杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

不能犯

2018年08月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年2月1日公開 106分

都会のど真ん中で連続変死事件が発生し、現場では必ず黒スーツの男が目撃されていた。その男・宇相吹正(松坂桃李)はSNSで「電話ボックスの男」と噂される人物で、とある電話ボックスに殺人の依頼を書いた紙を貼ると実行してくれるのだという。彼に狙われた者は確実に死亡するが、その死因は病死や自殺、事故など、いずれも殺人が立証できないものだった。警察はようやく宇相吹の身柄を確保して任意聴取を始める。宇相吹の能力にベテラン捜査官たちも翻弄される中、女性刑事・多田(沢尻エリカ)だけが彼にコントロールされないことが判明し……。


集英社「グランドジャンプ」連載中のコミックの実写映画化。思い込みやマインドコントロールでターゲットを殺害する「不能犯」の男と彼を追う女性刑事の対決を描いた物語ですが、面白さより不快感の方が強かったな~~

依頼人の殺意が純粋じゃないと自身に跳ね返ってくるという設定ですが、では純粋な動機&殺意ってどういうもの?

一番近いと感じた「奴」は性格異常者、生粋の悪だしなぁ

悪徳金融業者の死は幻覚による心筋梗塞。依頼人は最後に明かされます。続いて決まりにうるさい町内会長(小林稔侍)が同様に突然死。でも依頼した愛妻家の旦那が家に帰ってみると町会長に脅された筈の妻はヤク中パーティの真っ最中。妻が嘘ついてたんですね~~で、修羅場の末、凄惨な殺人へと発展します。

宇相吹を取り調べた多田の先輩(矢田亜希子)もマインドコントロールの餌食となりますが、実は彼女の殺害依頼をしたのは以前取り調べた少年(後に自殺)の父である鑑識の河津村。もちろん彼も破滅します そんな中、多田のコンビの新人・百々瀬刑事(新田真剣佑)が連続爆破事件の犠牲になって意識不明に

親の離婚で離ればなれとなった姉(芦名星)が成功していることに対する嫉妬で妹が依頼したケースからいくつかの事件が繋がっていきます。そして多田が更生に関わり目をかけてきたタケル(間宮祥太朗)の正体は・・・。 もうね~~爽やか青年の仮面をかなぐり捨てた狂気の演技は、桃李君に引けを取らないです。

自分を止めるには殺すしかないと挑発する宇相吹ですが、多田は「あんたのルールでは動かない。私は”希望”であんたを殺す!」と答えるんですね~~それに対する反応が「愚かだね・・人間は」

依頼人の殺意は同時にその人の弱さや醜さの反映で、依頼が達成されても報いが本人に還ってくるのがミソ。これは「デスノート」系というか悪魔が人間界で実験をしてる感満載な作品ってことですね。

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

KUBO クボ二本の弦の秘密

2018年08月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2017年11月18日公開 アメリカ 103分 

三味線の音色で折り紙に命を与え、意のままに操るという不思議な力を持つ少年・クボ(アート・パーキンソン)。幼い頃、闇の魔力を持つ祖父(レイフ・ファインズ)にねらわれ、クボを助けようとした父親は命を落とした。その時片目を奪われたクボは、最果ての地まで逃れ母と暮らしていたが、闇の刺客の叔母たち(ルーニー・マーラ)に見つかってしまう。母親が最後の力を振り絞って放った魔法によって助けられたクボは、母の力によって命を吹き込まれたサル(シャーリーズ・セロン)と共に、母が最後に言い遺した「3つの武具」を探す旅に出る。途中、記憶を失ったノリは軽いが弓の名手のクワガタの侍(マシュー・マコノヒー)も仲間に加わり、一行は数々の困難を乗り越えて武具を見つけていくが……。


中世の日本を舞台に勇敢で心やさしい少年の冒険を描いたストップモーションアニメです。

侍とか武具とか、設定は日本ですが、アニメーションは中国風という、ちょっと不思議な世界観です

何より目を引くのは命を与えられた折り紙のなめらかな動きですスクリーンで見逃したのが残念

日が暮れたら外に出てはいけないと母にきつく言われていたクボですが、「お盆の日には亡くなった人と話すことができる」と村のお婆さんに聞いて、父ハンゾウの墓で待つうち時間を忘れてしまいます。この時、父の返事がなかった理由は後でわかるんですね

最後の力を振り絞ってクボを逃がした母。彼女はお守りとして肌身離さず持たせていたサルに自らの魂を吹き込んで息子を守ります。口やかましく世話焼きなサルの正体はまさに母そのものなんですね

旅の途中で加わったクワガタは記憶を失くしています。サルとクワガタの会話はコントのようなユーモアに溢れていて、思わずこれはコメディかと思ったほど。でもクワガタこそがクボの父であるハンゾウだったのです

わかってしまえば、三人の珍道中はまさに親子の旅そのものでした。一緒に飯を食い、笑い合い、共に戦う中に芽ばえる互いへの慈しみや愛。クボがこれまで得られなかった幸せな時間です。

クボを守るため、闇の姉妹と戦って二人は命を落とします。遺されたクボは最後の武器である兜を手に、祖父の月の帝に挑みます。祖父がクボの目を奪おうとするのは目が見えなくなれば「人の優しさ」も見えなくなるから。月の世界には人の情(心)は必要ないのですね クボは三味線に母親の黒髪、父親の弓の弦、それから自分の髪を弦にして打ち鳴らします。村人たちや祖先の魂も共鳴しバリアが張られ、帝を打ち砕きます。そして戦いの終わり。記憶を失いただの老人となった月の帝に、村人たちは「あなたは優しい人だった」と言い、彼を受け入れるのです。憎しみを憎しみで返すのではなく受け入れ赦すことの尊さを感じることができる秀逸なシーンです。

そして、人はその生を終えても語り継がれることで永遠に生き続けることができるというのがテーマの一つでもあるのかな。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする