阿部ブログ

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米下院・アジア太平洋問題小委員会で、台湾政策法 が可決~F16C/Dが輸出されるか?~

2013年05月02日 | 台湾
米下院・アジア太平洋問題小委員会(委員長:Steve Chabot)で、2013年台湾政策法案 (H.R.419, Taiwan Policy Act of 2013)が可決。この後は下院外交委員会を経て、下院本会議で議決される必要がある。2013年台湾政策法案のトピックは、台湾が切望していたF16C/D×66機の売却が盛り込まれている点。既存のF-16A/Bのアップグレードも併せて既存戦力の強化が図られる。空軍戦力だけでなく海軍戦力の強化の為、米海軍を退役したOLIVER HAZARD PERRYクラス誘導ミサイルフリゲート艦USS TAYLOR(FFG-50)、USS GARY(FFG-51)、USS CARR(FFG-52)などミサイルフリゲートが台湾に向けて輸出が許可される。それと重要なのが、台湾の国際機関における台湾の加盟を可能とする記述がある点で、2つの中国を認めない北京に対する明確なメッセージが発せられており米国の戦略変更が見える法案だ。無事に上院まで通過する事を望む。

オバマ政権は,政権成立後、初めての台湾武器輸出決定を下し、2010年1月29日、パトリオットPAC-3ミサイル114発および関連システム、UH-60Mブラックホーク×60機、指揮統制システム、ハープーンミサイル12発、掃海艇2隻を含む総額2045億4400万元(約64億米ドル)相当の武器を台湾に売却する方針を決めた。翌2011年9月21日には、台湾空軍現用機145機のF-16A/B型の大幅アップグレードを認めている。但し、最新鋭のF-16C/Dの売却は見送られている。

台湾がF-16C/Dを切望する背景には、F-5E/F戦闘機の退役期限が迫っていること、経国号戦闘機の能力不足と、部品不足によるミラージュの稼働率が低下している事がある。少々古いが2010年4月に台湾の国会にあたる立法院で、葛熙熊空軍参謀長が戦闘機の稼動率について証言しており、経国号80%、ミラージュ79%、F-1670%、F-5E単座機78%、F-5F複座機がなんと26%と言う。証言から3年経過しているので、稼働率は更に低下しているだろう。特にF-5E/F 戦闘機の稼働率が低いことが最大の課題で、F-5E/Fを最新のF16C/Dに換装したい台湾の意向は良く理解出来る。しかし中国が黙っていないだろう。ロビー活動も活発化させるだろうし、様々な妨害活動を行うことは必然。でも米国の戦略変更が真実ならば、今回はF16を供与して台湾の空軍力強化を支援するだろうと思われる。今後の推移に注目だ。

もしF16C/Dが台湾に供与されないと、2025年には現用機F16A/Bで実戦投入出来るのは145機中80機程度と米台商業協会(US-Taiwan Business Council)が試算している。当然の事ながらF-5E/Fは全機が完全に引退し廃棄されているだろう。こうなると台湾海峡における空軍戦力のバランスが大きく崩れることになり、中国軍の優勢が確定する可能性を否定できない。

中国の海空戦力に対しては、日本と台湾が強調連携して長期的対処を行う事が欠かせない。勿論、中国の核戦力は無視できず、各種ミサイルの脅威、今後益々その潜在的脅威が増すと考えられるUAV戦力に両軍は対応できなければならない。中国軍のUAV戦略については、後日書いてみたい。