新日本フィルの定演トパーズへ向かうためトリフォニーへと急ぐ。都内は大型連休を前にどことなく休みに向かった空気を感じることができたが、アントンKも長い休みに入る前に今一度集中力を高めようと気合が入っていた。演奏会は、人それぞれ何を求めるのかで心持がまるで違うもの。アントンKは、指揮者の音楽解釈を主に耳を傾けているが、自分が好きな楽曲、経験の多い楽曲であればあるほど、一つの理想形が出来上がっていて、今まではそれとの比較に終始してしまっていた。しかし年齢を重ね、それなりに演奏会に通った体験から、最近では過去に固執することなく、新たな発見を求めて、それを楽しみに通っている。
今回は、パヴェル・コーガン指揮するロシア作品が並ぶプログラム。前半は小品が3曲あり、後半が展覧会の絵という内容だった。総じてどの楽曲も演奏は、大幅な起伏を伴った豪快なものであり、まず受ける印象は、いつも聴いている新日本フィルなのかと疑ってしまうくらいな響きの世界であったこと。もちろんそれは、音楽監督の上岡敏之氏との音楽作りの差によるものだが、ロシア出身のコーガンならでわの音色作りでオケを絶叫させクライマックスを築き上げていた。絶叫といっても下品にはならず、分厚い金管群や弦楽器群の音圧はすさまじいものだった。同じ新日本フィルでこんな演奏を聴くと、上岡氏のチャイコフスキーやプロコフィエフなど、大人しく感じてしまうから不思議なものだが、そもそも音楽作りが初めから相違しているだろうから比較しても意味がない。絵画に例えるのなら、上岡氏は響き重視の水彩画だろうし、今回のコーガンは、各声部を塗り重ねていく油絵と言えるだろう。低音から高音までしっかり鳴らし、野太い重戦車のような響きはまさにロシアの音であり、昔聴いたレニングラード・フィルのいぶし銀の音色を思い出していた。
今回、新日本フィルの定演での鑑賞だが、これほどオーケストラの音色の変化を感じた演奏会は珍しい。いつもの上岡色の強いオケの響きに自分が慣れ親しんだ証拠のようなものだろうが、指揮者の相違ここまで変化を感じたことは稀で、プロオケとは言え、オケのメンバーの懐の広さ、音楽性の高さを改めて味わった。これには、コンマスの崔文珠氏のロシアで鍛えられた思想が反映された結果なのだろう。指揮者の言いたいことをオーケストラ全体に散りばめるだけに留まらない崔文珠氏の采配にはただただ脱帽である。
新日本フィルハーモニー交響楽団 第588回 定期演奏会 トパーズ
ボロディン 歌劇「イーゴリ公より」だったん人の踊り
グラズノフ 演奏会用ワルツ第1番 二長調 OP47
チャイコフスキー スラブ行進曲 変ロ短調 OP31
ムソルグスキー(ラヴェル編曲) 組曲「展覧会の絵」
指揮 パヴェル・コーガン
コンマス 崔 文珠
2018-04-27 すみだトリフォニーホール
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