指揮者山田和樹氏の親族と友人というアントンKの親戚からチケットを譲り受け、今回はマーラーの第8交響曲の演奏会へ出向いてきた。このコンサートは、山田和樹氏が3年かけてマーラー・ツィクルスとして行っている終盤、第三期「昇華」として開催されたもの。なかなか意欲的なシリーズだ。
これまでアントンKは山田和樹を聴いたことがなく、一度聴いてみたいと思っていた矢先の出来事で、それもマーラーという、彼の年齢や経験から考えた場合、大変魅力的なプログラムに映っていたので、今回大変有意義な時間を頂いたと言う訳である。
招待席ということだからか、当然ながら鑑賞するには申し分のない座席だったが、如何せん今回のオーチャードホールの響きの悪さは相変わらずだった。比較的新しいホールの部類にも関わらず、アントンKの好みではなく、これなら今でも「聖地」と呼びたい東京文化会館大ホールの方が聴きやすいくらいだ。今までは出来るだけこのホールを避けて演奏会へ出向いたきたほどだが、今回だけはそんな横柄なことは言えない。大変有難く鑑賞してきた。
さて肝心のマーラーであるが、期待に違わず素晴らしい演奏内容だった。全体を通して声楽主体の解釈で貫かれていた山田の考えは正解で、ソロ歌手のポイントでの雄弁さや、感情移入は意図していたかどうかは別として素晴らしく感動したポイントだった。第1部の出だしこそ、コーラスの声量が大きくハーモニーが乱れて、声の質がザラザラに聴こえてしまいうるさく感じてしまったが、ここは、おそらくホールの響きの影響だと思う。パイプオルガンではないこともあるだろうが、管弦楽とコーラスとのバランスが悪かった。これは音楽が大きくなったところでいつも言えることなので、おそらく聴こえ方の影響なのだろう。
このマーラーの第8は、大規模なオーケストラと巨大な合唱団やソロ歌手が必要な楽曲だが、特に今回の合唱団の規模は今までの経験をはるかに超えた大規模なもので、オケの後ろ側にひな壇が15段もそびえ立っており、それだけでも壮観であり、参加合唱団員数も320人以上だとか・・熱演で答える日本フィルも圧倒されていた印象だった。しかし、要所におけるTpやTbの雄弁さは、明らかに指揮者山田和樹の指示であり、合唱主体でも浮き上がっていたと記述しておきたい。舞台外のバンダの位置の悪さは今後一考するべき。自席からは聴こえ方が悪く、壇上からなのか、バンダからなのか譜面を見ないと判らなくなるような響きであった。この辺のところは、以前聴いたインバル/都響の方がホールが違う(みなとみらいホール)とはいえ完璧だった。
まあ何だかんだ細かいことを書いてきたが、このマーラーの第8については、実演を聴くことだけでその意味は大きい。プレトークで山田和樹自身も言っていたが、これだけ大規模な楽曲は、一度の演奏会では採算が採れず(今回は2回公演)、それゆえ中々我々は生演奏に接する機会は少ない。だから少しでもこの楽曲に興味のある方は、実演奏に触れることをお勧めしたい。録音で聴いてきた印象をはるかに超えていき、新たな体験が出来ることは間違いないのだから・・
山田和樹指揮 マーラー・ツィクルス 第8回
管弦楽: 日本フィルハーモニー交響楽団
第1ソプラノ 林 正子
第2ソプラノ 田崎 尚美
第3ソプラノ 小林 沙羅
第1アルト 清水 華澄
第2アルト 高橋 華子
テノール 西村 悟
バリトン 小森 輝彦
バス 妻屋 秀和
第1コーラス 武蔵野合唱団
第2コーラス 栗友会合唱団
東京少年少女合唱隊
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武満 徹 スター・アイル
マーラー 交響曲第8番 変ホ長調「千人の交響曲」
2017-06-04
Bunkamura オーチャードホール