2回目となる「大ブルックナー展」を聴きに行ってきた。
梅雨の時期だから、天気予報とにらめっこしては、行程を計画してきたが、結局は一番早く楽な方法に相成った。予報よりも、実際は良い方向の天候で、今日も全国的にまずまずの予報に変わっているため、ちょっと悔やんでいるところだ。かといって何か変わる訳ではないのだけれど・・・
今回は、第7番ホ長調。後期の楽曲でも、第8・第9番に比べて少しだけ小ぶりだからか、前半にモーツァルトの協奏曲が演奏された。1月の第8の時よりもさらに聴衆は増えているようで、5階席までほぼ満席に見えた。この土曜日の15時開演という演奏会の設定が微妙な時間帯で、もう少し早くするか、あるいは、夜にするかしないと、結局この土曜日1日が演奏会で終わりとなってしまう。特に東京からだと、いかにも中途半端になるので再考願いたいところだ。当然関西の地元の方々にとっては、ゆっくりとした休日の午後ということになるのだろう。まあ仕方がないか・・・
前半は、モーツァルトのK488。結構好きな曲で、よくモーツァルトの中でも、抜き出してCDで聴いている楽曲だ。この日の演奏は、モーツァルトらしく、明るくさわやかな演奏。実に指揮者井上氏のソリストへの配慮が伝わってくる演奏だった。どちらかというと、インテンポでグングン押してくるが、聴かせどころはたっぷりと、ソリストにお任せといった感じ。ソリストの関本昌平は、アントンKは初めてだと思うが、現代風の技巧派のピアニストといった雰囲気。大変細かな音のタッチが綺麗で、それも粒が揃っていて心地よい。フォルテはもっと音量が欲しかったが、ピアニッシモは、透き通っていて美しい。アンコールも、指揮者に半ば強引に促されてショパンを披露していたが、テクニックを全面に押し出した演奏内容で、ただただ驚嘆した。今後年齢とともに、どのように音楽に深みが出てくるのかが期待される。
そして後半、ブルックナーの第7交響曲。かつて井上氏は、新日本フィルでこの第7を録音している。およそそれから十数年の時間が経ち、どんな変化が現れたかが個人的な聴きどころだったが、基本的な解釈はさほど変わっていなかったように思う。ノヴァーク版とはっきり謳っているにも関わらず、あえて逆らって部分的にハース版のように演奏するスタイルは相変わらず見られ、やはり井上氏の拘りが大いに感じられた。版による相違は、アダージョ楽章の打楽器の追加が一番大きいところだが、各楽章の表情記号が細かいところで変化している。この日、井上氏は、アダージョのクライマックスでは、打楽器を強烈に叩かせていたが、フィナーレの表情付けや、第1、第4のコーダでの演奏は、明らかにハース版仕様になっていた。アントンKも、このコーダの解釈は大賛成であり、音楽が小さくせせこましく成らないのが良い。どんどん音楽が大きく膨れ上がっていく過程が長く、第1楽章のコーダでは、弦楽器が管楽器に負けることなく主張していたのが印象的。井上氏の解釈は、全体にじっくりと進めていくので、音楽の間というものが強調され、効果的に伝わったと思っている。特にアダージョのクライマックスに入る前の(譜面記号R)フェルマータの強調。ここは特に効いていた。全体にオケの鳴りが悪いかなと思っていたが、フィナーレの第3主題あたりから、その不安も吹き飛び安堵したが、かつて何度も何度も聴いた朝比奈の第7とは、同じ大フィルと言えどもかなり変わってしまったという印象はぬぐえない。時代とともに、世の中とともに、演奏内容もそしてオケも変わる。当たり前のことなのだが、どことなく寂しさをもってホールを後にした。
第2回 大ブルックナー展
モーツァルト ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K488
ブルックナー 交響曲第7番 ホ長調(ノヴァーク版)
井上道義 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:関本昌平
兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール