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奇遇

2022-05-13 19:41:22 | 日記

ずっと前から知っているけど、入ったことはない、というところがあちこちにある。長年続いているのだから、続いているだけの理由があるだろう。まあ、そういう理由を知りたい、といった謎解きをしたいというわけでもなく、とにかく行ってみようということである。

そんなお店の一つが、盛岡から西根に向かう途中にあるハンガリー料理のお店「ドゥナ」。

そして現場の仕事で前は通るものの、入ったことはない「七時雨鉱泉」。たまたま西根の方に用事があったので、この二つを制覇してみようと思った。これは先週の「里の駅おぐに」と「横沢温泉」に続くものである。

「ドゥナ」に入ると先客が三名ほど。ランチメニューは二つ。「ポークシチュー」と「チリシチュー」とのこと。「ポークシチュー」を注文して一息ついてトイレに立つ。店の中には様々なハンガリー関係の調度や人形などが置いてある。こぢんまりとした店内は、一人で切り盛りするのにちょうどいい大きさだ。

トイレから戻ると、座った席の後ろ側に、やたらと存在感のある人形が座っている。中東の人とおぼしきおじさんだ。

「ん?」と思う。息づかいさえ聞こえてくるような、このたたずまいと迫力。この作風には見覚えがある。もしかしてこの人形は・・・。

2004年に架空の劇団で上演した「月下の一群~震旦篇」には、李白が登場する。元々は登場人物全員分の人形を使った演出をするつもりで、誰か人形を作る人いないだろうかと探していたところ、当時シルクロードをモチーフにした作品で注目を集めていた人形作家がいた。

なんと、その人形作家はとてもよく知っている演劇人のお母さんで、なんというか、話がつながり、李白人形を作ってもらうという流れになった。いろいろとお話を伺ってみると、とても芝居で使う人数を作れるような簡単なモノではなく、それこそ魂を削ってその人物と世界に入り込んでつくりあげていくという。

道理でとんでもない迫力なわけである。結局李白人形は、開演前の舞台で観客を出迎え、舞台を見守るという役割で客席に鎮座し、終演後はまた観客を見送る、という役割を果たしてもらうことになった。

早世した人形作家の彼女の作品は、いろいろあって、ほとんどが所在不明となってしまっていた。

「ポークシチュー」が運ばれてきた。

思い切って聞いてみる。「この人形の作者ってもしかして・・・」「早くに亡くなってしまって・・・彼女とは同い年なんで・・・」「八木さんですか?」「ご存じなんですか?」

かくかくしかじか、シルクロードから中国へと道のりをたどって「李白」人形を作ってもらったという話から、いろいろとお話を聞いた。

こんなこともあるのだ。ずいぶんと昔から知ってはいるものの、入ったことのなかったお店に入り、長く会うことのなかった魂の人形に出会うことが。まさに奇遇である。

ランチはといえば、サラダとスープとセットで、さらに食後にデザートとコーヒーが付いてくる。少し風変わりだがホッとするような味付けで、とても美味しくいただいた。

再訪を決心して店を出た。

なんとも言えない感慨を抱きながら西根の奥へ奥へ。寺田の集落を通り過ぎ、七時雨鉱泉へ。ちょっと前まで「老人憩いの家」という名前になっていたのでなかなか入りづらかったのだが、以前の名前に戻ってから、いつか必ず入りに来よう、と思っていたのだが、やはり、ここを目的地にしなければ、なかなか来られない。

冷鉱泉なので、沸かしている。源泉はわずかずつ蛇口から垂れていて、循環はしていないらしい。蒸気かなんかで沸かしているようで、源泉100%だ。ちょろちょろと湯船に流れている冷たい源泉を手のひらに受けて、味見してみる。舌がビリッとする。そして少しの塩味。かなり濃い。卵臭もなかなかに強く、効きそうな湯である。二人ほど年配の先客がいて、その客が上がると、あとから二人入ってきた。貸し切りではないが、ゆったりと入れた。

湯上がりに座ってスマホをいじっていると、先に上がったおじさんが「スマホ・・・」とつぶやく。「ん?」と顔を上げると、目が合った。オレも大概おじさんだが、目が合ったのはおじいさんと言ってもいいおじさんだ。

「スマホ・・・誰かに習ってるんですか?」

「いやいや、別に習ってるわけじゃなくて・・・」

「ああ、自分で・・・インターネットつながってるんですか?」

「ああ、まあ、電波の届くところであれば、ネットつながってますけど・・・」

なんだかよくわからない会話になっているが、実際そうだったのだから仕方ない。話をしていると、どうやら最近スマホに変えたらしく、動画を見るとギガが減るのが早いらしい。

まあそりゃそうだよね。Wi-Fiでもつながってないと、そりゃギガ食うよね。

こういうところで、大して気を遣うこともなく話せるようになったのは成長であろうか・・・ひとえに年齢である。まあ、オレどこに行っても道聞かれたりする方だからね。


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