日本経済新聞に掲載された昭和天皇の靖国神社のA級戦犯合祀に関するメモについては非常にまずいことだと感じている。
まずご本人が生前公式にご発言されていないことに関して、今のタイミングで近くにいた公務員のメモという形で発表されたことはまずもって倫理に反することではないだろうか。
歴史家などは信頼に値するなどと言っているむきもあるようであるが、これを認めるのは非常にまずい。
もちろんわれわれは側近の日記などによって昭和天皇の人となりをうかがうこともあったのであろうが、これからはそういうことはまずやめるべきで、皇室・宮内庁もこういうことになぜ抗議しないかということは一考に値する。
もちろん「言論の自由」などということもあるのかもしれないが、それは違うだろう。
つまり昭和天皇も、発言を聞いたという本人も亡くなってしまっているのだから、ほんらいこういうものは確かめようもないことであって、本来発表すべきではなかった。
宮内庁がこのことに抗議しないというのであれば、ようするにこれからもこうした事が起こることを自らに許しているととられても仕方ないだろう。
非常に問題なのは朝日新聞が欣喜雀躍してこのメモを大々的に政治利用してしまっていることである。
7月25日の社説(すぐ消えるかもしれませんが、こちらです)で自民党の総裁選挙の論点にすることを要求してしまっている。
朝日は21日の社説(すぐ消えるかもしれませんが、こちらです)で以下のように述べている。
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だれもがこぞって戦争の犠牲になった人たちを悼むことができる場所が必要だろう。それは中国や韓国に言われるまでもなく、日本人自身が答えを出す問題である。そのことを今回の昭和天皇の発言が示している。
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ようするに朝日は国立の追悼施設をつくるという民主党の案(こちらはまだずっと消えないはず)
を後押しするに当たって昭和天皇の「発言」を勝手に利用してあたかも御意に従え、とばかりに国民に自分たちの意見を押し付けたのである。
しかし、これはようするに政教分離の原則に反することである。
国立の宗教施設そのものが政治と宗教の結びつきを強めるものであるし、その意見を押し付けるのに昭和天皇のご発言に関するメモを持ち出すのはまるで自分たちは錦の御旗、御意にしたがえ、という大本営発表をそのまま流した戦前の姿そのものではないか。
しかし22日の天声人語(これももうすぐ消えるでしょうが)では以下のように述べている。
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メモは一つの史料として冷静に受け止めたい。政治などの場で過大に扱うのも控えた方がいい。もっと大きく、昭和の歴史と向き合ったり、あの悲惨な戦争を考えたりする時の手がかりにしたい。戦争で隈どられる時代が二度と来ることがないように。
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つまりここでは自分たちが昭和天皇の「発言」を政治利用している印象を弱めようとしていたわけだろうが、それにしてもこの朝令暮改そのもののような変節ぶりはどう考えればいいのかと思いきや、今度は世論調査を持ち出して25日の社説(すぐ消えるかもしれませんが、こちらです)で以下のように述べている。
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今回の朝日新聞の調査は、これが報じられた後に行われた。参拝の是非をめぐる判断でメモを重視したかどうかを尋ねると、63%が重視したと答えた。
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朝日の社説が昭和天皇のメモを重視するように言っていながらまるで国民自身が主体的な意見形成をしたかのごとく書いているのはあまりに見え透いた自分たちの世論操作を隠すというよりむしろ自ら示しているかのようにも思える。
おそらく総裁選では靖国参拝が争点になる可能性が大である。
しかし、この国ではまず何が一番問題かといえば、増税である。
おそらく増税も争点の一つにはなるであろうが、扱われる比重は少なくなる可能性が大きい。
そして候補者によって意見の違いが見られなくなりそうであることも問題である。
自分は増税には反対である。
行財政改革ははっきり言って全く不充分であり、靖国のような宗教という公の場で論じるには向かない問題で行財政改革のような問題がないがしろにされてゆくとしたら残念であるが、ようするに今までもマスコミがそうしてきたわけであろう。
むろんそのことが問題にされない事が小泉首相にとって都合がよいことだという見方も充分なりたつ。
マスコミが靖国を問題にしているというのはまさにそのとおりであるが、マスコミが靖国を問題にすることで小泉首相が困るというわけでもないだろうと自分は思う。
朝日は国民は自分たちの社説に従っているのでそれが正しいと言いたいのだろうが、これはまさしく最初に昭和天皇のご発言に関するメモを利用して政治利用していることに他ならない。
日ごろ政教分離をさかんに喧伝しながらある日突然昭和天皇のご発言に関するメモを取り上げて世論操作するなど、国民をバカにするのはいい加減やめてほしいものだ。
なおこの一文をそうするに当たってはネット上の議論の場で教わること大であった。
その場でも申し上げましがあらためて深甚の謝意を表します。