんて、妙な句が出来た。
 ちなみに、くしゃみをし続けたギネス記録は46時間30分余で、441回なんだとか。ひゃぁ~。
 くしゃみに関しての噂は、世界の他の国にもある。面白いので紹介しよう。

●ドイツ―1回は凶、2回は物がもらえる、3回は幸運のしらせ。(人々は、何があっても2回以上を心掛けることだろう。)
●オランダ―くしゃみ3回すれば空が晴れる。(楽しみな行事には、てるてる坊主ではなく、3回のくしゃみを、したいことだろう。)
●インド―食事中にくしゃみが出るのは、その人が誰かに想われているから。(ロマンチックな格言だ。)
●アメリカ―目を開けたままくしゃみをすると、目玉が取れてしまう。(うーん、驚きだ。娘や孫からは、聞いたことはないけれど…)

 もう一度、日本で言われている、くしゃみの回数と噂をまとめてみたい。
 
 くしゃみ1回 褒められて
 くしゃみ2回 笑われて
 くしゃみ3回 恋の噂あり
 くしゃみ4回 風邪をひき

 昨今では、コロナ騒ぎが一向に収まらず、外出時に人と話すとき、マスクが必需品となってしまっている。くしゃみが出そうになると、周りにいる人の様子を伺いながら、マスクの上から手でふさいで、「ご迷惑にならないように」と必死になる。
 それでも、くしゃみが2回出た時は、「笑われた」などと思わず、笑顔になるような話題を振りまこう!

 

【岩崎邦子さんのプロフィール】 

昭和15(1940)年6月29日、岐阜県大垣市生まれ。県立大垣南高校卒業後、名古屋市でОL生活。2年後、叔父の会社に就職するため上京する。23歳のときに今のご主人と結婚し、1男1女をもうけた。有吉佐和子、田辺聖子、佐藤愛子など女流作家のファン。現在、白井市南山で夫と2人暮らし。白井健康元気村では、パークゴルフの企画・運営を担当。令和元(2018)年春から本ブログにエッセイ「岩崎邦子の『日々悠々』」を毎週水曜日に連載。大好評のうち100回目で終了した。


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