阿部ブログ

日々思うこと

米国の『中国の軍事力2013』 と 中国の『中国の武装力の多様化運用』

2013年05月08日 | 台湾
米国防総省は5月6日、2013年度版の『中国の軍事力2013』を発表した。

Annual Report to Congress: Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2013:Office of the Secretary of Defense, U.S. Department of Defense, May 2013
ファイルはPDFで3.23MB。92ページ。

今年の「中国の軍事力2013」を発表したのは、デービッド・ヘルヴィー国防次官補代理(
東アジア担当)で、ブリーフィングは、下記から参照出来る。
Department of Defense Press Briefing on the 2013 DOD Report to Congress on Military and Security Developments Involving the People's Republic of China
U.S. Department of Defense, May 6, 2013


今年の年次報告書の注目点は、役立たずの空母ではなく、現実的な軍事脅威は短距離ミサイルと中距離弾道ミサイル、対艦ミサイル、対宇宙兵器の開発と実戦配備、及び軍事サイバー空間での戦闘システムだ。人民解放軍は、これらの兵器システムの開発を持続的に開発を続けていく事を明言している。ヘルヴィー国防次官補代理もブリーフィングで言っているように、これらの軍事技術は中国近隣の地域防衛の能力を強めているとしており、米軍を懸念させているのは、中国の軍事力と予算使途が不透明であり、解放軍の正確な軍事力が把握出来ていない点にあり、様々な背景状況を勘案して、米軍と人民解放軍との交流が必要と発言している。
2020年までに、60%の海軍戦力を太平洋域に展開する再均衡戦略を実行に移す米軍にとっては、軍事分野以外でも中国との協力範囲を拡大していく方針。

さて、中国・国務院新聞弁公室は、米軍の年次報告書に先立つこと、4月16日に『中国の武装力の多様化運用』を発表している。『中国の武装力の多様化運用』の全文を掲載しているのはココ
中国が、自国の国防白書を発表したのは、1995年11月16日の『中国の軍備管理と軍縮』最初で、その後、1998年に『中国の国防』、『2000年中国の国防』、『2002年中国の国防』、『2004年中国の国防』、『2006年中国の国防』、『2008年中国の国防』、『2010年中国の国防』と2年毎に国防白書を発表している。

今年の国防白書での注目点は2つある。第一は、やはり海洋権益の保護、海外の利益の保護、更には国際海上ルートの安全保障が追記されている点だ。記者会見でも「海洋強国の建設は、国家重要発展戦略だ」と発言しており、中国の『尖閣=沖縄解放戦争』が本格化し、かつ長期的。
第二は、人民解放軍の陸軍集団軍の番号、及び空軍と海軍の兵力、それと戦略ミサイル部隊である第二砲兵のミサイル型式を初めて公表している点。陸軍の総兵力は、85万人で、7軍区に18の集団軍が配置され、実質的には旅団規模の合成作戦師団から構成されている。

空軍の総兵力は、39万8000人、海軍は、23万5000人。日本にとって脅威の第二砲兵の兵力は、陸軍兵力に入っていると思われるが、前述の通り、戦略弾道ミサイル東風シリーズと巡航ミサイル長剣シリーズの型式が明示されている。
しかし、過去ブログでも書いている通り、国内の治安維持に充てる「公共安全費」が3年連続で軍事費を上回っている事が重要。2013年度の公共安全費は、7690億8000万元(約11兆4000億円)で、不透明極まりない軍事予算は、7406億2200万元(約10兆9800億円)である。因みに公共安全費の増加幅は9.59%である。

現状における最大の脅威は、人民解放軍の戦力ではなく、中国共産党が国内の統治能力を失う事だ。
中国国内の暴動と公共安全費
中国の軍事費と公共安全費