クー太郎の最後のとき
23日の月曜日、その日はクラブでリモートワークをするつもりでした。
9時からの会議があり、その前にクー太郎を馬房に戻さないと、という焦りがありました。
その結果、クー太郎を転ばせてしまったのです。
本当に申し訳ないことをしてしまった、悔やんでも悔やみきれません。
それまでもよく躓いていましたが、あの日、私はクー太郎に背を向けて引き手を引いていました。
その時、躓く音と、洗い場にいらしたM2さんの「あっ」という声で振り返ると、後ろにひっくり返りそうなクー太郎と目が合いました。
「ママ、どうしよう」と言っているようでした。
慌てて引手を持ちましたが、クー太郎はそのまま尻もちをつくように倒れてしまいました。
8時50分頃です。
それでも起き上がれるのではないか、と思っていたのですが、1度目で起き上がれず、横たわってしまいました。
9時からのレッスンの下乗りも中止して、全スタッフが駆けつけてくれました。
スタッフOさんがすぐに獣医さんに連絡するように私に進言してくれました。
万が一起き上がれない、となってから連絡しても遅いから、でした。
これは本当に大事な判断でした。
クー太郎が苦しむ時間を少しでも短くすることができたので、冷静な判断をしてくれたOさんに感謝しています。
9時過ぎに連絡がとれ、獣医さんがすぐに来てくれることになりました。
そこからクー太郎の向きを変えてみたり、みんなで馬着を持って「せーのっ!」で立ちやすそうな場所に動かしてみたり。
全力でサポートしてくださいました。
クー太郎を馬場に移動できたら立ち上がれるのでは、と考えてくれたスタッフもいましたが、クー太郎は蹄底が痛かったので、馬場では跛行していましたし、前肢が踏ん張れなかったのではと思います。
クー太郎は四肢が強直していました。
驚いていたのか、焦っていたのか、わかりません。
でもそれを見たときに、これはもう立ち上がれないなと思いました。
その後、2-3回、自分で起きようとしましたが、後肢が立てず、そして最後の1回は、後肢まで立てたのですが、前肢が支えられず、再び転んでしましました。
それが9時40分くらいだったでしょうか。
途中、馬着を脱がせてしまったので、その後は引きずることもできず、そのままの状態で獣医さんを待つことになりました。
その間、私は頭が回らず、ただクー太郎を抱くことしかできなかったのですが、周りにいたメンバーさんがお水を持ってきて、タオルで絞ってクー太郎に飲ませてくれました。
クー太郎、喉が渇いていたようで一生懸命水を舐めていました。
皆さんが「クーちゃん頑張って!」と応援してくださいました。
本当にありがたかったです。
バナナを口に運んでもくださいました。
それを見て、私もすり下ろしてきた人参を少し口に入れました。
私はクー太郎に「もう頑張らなくていいから」と何度も伝えました。
この日は、風もなく穏やかな日向ぼっこ日和でした。
久しぶりに横になったクー太郎に、「良かったね」と言い、いつも私の腕で寝るときのように子守歌をハミングしました。
そうして暫くはウトウトしていたのですが、10時30過ぎから激しく頭を振り出しました。
この体勢が辛かったのだと思います。
口元にあった私の脚を噛んで、苦痛を訴えました。
せめて向きを変えてあげれば良かったのですが、コンクリートの上の滑りやすいマットの上だったのでやめたほうが良いとのことでした。
獣医さんに苦しんでいると連絡しました。
クー太郎が激しく頭を振るので、少しずつ草のあるほうに移動したりしました。
クー太郎の頭が地面で擦れないように、オーナーさんが厚めのゼッケンを持ってきてくださいました。
クー太郎の頭の位置に合わせて、皆でこまめにゼッケンを移動しました。
11時10分頃、獣医さんに連絡するとあと10分くらいのところとのことでしたが、なぜか、その電話の履歴が残っていません。
獣医さんの到着までの時間が永遠のように感じられました。
11時半過ぎ、獣医さんが到着してすぐに「楽にしてあげてください」とお願いしました。
クー太郎の苦しむ姿を見て、すぐに鎮静剤を投与してくださいました。
すぐにクー太郎の動きが止まり、動けない苦痛から解放されたようでした。
獣医さんが到着されたので、これから治療が始まると思われた方もいましたが、そうではないことを伝えました。
クー太郎は11時45分、私の腕の中で、オーナーさん、スタッフやメンバーの方々に見守られながら旅立ちました。
クー太郎は開眼していましたが、本当にきれいな精悍なお顔でした。
最後のお別れをクー太郎と私と獣医さんだけにしてくださるとオーナーさんが配慮くださいましたが、周囲のかたの意思にお任せしました。
皆さん、クー太郎の臨終に立ち会ってくださり、優しい声かけをしてくださいました。
そして、私がただ泣くばかりで何もできないなか、エンジェルケアをしてくださいました。
ボロを取り、尻尾もきれいに洗って下さいました。
また鬣をきれいにといてくださいました。
クー太郎は綺麗になって、白い布をかけていただき、暖かい日差しの中で二人だけの時間をゆっくりと過ごすことができました。
その間、クー太郎の担当M2さんが、私におにぎりとお茶、甘いパンを買ってきてくださいました。
私は有難くおにぎりをいただきました。
この日のレッスンはすべて中止となってしまい、クラブに来られていた方には本当に申し訳なく思います。
クー太郎はこの後、クラブの馬運車に乗って大学に向かいました。
馬運車に乗せる時も、総勢10人以上でブルーシートで持ち上げながらでした。
最後までクー太郎のために尽力いただいた皆様に、本当に感謝いたします。
クー太郎は献体しましたので、そのことも後日ご報告します。
最後に私の膝上にあるクー太郎の苦痛の痕跡を載せます。
気持ち良い写真ではありませんのでご注意ください。
当日
翌日
亡くなった日の夜、お風呂の椅子に腰かけたときに気づきました。
クー太郎の苦しみをあらためて知ることとなり、声をあげて泣きました。
一生消えてほしくないと思いました。