杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

マルタのやさしい刺繍

2009年11月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年10月18日公開 スイス 89分

スイスのトループ村に住む80歳のマルタ(シュテファニー・グラーザー)は、最愛の夫に先立たれて生きる気力を失くしていた。そんなある日、昔得意だった裁縫仕事を依頼され、忘れかけていた若い頃の夢(手刺繍のランジェリーの店を開くこと)を思い出す。親友リージ(ハイジ=マリア・グレスナー)の手を借りて開店準備を進めるが、保守的な村人は下着の店など破廉恥だと眉をひそめる・・・。

舞台はチーズで有名なスイスのエメンタール地方の小さな村です。村中が知り合いで保守的な土地柄ゆえ、マルタは夫から昔していた仕事については隠しておくよう言われていました。下着なんてはしたないというわけです。

しかし、夫が亡くなって生きがいを失った彼女の前に、昔の夢が再び輝いて現れるのです。親友リージや、フリーダ(アンネマリー・デューリンガー)、初めは反対していたハンニ(モニカ・グプサー)も応援してくれて、マルタは念願のランジェリーショップを開店します。

一方、マルタの息子である牧師のヴァルター(ハンスペーター・ミュラー=ドロサート)はリージの娘と不倫中、ハンニの息子のフランツは年老いた両親を疎んじています。彼らの身勝手な言い分には胸がむかつくのですが、最後まで悪役だったフランツと比べ、最終的にはささやかな親孝行をしたヴァルターはまぁ、許せるかな

老いては子に従えというのは日本もスイスも基本的には変わらないのでしょうが、自分が間違っていないと信じる「母」は強いねぇ
ハンニの自動車教習や、聖書会用にと店を取り上げられたマルタの逆襲には喝采しちゃいました。

リージに起こる不幸は辛かったけれど、フリーダの恋は慎ましく好感が持てました。インターネットはこんな小さな村でも、いえ、だからこそ効果絶大なのね。 

村の家々の大きな屋根と花に溢れた小さな窓、アップルパイと楽しむティータイムにカードゲーム、町のカフェで彼女たちの一人が食べた大きなパフェ、布地屋さんの美しいレース地、そして何より伝統の模様を加えた可愛く美しい刺繍が施されたランジェリーと、豪華ではないけれど温かいぬくもりのある風景や雑貨に心が和みます。

「遅咲きの乙女」達の紡ぎだすハートフルな物語というキャッチフレーズの通り、夢への扉を開く勇気があれば、人生は何度でも輝くのですね

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