クラフトマンストーブという、薪兼用ペレットストーブを20年ほど主暖房として使っている。石村工業という釜石の会社で作っている、ロボットみたいなフォルムが無骨でかわいい、電気を使わないストーブだ。
恐らく盛岡で一番最初に設置されたクラフトマンストーブだと思う。当時の増田知事が、木質バイオマスの推進を掲げ、岩手型ペレットストーブとほぼ同時期に開発されたものだろう。
岩手型ペレットストーブは、製造していたサンポットが親会社の長府製作所に吸収合併されたりして、すっかり名前を聞かなくなっているが、クラフトマンストーブは、今もちゃんと売れ続けているんだから大したものである。原田知世と大泉洋が主演した映画「しあわせのパン」に登場したりもして、全国的にもそれなりに知名度が高いと思われる。
薪兼用だから、当然薪も使うのだが、主としてはペレットを使う。このペレット調達がなかなかの変遷である。
使い始めた当初、最も安かったのは葛巻林業で作っていた、水色のビニール袋に入った「アラウッド15㎏」。主に樹皮を使ったパークペレットで、ものすごく灰の量が多かった。時折、同社のホワイトペレットも使ったのだが、何しろ値段が半額くらいだったので主にそれを使っていた。
他には住田のせけんプレカットで10㎏入りのものもあり、2時間近くかけて買いに行くこともあった。
当時の灯油18Lは800円くらい、今より1000円以上安い。それに比べるとかなり割高だったように思う。それでも、家の中で火を燃やしたいという野蛮な欲求と、薪集めの手間をいくらかでも少なくしたいという下心の結晶がクラフトマンストーブを選ばせたのである。
盛岡市内にも結構ペレットを扱っている燃料店やガソリンスタンドもあって、それなりに調達しやすかったのだがが、やはり値段が高くなるので、わざわざ葛巻まで1時間半かけて買いに行っていたのである。それが何年か経つと、「アラウッド」は、紙袋入りの10㎏になった。
その頃には、葛巻林業の木工部門の木童舎というのがあるというのを知り、そこは玉山に工場があって、わりと近くで買えるようになっていた。また、イオンスーパーセンター渋民でも買えることが分かり、時間は大分短縮された。
そんな葛巻林業が2015年に倒産! ペレット製造は、確か、別の会社というか、元社員さんかなんかが作ったところに引き継がれたはずである。しかし、当然のように価格が上がってしまったので、さて・・・と、次なる一手を探していた。
すると、紫波町の林業公社で、ペレットを作り始めたではないか! で、まあ、それは紫波中央駅のところにある、紫波みらい研究所、というところで買えるという。そこでは使い古しの米袋に10㎏入り、という形態で売っていた。当初は525円だったと思う。途中、消費税が上がったりして、それに合わせて値上がりしていたのだが、しばらくはそこで調達できていた。
ところが、一昨年、ペレットを作るペレタイザーという機械が老朽化で使えなくなり、更新もしないということで、紫波産のペレットはなくなってしまった。まったくもってペレット難民である。
まあ、ペレットを使っている紫波町内の公共施設も結構あったりすることから、需要はそれなりにあったので、余所から調達して販売はするという。場所は紫波町林業公社で、紫波中央駅よりはちょっと遠い。
そのペレットは北上プライウッド宮古工場で作っている「森の暖もり」7㎏入り400円。それは入荷量が少なかったのか、途中から、住田のペレットに切り替わっていった。 とまあ、かつては、岩手県の政策として、ペレットストーブおよびペレット燃料の普及を図っていたのだが、顛末はこんな感じに萎んでいっている。むしろ現在の方が、木質バイオマスの推進に追い風が吹いていると思うのだが、このままでは、暖房機器の更新を期に、木質バイオマス利用の機運は廃れていってしまうだろう。
ここからもう一歩踏み込んで新たな機器を開発したり、普及を図ってみてはどうなんだろうと思う。木質バイオマスの利活用という思想は悪くないのだから、いかに効率的に使いやすくしていくか、が問題となるんだろうけど。