・・・やられた。
昨日我が家に到着し、束の間あひょと戯れた後お別れしたコフキ氏。
外に放り投げるのも可哀想だし、我が家で育てているクヌギさんたちの鉢植えに解放していた。
コガネ虫っちゃやっぱり雑木がお似合いだし、まだ細っこい我が家のクヌギには樹液はナイから、そのうち飽きてどこかへ飛んでくだろー、と高を括っていた。(ほんの一瞬嫌な予感も脳裏を掠めたが、まっいいか、と黙殺した)
コフキ氏にしてみりゃ思いがけないクヌギとの遭遇に驚嘆したのか、細い枝にひっしと6本の足を絡めてしがみ付き、大層お気に入りの様子。
その様子を見、“良きかな、良きかな”と慈母観音の如き心持で微笑みながら部屋に戻ったあひょだったのだが・・・。
今朝。
洗濯物を干しにベランダに出て、ついでにクヌギたちにも朝のお水を・・・と目をやって驚いた。
まだ、居る。コフキ氏。
しかも葉っぱにしがみついてゐる。
“やれ可愛や。よほどお気に召したと見える”と微笑みつつ、今日も束の間戯れようと目を近づけて・・・再度吃驚!
「喰うとるやんけ~!葉っぱ!!(何故か関西弁となる)」
じっと観察してみると、まさにお食事中であった。
しかも耳をすますと、シャリシャリと小気味の良い咀嚼音まで聞こえてくるではないか。
むむぅ・・・やるな、コフキ氏。
おまーさんは樹液しか吸わないものと思い込んでいたぞ。まさかベジタリアンだとは・・・・・。
・・・とここで、かつての昆虫博士としてはどーしても気になり、ネットで調べてみた。
そして、驚愕の事実を目の当たりにした。
コフキ氏の主食はなんと木の根や葉っぱ(しかもクヌギやコナラ)
そして、あおくんを代表とするカナブン族は樹液、だと。
むむむ。同じ族のクセして食べ物の好みが違うとは・・・と驚きながら解説をよく読んでみて納得した。
そうか。同じコガネムシ科でもビミョーに分類が違うのか。
コフキ氏はコフキコガネ亜科、それに対してあおくん(アオドウガネ)たちはハナムグリ亜科だったのか。
んー、こんなコトも知らないようじゃ昆虫博士とは言えないな、ワレ・・・。
若干の敗北感と落胆、大いなる驚嘆が渾然一体となった不思議な心境を味わいながら、なおも我が家のクヌギをジョリジョリと旺盛な食欲で貪り喰っているコフキ氏を無理やりひっぺがしたあひょ。
夢の宴は終了、なのである。
結局コフキ氏には元いた大自然の懐にお帰りいただくことに決め、現在、虫かご代わりの伏せた洗濯バサミケースの中で軟禁状態である(写真A・B参照)。
昨日の歓待ぶりがまるで嘘のよう、手のひらを返した如くの仕打ちにより哀れ捉われの身と化したコフキ氏。(写真A)
牢屋の檻(?)の隙間から覗く表情も、どこか悲しげで哀れを誘う。
まさに諸行無常、栄枯盛衰である。(写真B)
ま。とにもかくにも。
偶然とはいえ、また、束の間とはいえ、我が家のクヌギ“林”に導かれたコフキ氏にとって、それはまさに酒池肉林の薔薇色の世界だったはず。
図らずもあひょは、小さな客人を、最高の馳走でもてなしたことになるわけだ。
ま、良識あるニンゲンとして、しごく当たり前のことをしたわけだ。
もしこのまま我が家のクヌギ林をコフキ氏の住処として提供してしまうと、あのつぶらな黒い瞳と毎日心ゆくまで戯れることはできるものの、葉っぱたちはたまらない。恐らく1週間も経てばかなりボロボロになっていただろう。
なにせたった1晩で5枚もの葉が文字通り“虫喰い状態”になっていたのだから。
それに、万一土中に潜られて根を食されでもしたら、目も当てられてない状況になるだろう。
というわけで、黒いつぶらな瞳の薄茶ビロードの可愛い食欲旺盛な小さな客人は、今日の夕方、あひょの買い物に強制同行させられ、大自然の下に解き放たれるのである。
親愛なるコフキ氏。
達者で暮らせよ~!
友達連れて帰って来るなよ~!!
アディオス