杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命

2018年08月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2017年12月15日公開 チェコ=イギリス=アメリカ 127分

1939年、ポーランド・ワルシャワ。ヤン(ヨハン・ヘルデンベルグ)とアントニーナ(ジェシカ・チャステイン)夫妻は、当時ヨーロッパ最大の規模を誇るワルシャワ動物園を営んでいた。アントニーナの日課は、毎朝、園内を自転車で巡り動物たちに声をかけること。時には動物たちのお産を手伝うほど、献身的な愛を注いでいた。しかしその年の秋、ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発。動物園の存続も危うくなる中、アントニーナはヒトラー直属の動物学者・ヘック(ダニエル・ブリュール)から「あなたの動物を一緒に救おう」という言葉と共に、希少動物を預かりたいと申し出を受ける。寄り添うような言葉に心を許したアントニーナだったが、ヤンはその不可解な提案に不信感を募らせていた。ヤンの予感はまさに的中し、数日後、立場を一転したヘックは「上官の命令だ」という理由をつけて、園内の動物たちを撃ち殺すなど残虐な行為に出る。一方でユダヤ人の多くは次々とゲットー(ユダヤ人強制居住区)へ連行されていく。その状況を見かねた夫のヤンはアントニーナに「この動物園を隠れ家にする」という驚くべき提案をする。ヤンの作戦は、動物園をドイツ兵の食料となる豚を飼育する「養豚場」として機能させ、その餌となる生ごみをゲットーからトラックで運ぶ際に、ユダヤ人たちを紛れ込ますというものだった。人も動物も、生きとし生けるものへ深い愛情を注ぐアントニーナはすぐさまその言葉を受け入れた。連れ出された彼らは、動物園の地下の檻に匿われ、温かい食事に癒され、身を隠すことが出来た。しかし、ドイツ兵は園内に常に駐在しているため、いつ命が狙われてもおかしくない。アントニーナの弾くピアノの音色が「隠れて」「静かに」といった合図となり、一瞬たりとも油断は許されなかった。
さらにヤンが地下活動で家を不在にすることが続き、アントニーナの不安は日々大きく募る。それでも、ひとり”隠れ家“を守り抜き、ひるむことなく果敢に立ち向かっていくのだが—。

アントニーナの行動は、絶望の淵へ立たされたユダヤ人たちを勇気づける希望になった。そして、世界各地における民族対立、紛争、テロ、ヘイトスピーチが後を絶たない今日においても、この物語は、人間の尊厳を見つめ直すことの重要性を私たちに問いかけている。(公式HPより)

 

第2次世界大戦中のポーランドで、自ら経営する軍需工場に労働者としてユダヤ人を雇い入れ保護したオスカー・シンドラーや、ビザを発給しユダヤ人の亡命を手助けした杉原千畝が有名ですが、同じようにワルシャワで自らの身の危険を冒して300人のユダヤ人の命を救った動物園の園長夫妻の実話の映画化です。

動物も人も、アントニーナにとっては等しく愛すべき存在であることが全編を通して伝わってきました。

夫からユダヤ人を救いたいと言われた時も、驚きながらもその提案を喜んで受け入れます。ユダヤ人を匿っていることが知られたら命さえ危うい状況の中での緊張感や恐怖・不安を想像するだけでも夫妻の勇気に頭が下がります。

アントニーナはヘックが自分に好意を持っていることに気付きながらも、家族や匿っている人たちを守るために無下に拒絶もできずにうまくあしらわなければなりません。でも夫のヤンはそんな妻の苦境を考慮できずに、地下活動にある意味逃げて家を不在にすることが増えていきます。美談ばかりじゃない人間の素の感情も描かれていました。

夫妻の息子の反抗的な態度(正義感の強い少年ならではとも言えますが)で思わぬ窮地に陥りますが、ヘックが彼を殺さなかったのは、やはりアントニーナへの気持ちがあったからでしょうかね 悪者扱い(ナチ親衛隊)となっていますが、平和な時代だったら彼もそれなりに善い人だったのかも

ユダヤ人と動物園を守り通したアントニーナの元へヤンが帰ってくるラストで、夫婦の愛を強調していますが、ここはやはりアントニーナの勇気に敬意を表したいと思います


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