大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆定年再雇用後の賃金の決め方

2014年12月19日 10時57分56秒 | 賃金
60歳以降再雇用された嘱託等の高齢従業員の賃金は、
老齢年金の在職中支給停止や雇用保険の高年齢雇用継続給付があり、
企業の賃金管理に大きな影響を及ぼすため、軽々しく考えてはいけない。

公的給付の有効な利用は、企業にとって、賃金コスト、社会保険料などの法定福利費の
軽減などにも役立っている。

○60歳台前半
賃金と年金の合計が月28万円を超えると、その超えた部分につき一定の支給停止が
あるのはご存じの通り。
賃金が75%未満に下がると高年齢雇用継続給付が受給できる場合もある。

○65歳以降
賃金と年金の合計が月46万円(年度により変更有)を超えると、その超えた部分
につき一定の支給停止あり。

一般的に言えば、60歳の定年到達後は嘱託再雇用となることが多いが、その働き方
と年金や雇用保険の受給パターンは次の通りである。
カッコ書きは分かりやすいように説明を入れたが、実際にはもっと多様なことが想定される。

a.社会保険に加入を続けるくらい働くのか(年金の支給停止を受けるか・受けないか)
b.雇用保険に加入を続けるくらい働くのか(高年齢雇用継続給付を受けるのか・受けないのか)
c.老齢年金の繰り下げを選択するのか・しないのか(65歳以降の年金受給に影響)
d.老齢年金の繰り上げを選択するのか・しないのか(60歳台前半及び後半以降の年金受給に影響)

60歳以降の平均的収入パターンを想定すると、次の通りとなろう。
もちろん、社会保険や雇用保険の加入要件に該当する働き方か否かで
収入パターンは違ってくる。

・年金受給までは、「賃金+高年齢雇用継続給付」の2つの収入。
・年金受給以後64歳までは「賃金+年金(一定の支給停止あり)+高年齢雇用継続給付」の3つの収入。
・65歳以降は、「賃金と年金」の2つの収入。

年金と高年齢雇用継続給付は、「賃金」の額に応じて支給停止や給付額等が
決まるので、定年再雇用後でも、従業員側の手取り額は思ったより減じない場合がある。
而して、賃金をいくらにするとどの程度年金支給停止があり、どの程度高年齢雇用継続
が出るかをシュミレーションできるから、効率的な「賃金管理」ができるともいえる。

ただし、注意も必要だ。
確かに、シュミレーションしてみると、公的給付を用いて効率的に賃金管理はできるが、
人事評価など合理的な処遇がないような(金額のみをいじった)「行き過ぎた管理」は、
従業員のモチベーションを下げるなどの弊害も生みやすい。
また、定年再雇用後の働き方は、人によりまちまちなため、会社側が一方的に
その選択肢を狭めたりすることも避けたい。

65歳まで、原則雇用は義務化され、定年後の賃金管理は企業の賃金コストを左右する。
長期勤続の功労に報いた合理的な処遇ラインを見出す努力が必要となろう。


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