猫の夏、猫の冬

 うちの猫の話をさせてもらえば、猫は猫であるがゆえに、やはり寒さが苦手だろうと思う。冬は毛布にもぐるように丸くなって眠っているし、ヒーターをつければ、真ん前に座り込んで離れられない。庭へ出て帰ってきたときなど、体が冷えているのか、そそくさとついていないヒーターの前にやってきて座り、スイッチを入れろと無言の催促である。
「猫はこたつで丸くなる」という童謡はほぼ正しいと思う。だけど、雪が降って庭を駆け回るのは犬だけではない。めずらしく大雪が降って、小さな庭が雪景色となった朝など、開けた窓から吹き込む寒気もものともせず、好奇心いっぱいで白い世界へ踏み出していく。小さな柔らかい肉球が、しもやけにならないのだろうかと心配になる。もっとも、やはり猫だから、駆け回って遊ぶようなことはせずに、しばらくすると、ああ寒かったという顔をして、家の中に戻ってくる。
 暑いのは、あまり苦手ではないのかもしれない。夏の日には、板敷きの廊下でからだを目一杯だらりと伸ばして、だらしなく寝そべっているかと思えば、窓を閉め切った南向きの部屋の、冬のために作った断熱材つきの段ボール箱の中で、暑そうな顔をして寝ていることもある。
 私はといえば、昔は暑いのが嫌であったが、今では寒いのがより嫌いである。もっとも、夏になれば寒いほうがまだましだと考え、冬が来れば暑いほうがよかったのにと不平をもらすのだから、勝手なものである。
(トラックバック練習板:テーマ「苦手な気候はなんですか」)
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小林光「エコハウス私論」

 エコハウスとは、環境への負荷の小さい住宅のことである。著者の小林光氏は、現環境省官房長であるけれど、本書は、お役人の立場から小難しい議論を並べ立てて、環境に優しいエコハウスを勧めるものではない。氏個人が自宅としてエコハウスを建てた、その経験談である。誰しも、家というものに少なからず関心を抱いているだろうから、施主の立場で書かれたこの本は、とても興味深い。また、二世帯型住宅を建てようという動機や、地主との交渉など、家を建てる前の段階から述べられているので、エコハウスに限らず、これから家を建てようと考えている人にも参考になると思う。

 地球温暖化が深刻な問題だといわれて久しいが、日本では、温暖化による顕著な影響はまだあまり見られないから、一般市民にはぴんと来ないというのが実情だろう。温暖化により南極の氷が解けて、ペンギンの営巣地が水浸しになっている映像なんかをテレビで見ると、そのときは、何とかしなければ、と思うけれど、それでも日々、平穏な生活が続いて、切羽詰ったことなどなにも起こっていなければ、未来の危機というのは想像しにくいし、そのための行動も起こしにくいというのが人情だと思う。
 しかし、家庭から出る二酸化炭素の量は年々増加傾向にある。私たち一般市民が、何らかの行動を起こすということは、温暖化防止にとって大きな意味がある。むしろ、行動を起こさなければならないというべきである。
 その対策のひとつが、本書で紹介されているエコハウスである。著者の小林氏は、基本的な家の構造から電気機器といった設備まで、徹底したエコを目指しているけれど、そこまではしなくても、たとえば断熱性や気密性を高めたり、太陽熱を利用する設備を取り付けたりということだけでも、家庭から排出される二酸化炭素の量はずいぶん削減される。
 エコハウスは住み心地の点でも優れているという。小林氏は、立替前のエコでない家と比較して、エコハウスが環境に優しい家であると同時に、そこに住む人間にとっても優しい家であるということを強調している。これは大事なことだ。自分にとってもいいものでなければ、エコへの努力は長続きしない。身近なところで、環境に優しい行いが、実は自分にとってもいいことなのだということがわかれば、人々の意識は少し違ってくるのではないかと思う。

 本書を読んで、著者の、環境に対する真摯な姿を目の当たりにすると、自分も何か、たとえば、こまめに消灯するとか、レジ袋を持参するといった小さなことからでも、はじめなければならないという気にさせられる。そういう点で本書には、環境意識を向上させる啓蒙書的な役割も見出せると言えるかもしれない。
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