札幌でワインを飲もう スープカレーを食べよう

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カフェバーなんてものが流行ったが、一体あそこで何を飲み何を語らっていたのだろう。(ラーメン興亡11)

2006年11月24日 | 書いたもの
 旭川でラーメンの修行をしていた、息子の未来が帰ってきた。
子どもの頃の坊主頭はそのままで、
けれど背丈はマコトさんを少し超えていた。
いろいろな噂を旭川でも聞いていたのだろう。
それでも、苦しい思いを顔には出さず、
マコトさんの前に手をついて、ぬりかべ屋でラーメンをやりたいと言った。
マコトさんは嬉しかった。
未来の手をとった。
1月後、ぬりかべ屋は未来が中学生だった頃の店に再改装された。
ぬりかべ屋は、ラーメン一本で勝負をしているころの佇まいに戻った。
ユミさんも久しぶりに店の名前の入った前掛けを締めた。
昔の暖簾が引っ張り出された。
安さんの製麺所の名前が入ったものだ。

開店の前日、入口ですこし怯んだマコトさんが、意を決して店にはいると
厨房には、安さんの麺のバットが高く積まれていた。
かつてマコトさんの定位置だった、厨房の真ん中に今は未来が立つ。
その横には、安さんが帰ってきている。
その隣にユミさん。どんぶり洗いの僕も、ここに立つのは何年ぶりだろう。
「いらっしゃい」
未来が、父親と同じ声で父親を迎えた。
「お帰り」とユミさんが言葉をつないだ。
安さんは怒った顔でマコトさんをにらみ、
「未来の味ば、みてやれ」と言った。
マコトさんは言葉が出なかった。

コメント (2)
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