おてんばハル

 お転婆キキと大人しいハル、というつもりで名前をつけたのが、日を追うごとにすっかり中身が入れ違ってしまって、お転婆ハルと物静かなキキになってしまった。
 よく眠るキキに対して、ハルは睡眠時間も短く、好奇心丸出しでしょっちゅううろうろしては椅子の背に飛び上がったり、ひもの切れっ端に飛びついたりしている。このあいだも、窓のそばの椅子に座っていたら、ハルがどこからかとことことやって来て、まだ明るいので窓の横に束ねてあったカーテンを、突然するすると登りだした。
 たいていの猫がそうであるように(もしくは、少なくとも私がかかわりあった猫はたいていそうだった)、ハルもちゃんとしたおもちゃよりも、紙くずとか、ごみのような物で遊ぶのが好きである。実家には、ネットに入ったハルのおもちゃセットがあるのだが、中身は、ピンポン球くらいの大きさに丸めた広告とか、小さく結んだレジ袋などである。ハル、きょうはこれで遊ぶかい、と父が紙玉を出してやると、ハルはさっそく紙玉を追いかけて、部屋中を走り回った。ピンポン玉よりも転がりすぎず、ちょうどよいのかもしれない。
 部屋を仕切っているアコーディオンカーテンの下をくぐって、向こう側へ姿を消したと思ったら、しばらくすると、カーテンの下から小さな白い手がつっと出てくる。その手に軽くタッチすると、またカーテンの下に引っ込む。今度は、こちらからカーテンの下に手を差し入れると、小さな両手で指先を掴んでくる。その肉球があまりにも柔らかくて可愛らしいので、緩く握ると、手を引っ込めてしまう。
 ちゃめも、子猫の頃、このアコーディオンカーテンで遊んでいた。身体の大きさが自分の2倍も3倍もあるネロに飛び掛っていってちょっかいを出し、最初は鬱陶しいと思いながらも我慢していたネロが、段々腹を立てて反撃してくると、さっとカーテンの下に潜り込む。と思ったら、またすぐにすごい速さで飛び出してきて、ネロに踊りかかる。それがあまりにも素早いので、カーテンの向こうに飛び込んだちゃめがそこで一生懸命方向転換しているのだろうと想像すると可笑しかった。
 そのネロもちゃめもどちらもトラ猫なので、トラ猫というのはやんちゃでお転婆なものだと思っていたのだが、どうやらキキは、そうではなかったようである。
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