2015年9月19日公開 フランス 99分 G
戦時中のアルプスの小さな村で暮らす孤児のセバスチャン(フェリックス・ボシュエ)は、家畜や人を襲う「野獣」として村人たちから命を狙われている一匹の犬に出会う。セバスチャンは犬をベルと名づけて村人から守り、ベルとセバスチャンは次第に心を通わせていった。やがて戦争の影が色濃くなると、村にもナチスの捜索の手が伸びるようになる。ナチスからユダヤ人一家を救うため、ベルとセバスチャンは道案内人として冬のアルプス越えに挑むこととなるが……。(映画.comより)
セシル・オーブリー原作の児童文学の実写映画化で、日本ではTVアニメ「名犬ジョリィ」として知られている・・・らしい。このアニメ観てないです。
監督は冒険家でもあり、映画「狩人と犬、最後の旅」のニコラ・バニエ。
アルプスの雄大な山の景色がとにかく美しく迫ってきます。
セバスチャンとおじいさんのセザール(チェッキー・カリョ )には血縁関係がありません。雪山で助けたロマの妊婦がセバスチャンを産み落として亡くなったため、セザールが引き取って、姪のアンジェリーナと育てているのです。セバスチャンにはお母さんは山の向こうのアメリカにいると話していました。村長が持っている時計付きの方位磁針が気に入ったセバスチャンは、母がXmasの贈り物にそれを持って会いにきてくれるのを楽しみにしていました。
羊を襲う野獣の駆除のため山に入ったセザールたちは、親を失ったカモシカの子を助けて連れ帰ります。セザールと別れたセバスチャンは、アンジェリーナの待つ家に帰る途中の川沿いで野獣に遭遇し、それが大きな犬だと気付きます。その犬は人間に虐待されて山に逃げ出して野生化していたのです。彼には野獣がむやみに人に危害を加える存在には思えませんでした。
村にはスイスへの密入国者を取り締まるために占領軍のドイツ兵が駐留していました。兵士は、アンジェリーナのパン屋に兵士用の大量のパンを発注していきました。
(占領下なので村人たちも銃を取り上げられていますが、中には隠している者も。)
学校に行かずに山で過ごしているセバスチャンは、再会した野獣に話しかけ、おじいさんが仕掛けた罠のことを教えます。少しずつ彼らの距離は近づいていきます。野獣はセバスチャンにとって初めてできた友達でした。川で泳ぐと、灰色に汚れていた野獣は真白な姿になります。メスだとわかり、セバスチャンは『美女と野獣』にちなんで「ベル」と名付けて、ベルを山の隠れ家に連れていきました。
村人たちの中には、スイスへの密入国の案内をしている者がいました。ある日、セバスチャンは医師のギョームが子供を連れ大荷物を持った一行の案内をしているのを見かけます。(峠越えにはドイツ側の見張りの情報が必要ですが、提供者が誰かはわかりません。)
ある日、雌鹿を撃とうとするドイツ兵にくってかかったセバスチャンを護ろうと、ベルが兵士に噛みついたことで、大掛かりな山狩りが行われます。野獣とセバスチャンの関係に気付いていたセザールは、一度野生化した犬は信用できないと考えてセバスチャンに嘘を教え、その結果ベルは山狩りの一行に撃たれてしまいます。
隠れ家にいたベルを見つけたセバスチャンは、おじいさんやアンジェリーナがしていたのを真似て傷口を酒で拭いて布を巻きますが、熱が引きません。困ったセバスチャンは、ギョームと取引をして(彼が案内人であることを話さない代わりにベルのことを助けてもらう)、ベルを治療してもらいます。
クリスマスが近づいた頃、峠越えの案内をしていたギョームは狼に襲われそうになったところをベルに助けられます。彼の代わりに、峠越えの案内を買って出たアンジェリーナについて行ったセバスチャンは、峠越えをする家族と親しくなるうち、山の向こうはスイスでアメリカではないと知ります。それを知ったセザールは、セバスチャンに母親のことを話します。
クリスマスの夜。ユダヤ人ならこの夜に決行すると予測したドイツ兵たちが山狩りを始めます。追手の灯りに気付いて夜通し雪山を移動したアンジェリーナたちは、翌朝、彼女の店をよく訪れていた兵士が近づいてくるのを見て慌てますが、その時雪崩が起きます。雪に飲まれたドイツ兵をベルが掘り出すと、彼は、峠で部下が待ち伏せていると伝えます。彼こそが監視状況を渡していた人物だったのです。(彼はアンジェリーナに好意を抱いているように見えましたが、彼女にその気はないようでした。ギョームとも同志以上の関係じゃないようだし。)
雪崩とドイツ兵に阻まれた一行に残された選択肢は、クレバスだらけの氷河を渡ることです。ベルに命綱をつけて慎重に進む一行を、峠で監視していたドイツ兵たちも追い始めます。大きなクレバスに架かった細い氷の橋を最後にベルが渡ろうとした時に落ちてしまい、全員でベルを引き上げるシーンはハラハラしました。
追っ手が渡れないよう氷の橋を砕いて落とし、一行は無事スイス側の案内人と落ち合うことができました。自分もイギリスに渡って抗戦する事にしたアンジェリーナは、ギョームへの手紙をセバスチャンに託します。一人で帰すのかと問う案内人に、彼女は、「(セバスチャンは)一人じゃないわ」と答えるのでした。(いやいや、それはいくらなんでも無謀な気もするんですが)
エンドロールにはセバスチャンが学校に通い始めた様子も出てきます。
セザールが彼を学校に通わせなかったのは「アメリカ」の嘘がばれることを恐れたのかな?