猫鳥合戦

 だいぶ寒さも緩んで、みゆちゃんが庭で過ごす時間が長くなった。庭で何をしているかというと、小鳥が来るのを見張っている。春らしくはなったが、山茶花の若木の下にじっと息を殺しているのはまだ寒いだろうと思う。にもかかわらず、みゆちゃんは根気よく、庭木に刺したみかんを食べに小鳥が来るのを待っている。
 ときどき見ていると、低姿勢でこそこそと木の陰から陰へ移動したりしている。本人はいたって真剣なのだろうけれど、たいして苦労もない家猫のくせに、虎や豹の真似事をしているのがなんだか可笑しい。実際は、たとえ張り込み中であっても、少し開けた窓の隙間から煮干の袋を見せると、にゃーんと言って飛んで戻ってくるから、野生の猫とは真剣さの度合いが違う。
 待っていてもメジロがこないこともあるが、飛んでくると、ますますみゆちゃんはじっと固まって、頭上の枝から枝へと飛び移るメジロの様子をうかがっている。ときどき、物陰からぱっと飛び出してみるけれど、もともと高い枝であるし、メジロはすぐに飛び立つから、捕まえられるはずもない。それを知ってか、メジロの方も猫をなめてかかっている。
 とうとうみゆちゃんは業を煮やし、メジロの木の下まで出て行って、にゃにゃにゃ、と小鳥に向って鳴き出した。無茶な行動に出たなと思ったのだけれど、意外にも、メジロの方も猫に向ってちきちきと応酬した。にゃにゃにゃ、ちきちきちき。
 やがてメジロは馬鹿にするように小さな糞をひとつ落として飛び立って、入れ替わりにもう一羽の別のメジロが飛んで来た。選手交代である。新しく来たメジロも、なにやらみゆちゃんとやり合っている。にゃあにゃあちきちき、話がついたのかつかないのか、しばらくするとメジロは去って、眠たくなったみゆちゃんは家の中に戻りまどろみ始めた。そのあと庭では、今度はメジロとヒヨドリが、ぴーぴー、ちきちき言い合っている。


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