【気まま連載】帰ってきたミーハー婆⑪
熱中症とデルタ変異株
岩崎邦子
梅雨明け後にやってくる超高温が一番に身に応える。熱中症に罹らないように、パークゴルフの時には、水分補給を十分にして私は気を付けてきた。体が暑さに少しずつ慣れれば、何とかなる。いや、何とかなっていた。運動嫌いの私が、それでも頑張っているパークゴルフ。「よくも猛暑や極寒にも耐えて来れた」と、今までは自負してきたのだが……。
今年からは「年寄りの冷や水」とならないように、無理はしないことにした。気温が比較的低い日を選んで、パークゴルフには夫と出かけることにしよう、と。
猛暑が続いていても、夫は元気。日頃はゴルフ練習場にも通ったりして、絶好調の様子だ。7月28日の総武カントリーのゴルフコンペでは、5回目のエイジシュート83を決めたという。
グループ内では最高齢で、やがて84歳になろうとしている夫だからか、グループの人から賛辞を浴びせられたとか。また、それを聞きつけた他のグルーの人からも、「おめでとう!」の電話とLINEが次々と入り、さすがに嬉しそうだった。
しかし、夫からそう言われても、私は「あ、そう」と生返事。アメリカに住む娘にLINEで快挙を伝えても、「ふーん」という反応だったので、夫はかなり不満らしい。
ま、私の言い分は「ホームコース(鎌ケ谷カントリー)でのエイジシュートだったら、ねぇ」なのだが。実は、プライベートゴルフではなく、コンペでのエイジシュートのほうが、数倍も価値があるのだとか。
ゴルフ大好きの夫が属しているグループによっては、プレーが中止になった日もある。酷暑だけが原因ではなく、8月から首都圏(千葉県など)に出された緊急事態宣言を受けて、ゴルフ場側から出されている諸注意が影響をしているらしい。
さて、このところの関心事は、何といっても東京オリンピックでの日本選手の活躍ぶりだ。メダルの色やその数も好調の様子で、何とも嬉しい。
しかし、日本の金メダルラッシュを上回るように報道されるのが、蔓延に歯止めがかからない新型コロナウイルス。その中でも厄介な「デルタ変異株」になると、感染者数がケタ違いの増加である。感染者の年代は20代と30代が大半を占めているらしいが、それも水ぼうそうと同じレベル、つまり非情に感染力が強い。これまでの新型コロナとは段違いである。
では、一体どれだけ感染力が強いのか。あるテレビ番組で分かりやすく説明していた。水ぼうそうの場合、1人→8人強の感染力。一方、デルタ株の感染力は1人→5~9人だという。ちなみに、風邪は1人→2人に感染し、従来型の新型コロナからは1人→1~3人強に感染するのだそうだ。
いずれにしても、新型コロナウイルスとの戦いに変化が起きているのは間違いない。デルタ株に感染した人のウイルス量は、「従来型よりも最大1260倍も多い」というではないか。でも、テレビ離れの進んだ若者が、どれだけ関心を持って見てくれたのだろう。
こうした情報が若者に理解されるために、何か手段はないのか。高齢者は生活に必要なものを買いに外出する以外、出かけることもほとんどない。家ではテレビを見ている時間が多いから、デルタ株が猛威を振るっていることを敏感に感じ取って、さらに行動範囲が狭くなってしまう。
私が所属しているコーラス・グループが練習するのは、白井駅前センターだ。コロナに感染しないよう、練習時には、コーラス用の歌いやすい素材や形で作られたマスクを着用することになっている。寒い日も部屋の窓を開け、椅子の間隔も十分に開けた。体温を測定し、行き帰りにもマスク着用する。さらに廊下と練習部屋でのスリッパを別にし、自己用のものを用意して履き替えるのだ。そして練習後の椅子を消毒液で拭く。
こうした注意をしているので、小人数にはなったが、楽しく笑いありで、続けて来られた。コロナワクチンの2回接種を終えれば、以前のような人数となるだろう。つまり、秋の文化センターでの音楽祭にも参加出来ると喜んだのだが、8月の練習日は休止となった。
猛暑が続いていることもあるが、首都圏に緊急事態宣言と感染者の大幅増大ニュースで、練習を休みたい人が更に増えてしまったのだという。そんなわけで、音楽祭への参加が絶望的になった。ほんと残念でならない。
フレイルが心配される高齢者にとって、声を出すこと、話したり歌ったりすること、つまり声を出すことが何よりも大事である。ICレコーダーで練習時の様子を録音しているので、当面の間は聞いて歌って、一人で続けるしかないかも。
ところで、隣に住む息子の娘、つまり孫娘は介護の仕事で病院に勤めているので、コロナワクチンは早々に受けた。少し心配なのは孫息子である。東京都内の会社に勤めているが、近郊都市で一人暮らしを始めた。お酒は飲めないし、自炊をしているという。嫁がちょくちょく連絡をとっているようなので、私がとやかく言うことはないのだが…。
もう一人、アメリカに住む娘の娘のこと。日本の大学に留学しているのだが、昨年暮れにアメリカから戻って我が家で3週間ほどの滞留時期を無事に過ごした。寮生活に戻り卒業論文、大学院への推薦入学を得るためのレポート作成や手続きなど、諸々を済ませた。
彼女のような9月入学の生徒は、この6月末が卒業式となった。チャペルでの卒業式風景は、学長や教授らの英語と日本語での訓話などがあり、角帽姿の卒業生の名前が次々と読み上げられた。まるでその場にいたようだが、この様子を我が家からはリモートで眺めたのである。
孫娘の事で一番心配なのは、寮生活が終わり、今は友人とシェアして都内でアパート生活を始めたことだ。来年4月の大学院入学までは、バイトをして過ごすことにしたという。なので、夏休みとはいえ、我が家には容易にやって来れない。
彼女がしているバイトは、「コンサル」なのだそうだ。ざっと仕事内容を聞くと、どうやらコンサルティング(クライアントの経営課題を明らかにし、問題を解決する)のことらしい。そこには学校の先輩や外人もいる職場らしい。
しかし、都心の街中には若者たちが右往左往している。彼女自身はお酒を飲まない。外食ではなく、自炊派だ。もちろん、マスクや手洗いもしっかりしているというが、今一度、孫娘も若者も、心してもらいたい。ウイルスとの戦いには変化が起きているのだ。デルタ変異株に感染した人のウィルス量は、「従来型よりも最大1260倍も多い」ということを。もちろん、私も気をつける。そして、熱中症にも気をつけたいが、フレイルに陥らないように適度に身体を動かすことも大切だ。
【岩崎邦子さんのプロフィール】
昭和15(1940)年6月29日、岐阜県大垣市生まれ。県立大垣南高校卒業後、名古屋市でОL生活。2年後、叔父の会社に就職するため上京する。23歳のときに今のご主人と結婚し、1男1女をもうけた。有吉佐和子、田辺聖子、佐藤愛子など女流作家のファン。現在、白井市南山で夫と2人暮らし。白井健康元気村では、パークゴルフの企画・運営を担当。令和元(2018)年春から本ブログにエッセイ「岩崎邦子の『日々悠々』」を毎週水曜日に連載。大好評のうち100回目で終了した。