目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

快楽の30日間山ごもり

2019-10-09 | 山雑記

岩手山麓の三ツ石山荘(上の写真)を訪れたときだ(前回のブログ記事参照)。明日から台風の影響で雨といっていたので、まさかこんなところに人がいようとはまったく思わなかった。

無人と思っていたその小屋には、3人の男がいた。話を聞いて驚いたが、一人は山ごもりを始めて2週間の登山者(以下山ごもらー)。記憶が定かではないが、埼玉県から来たといっていたような気がする。もう一人は、山岳ミステリーを読みふけっていた長身のがっちりした人で、なんと岩手県の山岳救助隊の人だった。2階で仮眠をとっていて、ひょっこり顔を出したもう一人もそうだった。

山の神と私がこの小屋で昼食をとり始めると、山ごもらーとミステリーを読んでいた山岳救助隊員が時折とつとつと会話を始めた。そこへ割って入る山の神。

「どちらから来たんですか?」

山ごもらーは、「茶臼」と答えた。山の神と私がとっさに思い浮かべたのは那須の茶臼だったせいで混乱した。

救助隊員が救助の手を差し伸べる。「八幡平の茶臼ですよ」。

そうなのだ。岩手山だけで救助活動をしているわけではなく、八幡平の岩手側も活動地域なので、この辺りの山塊には詳しいのだ。

山ごもらーは、毎年8月になると、避暑をかねてこの山塊に入るのだと語り始めた。ここ7,8年そうしているというから、かなりのつわものであり、自由人だ。八幡平から縦走し、この岩手山麓の三ツ石山荘にたどりついた。そして明日の雨天時はここで停滞するのだと。

今回は、3リットルのウィスキーをペットボトルに詰め込んで山に入ったと聞いてさらに驚いた。よくよく聞いてみると、ほぼ1ヵ月間山籠もりするため、1日100ミリリットルの消費として、掛ける30日で3リットルの計算をしたという。

ビールや焼酎を死ぬほど背負って登ってくる人はたまに見かけていたが、ウィスキー3リットルは、初めて聞いた。ただそう言っていた割には、広げた荷物に半分以上残っているはずのウィスキーがない。飲んじゃったんだね。残りの2週間強は酒なしだ。

さらに山ごもらーはウィスキーばかりか水も残り少ないとこぼし、最悪この小屋で溜めている雨水を使うんだとのたまう。それを聞いた山の神が大量にもってきていた水1.5リットルのうち1リットルを分けていた。

帰りがけに救助隊員から聞いた話では、この一帯の小屋はすべて、雨樋の下部に水を溜める小さなタンクがついていて、それを非常用に使えるようになっている。前回のブログに小屋側面の写真を載せていたが、向かって右側の軒先にハシゴで上がり、手を伸ばせば届くところにそのタンクはある。ふたをはずせば、溜まっている水を取り出せるようになっている。よく考えたものだ。

今回、山の神とともに偶然長期山ごもり登山者に会ってしまったけれど、じつは今までたまたま会っていなかっただけで、こうした登山スタイルの人は、意外といるのではないかと思った。 


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