杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

バビロン・ナイツ

2013年11月30日 | 
ダニエル・デップ, 岡野降也(著者/編集)、小学館(出版)

L.A.の探偵デイビッド・スパンドウの次の依頼人はハリウッド女優のアンナ・メイヒュー。近ごろ熱狂的ファンから不審な手紙が度々届いている。今度のカンヌ国際映画祭で審査員を務めるアンナは、スパンドウにカンヌでボディーガードをして欲しいという。不審な手紙の差出人であるペレックは大金を手にし、アンナを追ってカンヌに飛ぶ。さらに金を盗まれたことでマフィアに命を狙われる男スペシャルも後に続く。一同がカンヌ国際映画祭の夜に繰り広げる激しい応酬の行方は…。俳優ジョニー・デップの実兄が、ハリウッドの光と影をリアルに描くシリーズ第二弾。(「BOOK」データベースより)


『負け犬の街』に続いて探偵スパンドウが登場。とはいえ、本作では元妻への未練から彼女に暴力を振ってしまい完全に関係が壊れて自己嫌悪に陥った揚句、自暴自棄気味な精神状態でアンナのボディガードをする展開で颯爽とした感じは最後までありません
どちらかというと、ポン引きのスペシャルの方が魅力的に描かれています。
女ったらしだけど身内には優しく陽気で頭の切れるスペシャルは、スパンドウよりペレックの異常さを知っている分優位に立っていて、アンナを助けたのも彼です。そしてそのことが自らの窮地(マフィアの金をペレックに持ち逃げされた)をも救ったのですから大したタマです
というか、そういう落とし前のつけ方こそがハリウッド的なのか

後半の舞台であるカンヌの映画祭の描写は、かつてジョニーと製作した『ブレイブ』で同行した経験を元にしているということで赤裸々な映画界の内幕を垣間見るようなお楽しみ感がありました。とはいえ決して楽しい内容じゃないのですが
作者はフィクションであることを強調していますが、読み手としてはやはり作者の経験から得たキャラ設定なんだろうと思ってしまうよね

依頼人に余計な感情を抱かないのが探偵の鉄則でしょうに、今回スパンドウはアンナに特別な感情を抱いてしまいます。前作の依頼人であるボビー・ダイが本作の冒頭で自殺したことが書かれて驚いたのですが、続編でスパンドウとアンナの関係がどうなっているのかも興味のあるところです。あの業界のことですから奇麗に雲散霧消しているってのが予想なんだけど。

アンナを付け狙うペレックは『ダ・ヴィンチ・コード』のシラスのように、自らを傷つけることで行為を正当化できると考える一種の偏執狂です。父親の自殺を目撃した過去が類似していることからアンナに自分を重ね合わせ付け狙うのですが、その目的がまた何とも異常
こういう性格にしたのは多分に彼の母親の影響があると考えられ、宗教に対するアンチテーゼがそこにあるようにも思えました。

暴力シーンは読んでいて気持ちのよいものではないのですが、アンナと過ごすランチやディナーの美味しそうな描写で補うことにします

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