今までの撮影歴で、一番の憧れを持って必死に撮影に挑んだ機関車は、間違いなく「EF57」だ。
ちょうど我々の年代だと、国鉄蒸気末期の頃だから、最後の蒸気機関車を求めて渡道して、SLを撮影する仲間たちは周りには多かった。しかし、アントンKは、当時まだ幼稚だったのか、身近ではない蒸気機関車というものの魅力は判らなった。同級生が、自慢げに煙が立ち上がったSL写真を見せてくれ、何度もお誘い頂いたのだが、あまりに現実とかけ離れていたからか、興味はあったが、撮影に行こうとまで思わなかった。今にして思えば、一度でも友人に同行していれば、SLに対してかなり今とは違った価値観を持てたのだろうと、少し後悔の念をもつ。でも、その当時からSLよりもっと身近な鉄道車両に興味があったから、今なおこの趣味を継続できているとも言えるかもしれない。
そんな当時の自分には、このEF57はストレートに心に入ってきた。茶色の旧型電機ながら、もっと身近だったEF13やEF15とは違い、デッキが長く、かつ大きなパンタグラフが左右前に突き出ていて迫力満点。しかも旅客専用の電機というところに憧れたものだ。
雑誌の特集写真に憧れ、ゴーナナ最後の聖地である東北線に明け暮れる日々は、今でも一番の若き日の思い出となっている。
写真は、そんな当時に撮影に出た時の一コマ。上野発の1番列車121列車は、EF575号機牽引。宇都宮まで乗車して、この駅でカマ替え。ここから黒磯までは、EF5884とEF5713との重連牽引だ。そのシーンを隣のホームに急いで撮影したもの。ファインダーの中でゴーナナ同士が並んだと興奮し、必死でシャッターを切ったことを思い出す。背景の東北新幹線の橋脚が、未完成なのが時代を感じる。月並みな思いだが、今の機材を持ってこの日に戻れるのなら、少し寿命を縮めても構わない。
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1976(S51)-10-31 121レ EF575 & EF5713 東北本線/宇都宮にて