2019年2月15日公開 アイルランド=イギリス=アメリカ 120分
時は18世紀初頭、アン女王(オリヴィア・コールマン)が統治するイングランドはフランスと戦争中。アン女王の幼馴染で、イングランド軍を率いるモールバラ公爵(マーク・ゲイティス)の妻サラ(レイチェル・ワイズ)が女王を意のままに操っていた。そこに、サラの従妹だと名乗るアビゲイル(エマ・ストーン)が現れる。上流階級から没落した彼女はサラに頼み込み、召使として雇ってもらうことになったのだ。ある日、アビゲイルは、痛風に苦しむアン女王の足に、自分で摘んだ薬草を塗る。サラは勝手に女王の寝室に入ったアビゲイルをムチ打たせるが、女王の痛みが和らいだと知り、彼女を侍女に昇格させる。イングランド議会は、戦争推進派のホイッグ党と、終結派のトーリー党の争いで揺れていた。戦費のために税金を上げることに反対するトーリー党のハーリー(ニコラス・ホルト)は、アン女王に訴えるが、ホイッグ党支持のサラに、女王の決断は「戦争は継続」だと、ことごとく跳ね返される。舞踏会の夜、図書室に忍び込んで、蝋燭の灯りで本を読んでいたアビゲイルは、ダンスホールを抜け出して突然駆け込んできたアン女王とサラが、友情以上の親密さを露わにする様子を目撃してしまう。国を動かす二人と最も近い位置にいるアビゲイルに目を付けたハーリーが、アン女王とサラの情報を流すようにと迫るが、アビゲイルはキッパリと断る。アビゲイルはそのことをサラに報告するが、褒められるどころか「双方と手を組む気かも」と探られ、空砲で脅されるのだった。アビゲイルはサラが議会へ出ている間のアン女王の遊び相手を命じられるが、女王は「サラは国家の仕事より私を優先させるべき」と駄々をこねる。アビゲイルは、女王の亡くなった17人の子供の代わりだという17匹のウサギを一緒に可愛がり、上手く女王をなだめるのだった。アビゲイルはサラの信頼を徐々に勝ち取り、女王のお守役を務める機会が増えていく。いつもストレートに物を言うサラに対し、甘い言葉で褒め称える従順なアビゲイルに女王は心を許していく。議会では、トーリー党が激しく抵抗して増税を食い止める。女官長に就任して以来、初めてその権力に翳りが見えたサラに、今度は女王との関係を揺るがす大きな危機が訪れる。それは、いつの間にか野心を目覚めさせていたアビゲイルの思いがけない行動だった──。(公式HPより)
18世紀イングランドの王室を舞台に、女王と彼女に仕える2人の女性の入り乱れる愛憎を描いた作品です。「大奥の外国版」と宣伝されるだけあって、まさに権力に群がる男女の赤裸々な陰謀術策が映し出され、PG12なのも頷けます。
エピソードのつなぎ方や、エンドロールの流し方(字体も)がTVドラマみたいで見にくかったのも気になりました
宮廷の華やかな暮らしぶりや甘い恋愛劇を期待していたら肩透かしというか、かなりドロドロして生々しい画も登場します 当時の貴族たちの生態を飾ることなく赤裸々に描いているのではないかと思ってしまいます
サラは女王の幼馴染で、親友で、恋人の関係でもあります。孤独な女王が心を許せる唯一の人間で、歯に衣着せない率直な物言いの根底には女王への愛情があるんですね。 男装のサラがアビゲイルと鳥撃ちをするシーンが何度か登場しますが、二人の関係が変わっていく様を端的に現すエピソードになっています。
一方アビゲイルは、父親にギャンブルの質にされ、家も没落する憂き目に遭っています。底辺の境遇から這い上がるチャンスを虎視眈々と狙い、その頭の良さでサラや女王に取り入ります。マシャム卿(ジョー・アルウィン)を夫に選んだのも損得勘定の結果。宮殿の廊下や森での戯れの駆け引きは機知に富み、野性的でスリリングでさえあります。女王の信頼を勝ち取るため、薬草の他にも、女王が亡くした子供の代わりに可愛がっているうさぎを可愛がる「振り」も厭いません。
初めのうち、サラに恩義を感じ忠実だったアビゲイルですが、自分の身が危うくなるとサラに反旗を翻して彼女を陥れます。紅茶に毒を盛ったり、サラの罪をでっちあげたり、かなりエグイやり方です このあたりから、アビゲイルよりサラの方が高潔に見えてくるんですね。
サラは彼女なりに国の行く末を案じ、ホイッグ党のゴドルフィン(ジェームズ・スミス)と手を組みますが、アビゲイルは政治には関心がなく、ただ自分の利益のためにハーリーと手を組んだのですから。
女王に対する愛情もサアビゲイルにはありません。
アビゲイルの策略で女王はサラを遠ざけてしまいますが、ある時うさぎを踏みつけるアビゲイルを見て彼女の本性に気付くんですね。それでも孤独な女王にはもうアビゲイルしかいません。アビゲイル自身も常に今の生活を脅かされる不安と猜疑心の中で孤独です。そもそも彼女は誰も愛せず、自分さえも愛していないように見えました。二人の孤独が迫ってくるようなラストでした。