Winny判決について書こう、書こうと思っているうちにいつのまにか年末になってしまった。
新聞各誌の社説がネット上にあるうちになにか書こうと思っているうちに社説はおろか前回のエントリーに入れたリンク先のYahooのニュースのページすら消えてしまった。
さて、この判決に関してはほとんどの新聞が社説で取り上げていて、判決に否定的だったのがたしか朝日新聞で肯定的だったのが日経だったようである。
日経の社説はネット上に見つけることはできないが、たとえばこちらhttp://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/news/061219_winny/のページを見ると判決に関してやや疑問を投げかけるものとなっている。
前回のエントリではこの「事件」では著作権侵害の幇助の罪が問われたということを書かなかったので、今回は特にその点について考えてみたいのだが、その点に関しては、こちらhttp://www.itmedia.co.jp/news/articles/0612/19/news023.htmlのページを参考にしたい。
その上で、日経のある雑誌の表紙などが自分には非常に気にかかる。
その雑誌とは「日記クリック」2002年5月号である。
その表紙の一番上にはこう書かれている
噂のコピー防止音楽CDを52台でチェック!
また雑誌のタイトルのすぐ下には「違法コピー防止CD実地テスト」と書かれており、その下には「エイベックスの新譜CDは本当にコピーできない?」とも書かれているのである。
この雑誌を出している会社が日経新聞の関連会社かどうかは知らないし、日経の社説を書いた人がこのような雑誌を読んでいたかどうかも知るよしもない。
むろんこの雑誌の発行からは4年以上も過ぎているし、幇助罪の成立にはそのもとになる犯罪が摘発されなければならないということもあるであろう。
しかし、自分にいわせればこの日経の表紙はいかにも「著作権侵害」を幇助する内容をほのめかしているように思える。
こうした雑誌などの記事はむろんこれに限らないであろうが、いかにも犯罪そのものを助長する書き方であることは明らかではないだろうか。
しかしながら、この記事の冒頭のページの一番下にはこう書かれている。
音楽CDは、私的利用の範囲を超えた複製は禁じられています。
複製した曲データをネット上で配布するなどの行為は違法になります。
この記事はそれらの行為を助長する意図のものではありません。あらかじめご了承ください。
なんでこのようなことを書いているのかと言えば、こう書かなければ著作権侵害幇助の罪に問われかねない内容の記事だからではないか。
あまりにも馬鹿げた話だが、著作権幇助に当たる内容の記事でなければこのようなことを書く必要はないのではないか。
なんとも不思議なのは、この記事の中でエイベックスの人がコピー防止技術導入に至った経緯などを述べている点である。
このコピー防止CDに関しては、複製だけでなく、PCの機種などによって再生すらもできない場合があるようなのだが、非常に疑問なのはこの記事では「再生」だけでなく「複製」できるかどうか、記事の中でPC本体、コンボその他に分けて、それぞれの機種による検証結果を「分かりやすく」示していることである。
記事の中では「気になるパソコン/ドライブの結果だが、完全に正しく再生とコピーができたマシンはほとんどなかった」としてるが「ほとんど」だから、「できた機種」もあるわけで、そういうドライブも紹介されていた。
「なお、いうまでもないことだが、CDの複製は私的複製の範囲で行なってほしい」としている言葉はどれだけの内実があるのか疑問といわざるをえない。
エイベックスの担当者がこの技術の導入に関して「違法にコピーしているという意識がないという人も多い」としているのに、コピー防止CDでも複製できるドライブがあることを示すというのは、エイベックスの違法コピーを防ごうという意図自体を無にさせるものであると言っても言いすぎではないのではないか。
「私的複製」ということ自体がまずこの記事において何度か言及されているものの何が私的複製で何がそうでないのかまとめて書かれてはいないので何が違法行為か実はこの記事の最後まで読まないと分かりにくいのではないだろうか。
この記事の最後のページには「音楽CDから曲をコピーしてネットで配布するのはもちろん違法。だが、CD-Rに焼いて友人に配ることが違法であることを分かっていないユーザーは多いようだ」としているが、こういう文章は最初に書くべきではないだろうか。
この雑誌は表紙で「違法コピー」という文言で人をひきつけているのだから、このようなことを書いていることで著作権侵害の幇助に当たらないとまではいえるかどうか疑問に思う。
この雑誌の情報をもとにここで紹介されているドライブを使って著作権侵害に当たる行為をした者がもし摘発されて、もし「この雑誌を参考にしました」と言ったらどうなるんだろうか。
不思議なことにこの記事の中で日本レコード協会の人に対するインタビューで「レコード業界では、ネット上のファイル交換サービス交換をそうとう気にしているという印象があるんですが」という質問に対して「今後のブロードバンドの普及の進み具合にもよりますが、現状では、個人がネットを介さずパソコンで手軽に複製するカジュアルコピーのほうが問題が大きいと思います」としている。
著作権侵害に関してもそのあとに注意を促していることもあるとは言え、ようするにCDをPCで複製するという行為がネット上でデータがやりとりされるということ以上に犯罪に使われる可能性があるということをこの記事を書いた人たちは充分意識していると言えるのではないか。
むろんこれは違法コピーを助長させかねない記事などの一例に過ぎない。
この問題はなかなか論じきれず、というか話がまとまらずにまたしても疲れてしまったので、とりあえずここであやめることにするが、ようするに自分の考えとしてはWinnyの開発者が、著作権侵害の幇助の罪で真っ先に逮捕されるというのはどう考えても納得がいかないということである。