杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

土を喰らう十二ヵ月

2023年06月08日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年11月11日公開 111分 G


(立春)
作家のツトム(沢田研二)は、人里離れた信州の山荘で、犬のさんしょと13年前に亡くなった妻の八重子の遺骨と共に暮らしている。口減らしのため禅寺に奉公に出され、9歳から精進料理を身に着けた彼にとって、畑で育てた野菜や山で収穫する山菜などを使って作る料理は日々の楽しみのひとつだ。とりわけ、担当編集者で恋人の真知子(松たか子)が東京から訪ねてくるときは、楽しさが一段と増す。皮を少し残して囲炉裏であぶった子芋を、「あちち」と頬張る真知子。「おいしい。皮のところがいいわ」と喜ぶ姿に、ツトムは嬉しそうだ。
(立夏)
山荘から少し離れたところに、八重子の母チエ(奈良岡朋子)が畑を耕しながらひとりで暮らしている。時折様子を見に来るツトムを、チエは山盛りの白飯、たくあんと味噌汁でもてなした。八重子の墓をまだ作っていないことを、今日もチエにたしなめられた。帰りには自家製の味噌を樽ごとと、八重子の月命日に供えるぼた餅を持たされた。
(小暑)
塩漬けした梅を天日干しにする季節、ツトムの山荘に文子(檀ふみ)が訪ねてくる。彼女は、ツトムが世話になった禅寺の住職の娘。住職に習った梅酢ジュースを飲みながらの昔話。文子は、亡き母が60年前に住職と一緒に漬けた梅干しを持参していた。「母は、もしツトムさんに会うたらお裾分けしてあげなさい、と言うて死にました」と文子。夜、ひとりになったツトムは、作った人が亡くなった後も生き続けている梅干しの味に泣いた。
(処暑)
チエが亡くなった。義弟夫婦(尾美としのり、西田尚美)に頼まれて山荘で葬式を出すことになったツトムは、大工(火野正平)に棺桶と祭壇を頼み、写真屋(瀧川鯉八)に遺影を頼みと、通夜の支度に大忙しだ。東京から真知子もやって来て、通夜振る舞いの支度を手伝うことに。
夜、思いがけなくたくさん集まった弔問客は、チエに作り方を習ったそれぞれの味噌を祭壇に供えた。
葬儀のあと、真知子を栗の渋皮煮でねぎらったツトムは、「ここに住まないか」と持ち掛ける。「ちょっと考えさせて」と応じた真知子だが、しばらくして、ふたりの心境に変化を生じさせる出来事が起こる――。(公式HPより)




作家・水上勉の料理エッセイ「土を喰う日々 わが精進十二カ月」を原案に、原作の豊かな世界観に着想を得たオリジナルの物語だそうです。料理研究家の土井善晴が、劇中に登場する料理の数々を手がけています。食いしん坊で天真爛漫な真知子がツトムの料理を本当に美味しそうにパクつく姿に思わずお腹が鳴りそうになりました。

長野の人里離れた山荘で1人で暮らす作家のツトムは、山で採れた実やキノコ、畑で育てた野菜などを料理して、四季の移り変わりを実感しながら悠々自適な暮らしを送っています。彼は13年前に他界した妻の遺骨を墓に納めることができずにいるのですが、その理由は特に語られません。


チエの葬儀の後で、義弟夫婦はチエの遺骨をツトムに押し付けます。チエは確かに癖のある人物ですが、義弟の妻はことのほか煙たがっていたようで、夫が頭が上がらないのをいいことに面倒な事は全部ツトムにやらせようとして、凄く嫌な感じ。八重子とチエ母娘の遺骨が並ぶ部屋でツトムは真知子に一緒に住まないかと申し出ますが、彼女は魅力的ねと言いながらも考えさせてと返事を保留します。八重子は真知子にとって仕事の先輩で本を作る面白さを教えてくれた人でした。複雑な気持ち、なんかわかるな~~😔


(白露)
散歩中に剥き出しになった地層を見て、土で自分の骨壺を焼いてみようと思い立ったツトムですが、窯の中で心筋梗塞で倒れてしまいます。たまたま訪れた真知子に発見され病院に運ばれて、ツトムは一命を取り留めます。
(秋分)
退院したツトムに真知子は一緒に住むと伝えますが、死に直面して生きたいと思ったツトムは、死について独りでじっくり考えてみたいと断ります。
(寒露)
死んだつもりになって眠りについたツトム。森のざわめきや動物の鳴き声がやがて鎮まり朝が来てツトムは目覚めます。生きていることを実感した彼は、明日も明後日も生きたいと欲張るから辛くなる、今日一日を生きていればそれでいいと思い、湖に舟を出すと、粉々に砕いた骨を水中に撒きました。これはきっと二人分ですね。
(霜降)
なめこ採りに出かけたツトムは、途中で真知子に会って誘います。好きな人と一緒に食べるご飯が一番うまいと話す彼に、真知子はツトムも知る作家と結婚することを伝えます。ツトムは「良かったじゃないか」と言い、真知子は去って行きます。二人の関係は年が離れていることもあり、生々しさは全くなくていわゆる大人の関係といった風です。
(立冬)
木枯らしが吹き、寒さ身に染みる中、書いて食べて寝る日々が続きます。
(冬至)玄関に置かれていた白菜とみかん。有難く頂戴して早速白菜を樽に漬けます。大根を掘り出しふろふき大根を作り柚子味噌を乗せ、ご飯、梅干し、みそ汁の食卓ができあがります。これで十分!また一年が始まります。「いただきます」


タイトルの「土を喰らう」とは旬を喰らうこと。小芋の網焼きを頬張りながら真知子が嬉しそうに言う「この良い香りは土の匂いなのね」が印象的です。
「四季の移ろいの中で、自然が恵んでくれる食物を有り難く頂くという食に向き合う精神は、今この瞬間を大切に生きることを意味している。自然を慈しみ、人と触れ合い、おいしいご飯を作り、誰かと食べられることに感謝する日々を送る男の姿を通して、丁寧な生き方とはどういうものか、真の豊かさとは何かを問いかけている。」(公式HPより)


こんな風に生きられたらそれはそれで幸せだとは思うけれど、肉や魚を摂らない精進料理の毎日は無理だ~~😣 それでも旬なものを感謝して味わう気持ちは忘れたくないと思いました。

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