にせ猫ちぐらの陥没

しばらく見向きもしなかったくせに、ライバルである息子が持ち出してきたことからまた使うようになったみゆちゃんのにせ猫ちぐらであるが、最近は中に入って眠らず、ちぐらの屋根の上で眠っている。当然、にせの布製ちぐらであるから、そのままの形状を保持できずに、みゆちゃんの重みで隕石の落ちたクレーターみたいに丸く陥没している。その、少し身体が包み込まれるような陥没具合がみゆちゃんは好きなのではないかと思う。巣の中で鳥がうずくまっているような心地よさかもしれない。
 みゆちゃんが怪我をして我が家にやってきた年の冬にも、エアコンを消したあとみゆちゃんが寒くないように、毛布をかぶせたダンボールハウスを部屋に置いておいたのだけれど、やっぱり上に上って眠っていた。もともと中に入って寝るためのもので上に乗ることは予定していなかったから、屋根の強度は低く、みゆちゃんの重みで天井の中心が蟻地獄の巣のように徐々に沈んでいって、それでもみゆちゃんは気にせず寝ていたのだが、最後にはすっかり天井が落ちてしまった。そこで天井がへこまないように補強してやると、一向に使わなくなったので、やっぱり陥没しているのがいいのだろうと思う。
 この前読んだ「ネコの気持ちがよ~くわかる本」という猫の気持ちを分析した本には、猫が両目を手で覆うようにして眠るのは明かりが眩しいためで、眩しいけれど飼い主のそばに居たいのでそうやって目を覆って寝ているのだということが書いてあったから、おそらくみゆちゃんも、私のそばに居たいがためにちぐらの中ではなく上で寝ているのだと思っていい気持ちになっていたのだけれど、この前の暖かかった日にちぐらと中の毛布を全部日に干してやったら、そのあと気持ちよくちぐらの中に潜り込んで寝ていたから、そういうわけでもなかったのかもしれない。
 みゆちゃんが入ると、にせちぐらの中はみゆちゃんの熱気がむんむんこもって、入り口に顔を近づけただけで温かい空気が感じられるほどで、中を覗くと、薄暗がりで真っ黒な目をしたみゆちゃんが、心地よさそうにのどを鳴らしてこっちを見ている。ボア生地で囲まれた小ぢんまりとした空間は居心地がいいに違いないのだろうけれど、もう春だから、またしばらくしたらみゆちゃんは、気候に即したもっと快適な寝場所に移動するのだと思う。


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