昨日のことになるのだが、年に一度の健康診断を盛岡市立病院でやってきた。胃カメラに始まり、心電図、胸部レントゲン、尿検査に血液検査とまあそんなところである。
奇遇にもほどがあると思ったのは、胃カメラが終わって、問診票を確認して血圧などを測ったとき。これから後のルート説明なども一通り終了した後、担当してくれた女性が話しかけてきた。
「あの、くらもちさん、うちの息子が同級生で・・・」
名札を見ると(Y)と書いてある。
「Tの母です」
あらあらあらあら、これまた奇遇で、倅のお友達のお母さんである。
Tくんは倅の小学校からのお友達で、子ども演劇ワークショップにも来てくれたことがあり、応援団の団長になったりもしたので、とてもよく知っているのである。そんなわけで、お互いの息子の近況などを報告し合い、最近とみに多い奇遇を喜んだ。
Tくんといえば小学校三年生のとき、授業参観でのエピソードが印象深い。当時学級委員長だった彼は、その授業で議長的な役割をしていて、一通り子どもたちの意見を聞き終わった後、
「あの、お父さんお母さんから何かご意見ありますか?」
と聞いたのだ。ちょっと面食らったのは見ていた保護者で、そういう事態を想定していなかった。考えてみれば、なるほど授業参観だから、保護者の意見も聞こうというわけか。先生もいろいろ考えてるな。と思ったのだが、あとで先生に聞いてみると、先生がそう言えと指示していたわけではなく、自発的にTくんが聞いたのだそうだ。これには驚いた。
そんなエピソードを持つTくんもうちの倅も大学生になったわけだが、そんな子を持つ親であるオレは、やはり健康に気をつけねばならぬのである。
胃カメラの前に看護師さんが
「トイレ、大丈夫ですか?」
と聞いてくれた。
「大丈夫です」
と即答したのにはわけがある。尿検査の前にうっかりトイレに行ってしまうと、採尿に苦労するのである。だから多少したくても採尿までガマンするのが基本なのだ。
ところが、胃カメラが終わったあたりですでに尿意がやってきていた。頻尿なので頑張ってガマンしても限界はある。まずは身長体重をはかり、去年より縮んだ身長に落胆しつつ心電図を待っていると、身長を測ってくれた看護師さんがやってきて、
「血圧の下が90を越えてると、眼底検査した方がいいんですけど、まあこれは強制ではなく希望ですが・・・」
と教えてくれた。上の血圧は1回目146と高かったが、(これはちょっと下げた方が良いなと)深呼吸を2、3回して測った2回目は125。これは正常値である。とはいえ下が91と高めなのは仕方が無い。
最近ちょっと飛蚊症っぽいところもあるので、お願いしといた方が良いだろうと、追加の検査をお願いした。
「じゃあ、心電図終わったらわたしのところへ来てください」とのこと。
尿意をこらえつつ心電図の検査へ。順番が来て、ベッドに横になるとカーテンの向こうから(チョロチョロチョロチョロ)と、まったくもって尿意を刺激する水音がする。思わず聞いてしまった。
「この水音はなんですか?」
「あ、これは器具を洗ってる水道の音です」
「ああ・・・」何の謎もないが、なるほどである。
そして先ほどの看護師さんのところまで戻って、眼底検査をお願いすることにしたのだが、尿意はここで限界に近い段階に達していた。しかし尿検査はこのあと、眼底検査、胸部レントゲン、血液検査の採血と来て、一番最後なのである。
「あの、尿検査先にしてもらうわけにはいきませんか?」
弱音を吐いた。すると、
「大丈夫ですよぉ-」と、笑顔で尿コップにIDなどを書き込んで渡してくれた。
「最後ですもんねぇ」と、委細承知の顔。身長体重はかるところにも尿コップは常備してあるのだ。
ここから先は心を落ち着けて全ての検査を終え、心穏やかに少し早めの昼食は初めての「十六番」というお店。断食明けのメニューはとり天と野菜天がセットになったざるそば。美味しゅうございました。
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