【連載】腹ふくるるわざ㉓
うれしい誤算 凍結防止剤
桑原玉樹(まちづくり家)
いつもは「腹ふくるる」話ばかりだが、なんと今回は新年早々「頬ゆるむ」話題である。
雪かきの朝
1月6日の午後から宵の口にかけて関東地方にも雪が降った。
翌7日の朝は積もっていた。駐車場に置いたマイカーの屋根に積もる雪の厚さを測ったところ、なんと12cmもあった。
わがマンションでは、前夕に掲示板で「積もったら皆さんで雪かきを」と呼びかけることにしている。朝8時に館内放送の案内で集まってきた人は20人を超えた。10個のラッセル型シャベル、5個のシャベル、そして各家庭から持参した道具での雪かきだ。
9年前の大雪では40㎝の積雪だったため、昼過ぎまで4時間を超える大作業だったが、今回は積雪量も半分以下。駐車場の通路、出入口、そして地下駐車場へのスロープなど、1時間余りで終了した。
▲雪の朝の国道464号線歩道
歩道凍結
しかし問題が残った。車が通った跡や歩行者が踏み固めた跡は雪かきができない。凍りついてツルツルになっている。特に北側に隣接する国道464号線の歩道は悲惨だった。早朝から通勤、通学で多くの歩行者が既に通っている。
歩行者が通れるように1m程度の幅でとりあえずの雪かきはしたが、踏み固められた雪は路面からはがすことが困難で、どうしても残ってしまう。歩道の路面を露出できたのは部分的にとどまらざるを得なかった。
雪が積もった翌々日の朝、国道464号線の歩道を見て回った。案の定、一部を除いてツルツルに凍っている。わがマンションの建物や植栽擁壁の陰にもなっているので、太陽光の熱で融けることもできない。半分が融けたのは、さらに翌々日の10日になってからだった。
凍結防止剤を要望
降雪地帯の多くの市町村や南関東でも一部の市町村では、生活道路の雪かきを自治会などの住民にまかせたり凍結防止剤を配布している例もあるようだ。そこで3連休が終わった11日、行政に電話で問い合わせた。
「周辺の歩道や歩道橋が凍って危険でした。自分たちで凍結防止剤を撒きます。自治会などに凍結防止剤を配布していませんか?」
これに対して白井市は、「現地を調査し、必要であれば今後の降雪時に凍結防止剤を散布するようにします」、千葉県の印旛土木事務所は、「現地を調査して必要であれば、現地に凍結防止剤を置くようにします」との返答。
いずれも自治会等に配布することはないとのことだった。あまりあてにせずに待つことにした。
県の迅速な対応
ところがだ。12日の朝、国道464号線の歩道の片隅に白い袋が置いてあるではないか。それも100~200mごとに3カ所。袋には「散布用塩―凍結防止剤」と書いてある。
電話した昨日のうちに印旛土木事務所がある佐倉市からここ白井市までやってきて、調査の上、必要と判断しておいて行ってくれたのだ。ありがたいとともに驚いてしまった。こんなに早く対応してくれるとは思ってもいなかったからだ。
嬉しさのあまり、早速お礼の電話をした。担当者は女性。きっと土木の技術職なのだろう。
「降雪の時は、皆さんで散布をお願いします」
と小さい静かな声で、逆にお願いされた。
この欄でも書いたが、昨年はアダプトプログラムの件で印旛土木事務所と3カ月にわたり協議をしたが、結果は認められなかった。
そのため印旛土木事務所に対してはあまりいい印象は持っていなかったのである。しかし今回のこの迅速な対応。印旛土木事務所もなかなかやるじゃないか、と見直した。
▲凍結防止剤の袋
▲歩道の片隅に置かれていた
▲凍結防止剤を3カ所に新設
【桑原玉樹(くわはら たまき)さんのプロフィール】
昭和21(1946)年、熊本県生まれ。父親の転勤に伴って小学校7校、中学校3校を転々。東京大学工学部都市工学科卒業。日本住宅公団(現(独)UR都市機構)入社、都市開発やニュータウン開発に携わり、途中2年間JICA専門家としてマレーシアのクランバレー計画事務局に派遣される。関西学研都市事業本部長を最後に公団を退職後、㈱千葉ニュータウンセンターに。常務取締役・専務取締役・熱事業本部長などを歴任し、平成24(2012)年に退職。現在、印西市まちづくりファンド運営委員、社会福祉法人皐仁会評議員。