イラクで初めて外国人女性が殺された。この人が先月人質となって以来、イギリスやアメリカでは結構ニュースになっていたが、日本ではあまり取り上げられていなかったようにも思うい。今日もサイトには取り上げられているものの、テレビのニュースなどではあまりとりあげられていないようである。昨日から6チャンネルや10チャンネルではアメリカ兵が無抵抗のイラク人を射殺している(もしくはすでに死んでいるイラク人に銃撃を浴びせたということか?)映像ばかりが流されこのニュースはほとんど流されていない。
もちろんどんなニュースを流そうが勝手といえば勝手であるが、アメリカ兵の残虐さを報道するならテロリストの残虐な行為についてもきちんと報道すべきだと思う。ちなみにあまりに残酷な映像ということでアル・ジャジーラも殺害の場面の映像は流さなかったようである。
この殺害された女性は「英国人」として紹介しているサイトもあるようだが、アイルランド生まれでイラク人と結婚しており、30年間イラクに住んでいる。国籍はアイルランド、イギリス、イラクと三つ持っており何人というのは難しいが、あえて言えば、「イラク人」ということになるのだろうか。それにしても複数の国籍をもつことはイギリスなどでは可能なのだろうかと不思議に思うが、それより何より湾岸戦争、イラク空爆など幾多の歴史的困難の状況にあってもイラクを離れなかったのは大変なことである。
それだけにこういう人を殺してしまったテロリストというのは本当に残虐であり、どんな罰をもってしても軽すぎると思う。その一方で私はこの女性が犯人たちに捕らえられて映ったビデオの中での発言や様子というのはこの人が長年イラクで活躍してきたことを思えば、その分非常に残念なものも感じていることを正直に言わざるをえない。
もちろん命の危険にさらされた状態であれば、冷静さを保つほうが難しいだろう。また決して若くない女性であることも考えればこのことをいうのは大変酷だとは承知している。だが、あえて言う。
「イギリス軍は撤退しろ」という主張は自分は納得できないし、まして自分の活動拠点であったケア・インターナショナルのバグダッドの事務所の閉鎖まで要求したのはテロリストの要求を呑んだとはいえまずかったのではないか。
もちろん自分がその立場だったら、そんなことはできない。だからそんなこと(身の安全が危ぶまれる時期にイラクにいること)はしないのである。しかしこの人はある程度危険は承知でイラクにいたのであろうから、自分の命が脅かされているからといって、自分の活動を止めるようなことはすべきではなかったのではないか。
ケア・インターナショナルのバグダッド事務所はハッサン氏の要求どおり閉鎖された。こんなことでいいのだろうかと思うのは自分だけだろうか。テロリストの要求を呑む形で閉鎖してしまって。しかもイギリス軍の撤退もハッサン氏は要求したのであるが、事実の経過はそんなことをすれば彼女の生命のみならずボランティア活動の生命をも死に至らしめるのだということに気づかなかったのであろうか。
これは本当に酷なことであるが、実はハッサン氏自身もそのことに気づいていたのではあるまいか。むしろそのことに眼をふさぐためにあれだけビデオの中で泣き叫んだのではないかとも思う。
もし本当に彼女がイラク人たちに愛されていたなら、彼女の身の安全をもっと守る人たちがいてもおかしくなかったのではいか。犯人の正体は分かってはいないが、イギリス軍の撤退というおそらくはハッサン氏が捕らえられる前からの主張と同じ要求をするグループの手によって彼女が殺されたのはなんとも皮肉な話である。最近イラクで殺された若い日本人青年はビデオの中ではたして事態が把握できているのだろうかと思えるほど冷静な話し振りであったし、ご遺族の反応もきわめて冷静であった。また意外にも「週刊文春」がこの青年に関しては、以前とは違い冷静な報道をしていたようにも思う。前に殺されたジャーナリストに関してはどうもある程度つながりがあったような報道の仕方であまり見る気がしなかったが、殺された青年にかんしては色々な仕事についていたことなどが紹介されていたので、この人にも色々あったのだなということは一応想像できた。無論、その行動は決して賞賛されるものではないが。
ハッサン氏の本当の気持ちはもちろん分からないが、他の何を犠牲にしても命だけは助けてくれというのが正直なところであっただろう。アフガニスタンでは国連職員がやはり人質になっているはずだが、その後どうなったであろうか。気がかりである。