電話が鳴ったのは、ある晴れた日曜日の10時頃。
私はその電話で目覚めた。
「もしぃもしぃ~」
寝ぼけた声で答えると、急いだように受話器の向こうから何か言っている。
「寝てましたか?」
「はい」
「今日卒業式です。直ぐに来てください」
それは私が2年間通った二回目の高校の定時制の担任の先生からの電話。
10年前の23歳の春のことである。
私の通った定時制高校は、入学式は全日制と定時制は別々であるが、
何故か卒業式は一緒だった。
ということは普通の高校生の父兄やらが大勢来るということで、そんな中で生徒として名前を呼ばれたりするのが、なんとなく恥ずかしいなぁ~と思い、
だから卒業式は全日制も一緒と聞いたときに私は、
「行かなくてもいいかな」
と勝手に思い、決めてしまった。
だから卒業式当日には、その日卒業式であることすら私の頭からはさっさと消去されていて、電話が来たときにも一瞬何を言っているのか分からないという状態。
そんなこんなで、電話がきてから少しボーっとして、要約時計を見てみると、
なんと卒業式まで後15分。
慌ててスーツを着て急いで車で学校へGO。
でも家を出るときには、もう卒業式は始まっている始末。
学校までは信号で止まり止まりで15分。
いつもの教室行くと、当然の事ながら誰もいない。
校舎の何処に行っても人っ子一人居ない。
当然全員体育館に集合しているから・・・
しかも困ったことに、定時制では専門課程しか習っていない私は体育の授業も部活もない。
だから体育館の場所はかろうじて知っていても、体育館の入り口はたったの一箇所しか知らない。
その入り口はステージ横の正面
私は入り口に着いた。
ところがそこは赤と白の幕に覆われて、完全に塞がっている。
でも入り口はそこしか知らない
うーーーーーん、行くっきゃないだろ
っていうことで、赤白の膜をたくし上げて、卒業式に登場。
そこは運悪く、先生方の席の真正面。
先生に仕方なく案内されて、自分の席へそそくさと向かう。
各年代様々な私のクラスメートは全員遅刻することなく出席。
そして周りにからかわれながら、まぁ~よかったよかったとか思っていると、
何人かの生徒が名前を呼ばれ、その場で返事をして立ち始め、なんだろうなーと思っていると、思いがけなく自分の名前が呼ばれた。
訳も分からず返事をして立つと、
「以上、優等賞」
「はっ?」
遅刻の常習で挙句の果てに卒業式遅刻のどうしようもない大人が優等賞?
こんな恥ずかしい話があっていいものだろうか。
本来喜ぶべきことだけど、出来ることなら呼んでほしくなかったと正直思う。
そしてその後に更なるミラクル。
一度高校を卒業している私は一枚卒業証書を既に持っている。
そして遅刻してもらった二枚目の卒業証書。
なんとそこには同じ校長の名前がしっかり刻まれていた。
偶然ってすごい。
これが私にとっては、いろんな意味で一生忘れられない卒業式!(^^)!
全て実話なんだよね、これが。