
LINEで共謀…逮捕?、絵文字なども対象か
ラインで共謀の一例
21日に閣議決定される組織犯罪処罰法改正案の「テロ等準備罪」は、「共謀罪とは全く異なる」ほど要件を厳格化したとされるが、いまだ処罰範囲が広すぎるとの懸念が残る。これまでの国会論戦を振り返っても、犯罪計画への合意の定義は不明確なままで、身近なコミュニケーションツールであるLINE(ライン)での何げない「表現」まで処罰対象とされかねない。
無料通信アプリとして幅広い世代で使われているラインは、一対一のメッセージだけではなく、複数人でグループを作って同時にやりとりする機能がある。
例えば、大学生の仲間うちでグループを立ち上げると日々の情報を自由に投稿することができる。そこにある日、「米軍基地建設が始まる。座り込みで実力阻止しよう」と1人が書き込み、他のメンバーが言葉や絵文字、スタンプで次々と賛同したらどうなるだろう。
法案や国会答弁の内容を踏まえると組織的威力業務妨害罪の「共謀」で全員逮捕される可能性がある。
先月27日の衆院予算委員会で金田勝年法相は「メールやラインでも(犯罪の)合意が成立することはあり得る」と述べた。「ラインのグループの性質が一変すれば、組織的犯罪集団になり得るのか」との追及には、「合意に加え、実行準備行為があって初めて処罰される。閲覧した事実だけでは、具体的、現実的な合意が成立することは想定できない」とかわしている。
実行準備行為とは、政府が「共謀罪との違い」として強調する要件だ。法案には「その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたとき」に処罰できる、とある。与党内で示された資料では「必ずしも『客観的に相当の危険性』を必要としない」とされ、それ自体が無害な行為でも要件を満たすことになる。
従ってグループ内の1人が現場に向かうための切符を手配すれば「厳格な」要件はクリアされる。また合意の定義を巡っては、2005年の共謀罪法案審議の際に「目くばせでも成立する」との答弁があり、最高裁も03年、具体的な指示や打ち合わせのない「黙示的な意思の連絡」で足りるとする判決を出している。今国会の答弁では、意思表示の手段も問わないとされたため、絵文字やスタンプによるあいまいな「意思」ですら、捜査機関のさじ加減一つで、計画への合意と捉えられかねない。
京都弁護士会の「共謀罪新設阻止プロジェクトチーム」座長の秋山健司弁護士は、こんな例も挙げる。
窃盗を繰り返す不良集団と嫌々付き合う「気弱な少年」がラインの画面に「今夜11時集合」のメッセージを見つける。
無視はできないので「同意とも取れる」スタンプを投稿して布団に入る。
しかし、集団のうち1人でも集合場所に行ったら、やがて少年の家に警察官がやってくる。
秋山弁護士は「実際に処罰まで至るかは別にして、投稿に犯罪の疑いがあると判断するのは捜査機関。逮捕の可能性は十分ある。共謀罪はコミュニケーションを標的にするため、捜査は盗聴や自白が重視される」と指摘する。
ラインのメッセージやメールのやりとりは現行の通信傍受法によって傍受することが可能だ。
金田法相はテロ等準備罪を傍受の対象犯罪にするかは「検討すべき課題」と含みを持たせている。
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LINEでのやり取りは、直ぐ追跡され一網打尽に捕まる様だ。