さだまさし(著) 幻冬舎(発行)
1987年、熱い志と明るいエネルギーを持つ日本人医師・航一郎は、恋人を長崎に残し、ケニアの病院に向かった。劣悪な環境で奮闘する航一郎の前に、激しい銃創を負った少年兵・ンドゥングが現れる。心を開かないンドゥングだったが、航一郎の熱さ優しさエネルギーを受け、少しずつ変わっていく。そして、遂に医師を志すことを決意するまでにいたる。しかし、その後、航一郎に哀しい運命が訪れ――。2011年3月、医師となったンドゥングは、津波に襲われた石巻を訪れる。そこで出会った避難所明友館のリーダー・木場に航一郎の面影を見る。木場と共に被災者に寄り添うンドゥングは、ある日、かつての自分と同じような目をした少年に出逢い……。ケニアの日本人医師から、かつての少年兵、そして被災地の子供へ。「心」のバトンが繋がった。(アマゾン商品説明より)
さだファンの間でも名曲と名高い「風に立つライオン」。
これまで「解夏」「眉山」に出演し交流の深い大沢たかおさんからの熱烈ラブコールを受けて映画のために書かれたのが本書です
80年代の長崎とケニア、そして2011年の石巻を繋ぐ物語は、楽曲とは設定が異なりますが、根底に流れているテーマは同じです。
医師・島田航一郎に関わりのあった人たちの述懐、回顧あるいは手紙という形をとってで物語は進みます。主人公の視点で語られないことに初め戸惑いもありましたが、登場人物たちの関係が頭に入っていくにつれて、物語を俯瞰として捉えられるようになりました。そもそもこの物語の主人公は読み手である私たちなのかも
航一郎は、子供の頃シュバイツアーの伝記を読んで医者を志しました。そんな彼にとってアフリカへ行くことはまさに夢の実現です。現地で「ミスター・ダイジョブ」と呼ばれ慕われた彼は、決して安請け合いの男ではなく、物事を大きな心で受け止めて努力で乗り越えるタイプの人でした。彼が叫ぶ「ガンバレ!!」は自分に向かってのエールです。
政情不安で治安も悪く、風土病やゲリラ戦の負傷者が運ばれてくるケニアの病院で、明るく大らかな彼のキャラは次第に周囲の雰囲気を変えていきます。彼が特に心を砕いたのはンドゥグという心を閉ざした少年兵でした。やがて二人の間には確かな絆が生まれていきます。
しかし航一郎は国境近くの村へ行く途中で襲撃を受け行方不明になってしまうの。戦時下という状況で彼の取った行動が正しいとは思えないけれど、医師として気になる患者を放っておけなかった気持ちはわかるような気がします。彼の死を描かないのは、その存在自体が希望を現しているからかもしれないね。
そして数十年の時を経て、ンドゥグが医師として大震災の後の石巻にやってきます。
震災直後の被災地は土地もですが人の心も決して穏やかではありませんでした。そんな中、ンドゥグは避難所のリーダー木場の中に、航一郎(の志し)を見出します。
そして被災し彷徨っていた少年「あつお」との出会いにより、再び命と希望のバトンが繋がっていくのです。
戦場と避難所、全く違うようで実は根っこの部分では同じなのかもしれません。
心を蝕むのも人なら、希望を灯し修復するのも人ってことなのよね。
「バトン」を次の世代に渡すことの意味を考えさせられました。
1987年、熱い志と明るいエネルギーを持つ日本人医師・航一郎は、恋人を長崎に残し、ケニアの病院に向かった。劣悪な環境で奮闘する航一郎の前に、激しい銃創を負った少年兵・ンドゥングが現れる。心を開かないンドゥングだったが、航一郎の熱さ優しさエネルギーを受け、少しずつ変わっていく。そして、遂に医師を志すことを決意するまでにいたる。しかし、その後、航一郎に哀しい運命が訪れ――。2011年3月、医師となったンドゥングは、津波に襲われた石巻を訪れる。そこで出会った避難所明友館のリーダー・木場に航一郎の面影を見る。木場と共に被災者に寄り添うンドゥングは、ある日、かつての自分と同じような目をした少年に出逢い……。ケニアの日本人医師から、かつての少年兵、そして被災地の子供へ。「心」のバトンが繋がった。(アマゾン商品説明より)
さだファンの間でも名曲と名高い「風に立つライオン」。
これまで「解夏」「眉山」に出演し交流の深い大沢たかおさんからの熱烈ラブコールを受けて映画のために書かれたのが本書です

80年代の長崎とケニア、そして2011年の石巻を繋ぐ物語は、楽曲とは設定が異なりますが、根底に流れているテーマは同じです。
医師・島田航一郎に関わりのあった人たちの述懐、回顧あるいは手紙という形をとってで物語は進みます。主人公の視点で語られないことに初め戸惑いもありましたが、登場人物たちの関係が頭に入っていくにつれて、物語を俯瞰として捉えられるようになりました。そもそもこの物語の主人公は読み手である私たちなのかも

航一郎は、子供の頃シュバイツアーの伝記を読んで医者を志しました。そんな彼にとってアフリカへ行くことはまさに夢の実現です。現地で「ミスター・ダイジョブ」と呼ばれ慕われた彼は、決して安請け合いの男ではなく、物事を大きな心で受け止めて努力で乗り越えるタイプの人でした。彼が叫ぶ「ガンバレ!!」は自分に向かってのエールです。
政情不安で治安も悪く、風土病やゲリラ戦の負傷者が運ばれてくるケニアの病院で、明るく大らかな彼のキャラは次第に周囲の雰囲気を変えていきます。彼が特に心を砕いたのはンドゥグという心を閉ざした少年兵でした。やがて二人の間には確かな絆が生まれていきます。
しかし航一郎は国境近くの村へ行く途中で襲撃を受け行方不明になってしまうの。戦時下という状況で彼の取った行動が正しいとは思えないけれど、医師として気になる患者を放っておけなかった気持ちはわかるような気がします。彼の死を描かないのは、その存在自体が希望を現しているからかもしれないね。
そして数十年の時を経て、ンドゥグが医師として大震災の後の石巻にやってきます。
震災直後の被災地は土地もですが人の心も決して穏やかではありませんでした。そんな中、ンドゥグは避難所のリーダー木場の中に、航一郎(の志し)を見出します。
そして被災し彷徨っていた少年「あつお」との出会いにより、再び命と希望のバトンが繋がっていくのです。
戦場と避難所、全く違うようで実は根っこの部分では同じなのかもしれません。
心を蝕むのも人なら、希望を灯し修復するのも人ってことなのよね。
「バトン」を次の世代に渡すことの意味を考えさせられました。