2018年1月13日公開 ドイツ 111分
サリヤ(コスティア・ウルマン)は真面目で成績優秀、前途有望な学生として周囲からの期待も大きかった。しかし10代の時に突然、先天性の病気にて視覚の95%を失ってしまう。誰もが無理だという中、サリヤは一流ホテルで働くという夢をどうしても諦めることができなかった。サリヤは夢を実現するため、一世一代の“大芝居”を打つ!なんと目が見えないということを隠して、ミュンヘンにある最高級5つ星ホテルで見習いを始めるのだ。逆境にも負けない決然とした意思を持ったサリヤ。周囲の予想を超え、親友のマックス(ヤコブ・マッチェンツ)の助けを借りながら何とか目が見えないことを隠し、ホテルスタッフからも信頼を勝ち取っていく。持ち前の明るさと努力でホテルの研修課題を順風満幡にクリアしていくのだったが、そんな折ホテルへ配送に訪れたラウラ(アンナ・マリア・ミューエ)に恋をしてしまう。そして彼が慎重に築き上げて来た精巧な偽装が崩れ始めるのだった・・・。徐々に予期せぬトラブルが起こり始め、想像以上に厳しい現実を前に、サリヤは本当の自分を見失ってしまう。順調だったはずのホテルの研修でも問題を起こしてしまう。そしてサリヤは、夢も希望もなくしてしまいそうになるのだが・・・。
95%の視力を失いながら「5つ星ホテルで働きたい」という夢のために大芝居を打った学生の実話の映画化です。5%の視力で見る世界は、殆どぼやけていて歩くことすらおぼつきません。これが実話だということに本当に驚きます
主人公のサリーはスリランカのシンハラ民族の血を引くドイツ人。(でもスリランカというよりインド人っぽい容姿ですね) サリーが視力を失ったときも、これまで通っていた普通校を卒業できた時も、父親はとても冷たい態度で違和感を覚えましたが、後にこの父親は外に女を作って家族を捨てます。サイテー
視力がダメなら聴力と記憶力をフル活用して頑張る彼の努力は頭が下がりますが、サポートをしてくれる母や姉の存在なしではうまくいかなかったかも。
見習いの面接の際にサリーのアドバイスを受けて合格したマックスは、彼の弱視を知っても態度を変えずに協力してくれ、以後二人は親友関係となります。二人は互いの足りない部分を補い合っていきます。この二人の友情が観ていてとても気持ちいいんですね~ 他にも彼の弱視に気付いたホテルの厨房で働くアフガニスタン移民の男性もサリーを助けてくれます。彼は故郷では医師でしたが、ドイツではビザがとれずに皿洗いのような仕事にしか就けないという事情が観客にも示されます。サリーは彼の書類申請の手助けをしてあげるんですね~
弱者の助け合いではありますが、心の通ったエピソードになっています。
順調に研修をこなしてきたサリーですが、実家の困窮を助けるために仕事の掛け持ちをしたことから体調を崩し、更にローラの息子を預かった時に弱視のことを隠していたことがばれたり、仕事で大きなミスをしてしまいます。絶望で未来が見えなくなったサリーを励ましたのはマックスです。サイクリングに連れ出し、一見無茶なことでも二人でできたことがサリーに自信を与えます。最終試験の受験を教官に直訴して認められます。クラインシュミット(ヨハン・フォン・ビューロー)氏は厳しい指導員で、何かと劣るサリーに辛く当たりますが、サリーが自らの状態を告白した後はその努力を正当に評価してくれるんですね
弱視を隠して面接の際、姉から「握手」のサインをアドバイスされるのですが、支配人からの握手に気付かず帰ってしまうという場面があります。これはのちに研修合格の際にも繰り返されるのですが、普通は笑えないシーンをコミカルな仕立てにしています。
物語は、マックスと二人でレストランを開くところで終わります。これはホテルで修行した後のことかな?