ねこ絵描き岡田千夏のねこまんが、ねこイラスト、時々エッセイ
猫と千夏とエトセトラ
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風邪の夜の夢
昨日の夜は、ゆっくり寝て休もうと思っていたのに、詰まった鼻が気になってなかなか寝付けなかった。そういうときは、風邪薬でも飲めば症状が楽になってよく寝られるのだろうけれど、私はあまり薬を飲むのが好きではないから、結局我慢して通した。薬が嫌いといっても、別に何かの根拠があるわけではなくただの食わず嫌いで、いざ飲んで、いったんその効き目を経験したら、単純にすごいなあと驚いたりする。タミフルと異常行動の関係についての真偽のほどはわからないが、実際に自分が飲んだときには感動した。すぐにすうっと楽になって、それまでうんうん唸り声が出てしまうほど苦しかったのが嘘のようであった。なんとすばらしい新薬だろうと思った。
大人になってからはあまり高熱が出ることもないのでもう見ないけれど、子供の頃は、熱が出ると決まって同じような夢を見た。何もない白い空間に、ただ黒い糸だけがあって、熱が上って苦しいときにはその糸がもつれたようにくしゃくしゃになる。少しおさまって楽になると、糸はまっすぐに水平にぴんと伸びる。場面は変わって、狭い暗い部屋に大きな重くて黒い物体がぎゅうぎゅうに入っていると、ひどく苦しい。あるとき、そんな夢を見るのだと言ったら、弟も、細部は違うけれど、熱が出たときはだいたい同じような夢を見るといった。さらに、親戚が何人か集まったときにその話をしたら、来ていた一人が、自分もよく似た夢を見ると言った。血がつながっているから、頭の構造も似てはいるのだろうけれど、そういうところまで共通しているとは、なんとも頭の中の不思議という感じがする。
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春風邪
風邪をひくと、お腹が減る。風邪にかかると体力がいるから、お腹がすいてご飯を食べるのは理にかなっていると思うけれど、風邪をひいたら食欲がなくなるという人から見れば、ずいぶん奇妙なことらしい。もっとも、お腹がすいて食卓についても、いつもよりは食べられないから、少しは食欲が減っているのだろうけど、それでもお腹は鳴る。
急に春らしくなって、頭では春うららに喜んで、暖かくなったことについて何の悪いことがあろうかと思うのだけれど、からだの方は、急な気温の変化にとまどって、免疫機能なんかが低下するのかもしれない。心で感じたのと同じようには体はいかない様である。
皆さんも、季節の変わり目、体調にご注意ください。
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猫デパート~ホワイトデー編~
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甘えん坊タマ
2008年03月14日 / 猫
要領がいい猫で、すぐに懐いて甘えるから、一番新顔のくせに、もう古くからいる猫のように家の中に馴染んでいる。ポチにまで甘えるしまつで、朝起きると、ポチの胸の辺りに自分の顔をこすりつけて挨拶する。はじめポチは迷惑がって、ときどき猫パンチをお見舞いしたりしていたのだが、それでも擦り寄ってくるタマに根負けして、このごろは首筋の毛を舐めてやったりしている。
要領がいいといえば聞こえがいいけれど、タマはいい加減な猫で、警戒心というものがあまりない。まだ実家の人間に完全に馴れていない頃、風邪をひいたので、寒いだろうと思って外の箱で寝ているタマの頭から毛布をすっぽりかけてやったら、いつまでも頭から被ったままで、すぐそばを通っても、ちっとも起きない。周囲の様子が見えないというのは、元野良の性分からすると落ち着かないと思うのだが、タマは気にならないらしい。
唯一抱っこが平気な猫もタマで、ちゃめやみゆちゃんなら、抱っこしても30秒も持たずに腕を蹴って逃れていくのに、タマはごろごろ言いながら、目を閉じ、手足を伸ばしていつまでも抱っこされている。
その鈍感さのおかげでみんなに可愛がられるのだから、タマは得な猫であるが、かわいいばかりで、はきとしたところはちっともない。寝てばかりである。猫には活発なのと不活発なのがいて、デビンちゃん、ポチ、ちゃぷりも寝てばかりの部類である。
反対に、ネロやちゃめ、みゆちゃんは活発で遊ぶのが好きだ。先日も、みゆちゃんが部屋の隅からビーズの玉を見つけて転がしてくるので、向こうへ投げてやったら、追いかけていってまた転がして戻ってきて、投げろと言わんばかりにビーズの前に座ってこっちを見つめている。そんな遊び好きなみゆちゃんだから、子猫の頃に遭った交通事故で一時は車椅子生活になるとまで言われた怪我がすっかり治り、十二分に走り回れるようになって本当によかったと思う。
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猫のひと睨み
2008年03月12日 / 猫
驚いて一度は飛び立ったカラスだが、賢い鳥だから、私のことなど恐れるに足らないとちゃんとわかっていて、人がいなくなればまたごみを漁ろうと、屋根の上や電線の上から遠巻きにしてこちらを伺っているその視線が、頭の上に感じられるような気がする。同じ鳥なのに、庭にやって来るメジロやヒヨドリと違って、カラスには可愛らしさが全然ない。鳴き声もそうで、かあかあ、があがあ、まったく人を馬鹿にしているような声で鳴く。散らかったゴミを片付けている私のすぐ真上にいるカラスが、かかかか、かかかか、と鳴いている。明らかに嘲笑しているようである。
実家はここよりだいぶ山が近いので、少し事情が違うかもしれないが、よく外猫用に置いてあるえさを狙ってカラスが飛んできた。えさを散らかしてしまって困るので追い払うのだけれど、ちょっとやそっと脅かしたくらいでは、賢いカラスは応えない。はじめは、家の中から物を投げつけるジェスチャーを見せただけで逃げたのだが、数回やるともう嘘だとばれて逃げなくなってしまった。そこで、窓からネロの顔をのぞかせてみたところ、カラスは一目散に飛んでいって、しばらくは戻ってこなかった。トラ猫のひと睨みは効果がある。
みゆちゃんも、メジロとおしゃべりばかりしていないで、少しはカラスを追っ払うくらいしてくれないかと思う。しかしみゆちゃんのとぼけた顔を窓から覗かせたら、逆にカラスに突っつかれそうで、甚だ心もとない。
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憧れのヨーロッパ陶磁
昼間はだいぶ気温が上がるというので、もうダウンのコートはやめて、薄手のジャケットを着て行ったが、日が差すと暖かいけど風はまだ冷たい。あたりが少し暗くなって日が陰ると、寒くてからだが引き締まる。見上げると、青空に浮かんだ小さなちぎれ雲にちょうど日が入っていて、すぐにまた顔を出すかと思ったら、意外に雲の端っこのあたりでぐずぐずしている。
開催中の特別展覧会の内容は、日本とヨーロッパ各国とのあいだで修好通商条約が結ばれてから150年であるのを記念して、近代の日本人が出会ったヨーロッパの陶磁器と、それに合わせて、ヨーロッパ陶磁に影響を受けた日本と中国の陶磁器である。
ヨーロッパの陶磁器、特に真っ白な磁器というのは中国の磁器に影響を受けたものであるというから、そのヨーロッパ陶磁から影響を受けた東洋の陶磁器というのは、何かの縁のような感じである。そうして見ると、西洋的なデザインの中にも、どこかしら東洋の要素が含まれているような気がする。陶磁器というひとつの形態の中に、遠くはなれた東洋と西洋の文化が融合していると考えると興味深い。
面白いと思ったのは、ミントンとかウェッジウッドとかマイセンとか、ヨーロッパ製の陶磁器のどれにも、純日本的な名称が付けられていることである。ミントン社のリスが描かれた色鮮やかな皿は「金彩色絵栗鼠文皿」、マイセン社の勿忘草が浮き出た砂糖入れは「色絵勿忘草飾合子」。日本人が持ち帰ったり、ヨーロッパから寄贈された作品には、みな日本で日本の名前が付けられたらしい。非常に西洋的な図柄の作品に和名は何となく違和感があるような気もするけれど、現在の、外国語の名前をそのままカタカナ表記したような名称より面白くていい。
会場には、贅を尽くしたマイセン磁器のテーブルセッティングも展示されていたが、あんなに美しくて高価な食器では、自分のような小市民は落ち着いて食事が出来ないだろうと思う。まさに、展覧会の名前どおり、「憧れのヨーロッパ陶磁」なのだろう。
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猫鳥合戦
2008年03月10日 / 猫
ときどき見ていると、低姿勢でこそこそと木の陰から陰へ移動したりしている。本人はいたって真剣なのだろうけれど、たいして苦労もない家猫のくせに、虎や豹の真似事をしているのがなんだか可笑しい。実際は、たとえ張り込み中であっても、少し開けた窓の隙間から煮干の袋を見せると、にゃーんと言って飛んで戻ってくるから、野生の猫とは真剣さの度合いが違う。
待っていてもメジロがこないこともあるが、飛んでくると、ますますみゆちゃんはじっと固まって、頭上の枝から枝へと飛び移るメジロの様子をうかがっている。ときどき、物陰からぱっと飛び出してみるけれど、もともと高い枝であるし、メジロはすぐに飛び立つから、捕まえられるはずもない。それを知ってか、メジロの方も猫をなめてかかっている。
とうとうみゆちゃんは業を煮やし、メジロの木の下まで出て行って、にゃにゃにゃ、と小鳥に向って鳴き出した。無茶な行動に出たなと思ったのだけれど、意外にも、メジロの方も猫に向ってちきちきと応酬した。にゃにゃにゃ、ちきちきちき。
やがてメジロは馬鹿にするように小さな糞をひとつ落として飛び立って、入れ替わりにもう一羽の別のメジロが飛んで来た。選手交代である。新しく来たメジロも、なにやらみゆちゃんとやり合っている。にゃあにゃあちきちき、話がついたのかつかないのか、しばらくするとメジロは去って、眠たくなったみゆちゃんは家の中に戻りまどろみ始めた。そのあと庭では、今度はメジロとヒヨドリが、ぴーぴー、ちきちき言い合っている。
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つぶす時間
もっとも、「つぶす時間」という概念の見方の違いもあるかもしれない。空いた時間があると常からやりたいと思っていることをそこでやるから、自分ではあまり「つぶす」という意識がないのだけれど、人によっては、それが「時間をつぶす」ことだというかも知れない。
外出するときには鞄の中にスケッチブックと文庫本を入れているから、待ち時間などが生じると、たいてい絵を描くか本を読むかしている。車が赤信号で止まったときなど、バス停や横断歩道で待っている人をスケッチする。信号が赤のあいだというのはたいして長くはないけれど、モデルはさっさと描かないとすぐにうろうろしてしまうから、赤信号の時間くらいに仕上げるのがちょうどいい目安である。
今はあまり自由になる時間がないから、そういう細かい空き時間も利用しているけれど、いざ自分の時間を好きなだけ与えられたら、目いっぱい有効に使えるという自信はない。本来が怠け者の性分だから、時間があればあるほど後回しにしてしまう。自分にとっては少々時間が足りないくらいがいいのだと思う。
(トラックバック練習板:テーマ「時間のつぶし方は」)
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春近し
今年の冬は長いらしいが、週間天気予報を見ると、当たるかどうかは知らないけれど、来週にはようやく暖かくなるらしい。毎年夏が終わって秋風が吹きはじめると、寒くなるのは嫌だなと決まって思うのだけれど、いざ冬になってみると、寒いのにからだが慣れてしまって、あまり気にすることなく日を過ごしているうちに、春になる。早く冬が終わるのはいいが、そうやって季節がどんどん巡っていくのだと考えた途端、急に恐ろしいような気もする。
昨日降った雪もなごり雪で、真冬に降る雪とは様子が違う。空が明るいせいか、冬の暗さがなくて、どこか春めいている。春になるのはうれしいけれど、暖かくなって野山にも食べるものが豊富になったら、もうメジロは庭に来てくれないのではないかと思う。冬のあいだ毎日顔をあわせていただけに、あの可愛い姿が見えなくなるのはさびしい。
先の水仙だけれど、みゆちゃんが花を食べることはないだろうから、葉を除いて花だけ挿せばいいと気づいた。部屋も玄関も、今この机の上も、水仙の冬から春へ漂う甘い香りがしている。
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