杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

八日目の蝉  試写会

2011年04月07日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2011年4月29日公開予定

試写会場:よみうりホール
開映:18:30~

秋山丈博(田中哲司)、恵津子(森口瑤子)夫婦の間に生まれた生後6カ月の恵理菜を誘拐し、4年間逃亡した野々宮希和子(永作博美)が捕まった。裁判で希和子は「四年間、子育ての喜びを味わわせてもらったことを感謝します」と述べた……。丈博の愛人だった希和子は彼の子供を身ごもるが、堕胎させられ子供を産めない体になった。そんな時、恵津子に子供が出来たことを知り、自分の気持ちに踏ん切りをつけようと夫婦の留守宅に忍び込むが、赤ん坊を見て気持ちが変わり、思わずその子を抱えて雨の中を飛び出してしまう。希和子は子供を薫と名づけ、逃避行を続けるが、小豆島で4年間の逃避行は終わりを迎えた……。秋山恵理菜(井上真央)は21歳の大学生となった。4歳で初めて実の両親に会った時に実感が持てず、心を閉ざして成長した恵理菜は、家を出て一人暮らしを始める中で、岸田孝史(劇団ひとり)という家庭を持つ男を好きになる。そんな頃、恵理菜のバイト先にルポライターの安藤千草(小池栄子)が、あの事件を本にしたいと訪ねてきた。放っておいて欲しいと思いながらも、なぜか千草を拒絶することが出来ない恵理菜だったが、ある日自分が妊娠していることに気付き心が揺れる。千草と共に封印していた過去と向き合う旅に出た恵理菜は、小豆島で記憶の底にあったある事実を思い出す……。


角田光代原作の同名小説の映画化で、NHKでドラマ放映もあったそうですが、今回初めて映画版を観ました。「孤高のメス」の成島出監督のヒューマンサスペンスドラマです。
前評判が高いのか、会場はほぼ満席状態で男性の姿も多かったです。

冒頭、裁判で検察・被告それぞれの言い分が語られます。家族を滅茶苦茶にしたと叫ぶ実母のヒステリックさに微かな違和感を覚えてしまった私は、以後もこの母親に感情を添わせることが出来ずに終わってしまいました。

希和子は愛人宅から連れ出した赤ん坊の恵理菜を薫と名付けて、4年に亘り逃亡を続けながら我が子として慈しみ愛情を注いで育てます。映画ではその様子を時にカルト宗教の異様な、でも平和な生活を通して、時に小豆島の美しい自然や日常の営みを通して叙情的に映し出します。
そこにあるのは、ただ、愛です。無償の愛です。

一方では、大人になった恵理菜が、ルポライターを名乗る千草という女性との出会いをきっかけに、過去の自分と向き合うことになる様子が描かれていきます。かつての父親のような男を愛し妊娠したことで、彼女は遠い記憶に閉じ込めた自分の本当の思いに気付くのです。
千草の正体(マロンちゃん)も意外でしたが、彼女が恵理菜を訪ねてきた理由も「自分探し」だったのね。一人ならダメでも二人でならと語りかけるシーンが心に残りました。

本当の両親の元に戻ってからの恵理菜は決して幸せではなかったという事実が悲しいです。
元々感情的な実母は、娘に受け入れられないことに深く傷つき、娘もまたそれ以上に傷ついていました。もし、この実母がもう少し穏やかで大らかな性格だったらと思うとやるせないなぁ。
まぁ、それだったら元々こんな事件は起こらなかったんじゃないかとも思いますが(^^;

逃避行の中で立ち寄るエンジェルホームと小豆島。
エンジェルホームは現代の駆け込み寺といった趣ですが、その独特な生活スタイルと装束はカルトっぽい。代表のエンゼルさん(余貴美子)のキャラといったら・・唖然。子供たちの天使(というよりテルテル坊主みたいだけど)のような衣装はめちゃ可愛いけれど(笑)

小豆島でお世話になる製麺場の夫婦(平田満・風吹ジュン)や近所の人たちの素朴で親切な人柄や風景の描写がとても穏やかで美しくて、希和子の涙が出そうなくらいに幸せな思いが伝わってくるようでした。
二人が引き離される最後の夜に撮った写真に残る真実の思いが深くて切なかったです。

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