『それいけ避難小屋』橋尾歌子(山と渓谷社)
昨年末某新聞の今年のお奨め3冊で誰かがとり上げていてチェックしていた本。とにかくイラストいっぱいで楽しい。北海道・九州を除く全国のあちらこちらの避難小屋を訪れて、にぎにぎしたイラストとへえというエピソードで紹介していくスタイル。著者の橋尾さんの個人的な体験が結構面白いし、まして自分がそこに行っていたりすると、さらに興味が膨らむ。
たとえば一杯水避難小屋は、私は八丁橋からそこへ行ったけれども、橋尾さんはタワ尾根からぐるりと周遊して訪れている。とっても楽しそうなコースだ。私は橋尾さん同様にタワ尾根を歩いているけれども、そのときはウトウの頭の陶板を見たいがためだった。そんなことを思い返しながら読むと、個人的にはめっちゃ盛り上がれる。著者は、この避難小屋へはあの山野井夫妻と行ったというから、さぞかし盛り上がったことだろう。
怖ろしいことを思い出してしまったのは、破風山避難小屋。小屋の場所を見て、あの笹平じゃないかと気づいた。90年代のたしかまだ残雪がたっぷりある時期に甲武信岳に行ったのだが、途中ここで1泊した。同宿したのは単独行の年配のおじさん。かなりこぢんまりした小屋で、2人でちょうどいい按配だった。この日は、かなり冷え込み、寒いなあと2人でこぼしまくり、翌朝は、私は間抜けなことに寒冷地用のガスではなく、夏用のそれを持っていってしまい、火がちょろちょろでなかなかお湯が沸かなかったのを思い出した。あの事件がなければ、たんなる山行の思い出だが、あの信じがたい新聞記事を読んで強烈に記憶に刻み付けられてしまった。
アラフィフ以上の年齢の方はいまでも覚えていると思うが、この地で一家心中事件が起きた。この家族は、この避難小屋に泊まった翌日、小屋前に広がる草原で全員死んでいたのだ。最後の晩餐はどうだったのだろうかと想像すると怖すぎる。気持ち悪くて、私はもう行けない。避難小屋の名前が変わったのは、このせいだろうか。当時は笹平避難小屋といっていたはずだ。
それはそれ。この避難小屋ガイドは、楽しさ満載。と書いても、もうホラー気分になってしまったか。とにかく行ってみたくなる避難小屋が続々と登場するので、超お奨めです。破風には行きたくないが、、、
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