杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

クレールの刺繍

2009年11月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2005年9月3日公開 フランス 88分

家族と離れ一人暮らしをしながらスーパーで働く17歳のクレール(ローラ・ネマルク)は妊娠5カ月。母に相談したくても関係がぎくしゃくしていて出来ない彼女は、産婦人科医の薦めで「匿名出産」を決める。
妊娠が周囲にバレることを恐れ、スーパーに病気休暇願いを出したクレールは、刺繍職人メリキアン夫人(アリアンヌ・アスカリッド)のアトリエを訪ね、雇ってもらう。


匿名出産とはフランス独特の制度で、母親の身元を伏せたまま、産後すぐに里子に出すのだそうです。
予定外の妊娠という事態に戸惑い受け入れられずにいるクレールと、最愛の息子を喪い深い悲しみの中にいるメリアキン夫人。生を授かった者と失くした者。対照的で世代も異なる二人の間の共通点は刺繍だけです。

狭いアトリエの中で黙々と仕事を続ける二人の間には、夫人の入院とラクロワからの仕事の依頼という出来事を通して、次第に絆のようなものが生まれてきます。

作品中に出てくる刺繍はどれも独創的で素敵なものばかり。
ラクロワの注文品として登場する刺繍はルサージュ氏の協力によるのだとか。
何もない大地(布)が鮮やかな花(刺繍)で埋められていく過程は、傷ついた二人の女性の再生を表現しているのかな。

クレールの家庭環境については親とのコミュニケーションが上手くいってないことしかわからず、その原因などは明かされていませんが、物語の本質には影響がないからってことかなぁ(^^;

心の底では愛を求めているクレールと、注ぐべき対象を喪った夫人という組み合わせは、互いの喪失と願望を埋めて心の絆を作るにはとても良い巡り合わせなのでしょう。

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