人間の心と行動ー利他性のルーツ
昔、北海道時代に北海道大学名誉教授の山岸俊男氏の講演を二度聞いたことがある。
社会心理学者の立場で【「人間の心と行動」-利他性のルーツ】の話は興味深かったことを覚えている。
結論から言うと「人類は、他の動物とは違うやり方で、また彼らよりも効率的に協力関係をつくることで、大
きな成功を収めることができた」という話です。
その人間社会の協力関係をつくる最も基本的な方法が「互恵的利他主義(ギブアンドテイクな考え方)」に基
づく方法だと紹介された。
そのうえで、しかし、互恵的利他主義だけでは、人間社会の協力関係のごく一部しか説明できない。
実際に、人間社会には、互恵的な協力関係が生じないところでも、利他的行為を取る事がある。
従来の社会科学では、こうした利他的行動は、理性と文化に由来すると考えられていた。
つまり、人間は種の特徴として利他性を備えているのではなく、理性と文化が生み出した道徳規範によって利
他行動を自らに課しているとされていた。
これに対して、最近、人類には利他的行動を促進する「人間性」が種として備わっている「協力種」という考
え方です。
この2つの視点の違いは、利他性というものが、道徳規範として人間に「教えられる」べきものである。
それに対して、人間の種としての進化の過程で潜在的に備わっているものを呼び起こすものである。
これが2つの違いだということのようです。
※利他的とは自己の損失を顧みずに他者の利益を図るような行動のことです。