2019年2月1日公開 119分
都内にある中堅メーカー・東京建電。営業一課の万年係長・八角民夫(野村萬斎)、通称“居眠りハッカク”はどこの会社にも一人はいる所謂ぐうたら社員。ノルマも最低限しか果さず、定例の営業会議では傍観しているだけの八角は、トップセールスマンである課長・坂戸(片岡愛之助)からその怠惰ぶりを叱責されるが、一人飄々と毎日を送っていた。一方、甘えたサラリーマン根性の部下は完膚なきまでに叩き潰してきた社内で絶対的存在の営業部長・北川誠(香川照之)が進める結果第一主義の方針のもと、部員たちは寝る間を惜しんで働くのだった。そんなある日、突然、坂戸がパワハラで訴えられ異動となる。訴えたのは、年上の部下である八角だった。北川の信頼も厚いエース・坂戸に対するパワハラ委員会の不可解な裁定に揺れる社員たち。そんな折、万年二番手に甘んじてきた営業二課長の原島(及川光博)が新課長として着任。だが、会社の顔である一課で成績を上げられず、原島は場違いすら感じていた。やがて、パワハラ騒動に隠されたある謎が、社員たちの人生、そして会社の存在をも揺るがし始めていく……。(Movie walkerより)
池井戸潤の同名企業犯罪小説の映画化です。
結果至上主義の会社が舞台で、バブルの時代ならいざ知らず、今時こんな考えが通用するとは思いたくもないけれど、案外現実に存在しそうな気もするところが・・やだ
萬斎のサラリーマン役は初めて観ましたが、この人は時代劇の方がはまってますねぇ。笑い方とか話し方はどうしても大仰に感じてしまいます。他にも香川照之、片岡愛之助、立川談春といった歌舞伎や落語界で活躍する面々や、池井戸ドラマ常連俳優が顔を揃えていて、監督も一連の池井戸ドラマの演出を手がけた福澤克雄ですから、これはもう安定の面白さがありました。
物語は原島目線で進みます。彼は気弱で優しい性格で、そのため同期の坂戸に水をあけられ、二番手に甘んじています。定例会議での北川の叱責に怯える様子はまさに子羊のよう 坂戸の失脚で一課を任されたことで、彼の人生が大きく変わるんですね。原島と共に八角の秘密を探ろうとする部下の浜本優衣(朝倉あき)は経理課の新田(藤森慎吾)との不倫関係を清算したばかり。
この新田のキャラが実に狡くて憎たらしいんですね~~。
坂戸の失脚の原因を作った会社のお荷物社員の烙印を押されている八角が、過去にはSクラスの優秀な営業マンだったと知った二人は、何故八角が今のような状況になっているのか、原因を知ろうとするうち、会社が隠す重大な秘密を探り当ててしまうという筋書きです。
利益を追求するあまり不正に手を染めてしまう構図は、わかりやすいパワハラのもとで常態化していきます。一つの会社のみならず、その親会社からの圧力という図式が浮かび上がる「御前会議」が作品の最大の見せ場でもあります。宮野(橋爪功)、村西(世良公則)、梨田(加賀丈史)、徳山(北大路欣也)ら企業のTOPにあたる役員たちのパワーバランスにも注目です。
男たちの保身と欲が渦巻く中で、優衣のドーナツ企画は一種の清涼剤の役割を果たしていました。新田との先の見えない関係に見切りをつけた彼女が、会社を去る決意をしたあとで、せめて自分が会社に貢献した証を残したいと提出した企画の実現のため努力する姿に共感を覚えます。(その邪魔をする「犯人」は推測通りの人物でしたが ほんと、卑怯な奴!)
でもこの映画の一番の見所は、ラストの八角の独白部分にあるのではないかしら? 「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」ではないけれど、世の中に不正は無くならない!から始まる彼の言葉の重さを今一度噛みしめてみるのも必要かと