杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ぐうたらバンザイ! HDマスター版

2023年06月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
フランスのとある田舎町。ここにアレキサンドル(フィリップ・ノワレ)という農夫が住んでいた。彼は人並以上に体格もよく、力も強かったが生まれつきのなまけ者だった。が、彼の妻(フランソワーズ・ブリオン)は働き者で、ともするとなまけようとする夫を許しておかない。夫は朝寝が大好きなのに、朝早くから女房にたたき起こされ、食事もゆっくりさせてもらえぬまま、その日のいい渡されたスケジュールを消化するために家を飛び出さなければならなかった。遠くにいても、無電連絡によって少しもさぼれない。そうこうするうちに、アレキサンドルの生活を一変させるような大事件が起こった。あの口うるさい女房が交通事故でポックリ死んでしまったのだ。女房の野辺送りをすました彼は、ほっと息をつき早速ベッドにもぐり込み、そのまま深い眠りにおちた。三日後、一向にアレキサンドルが起きる様子がないので、親友のサンガン(ポール・ル・ペルソン)が訪れると、過去十年間の寝不足の償いをするのだという。その彼も、食べずに眠ってばかりもいられない。そこで考えたのはベッドの中で飲み食いする方法だった。買い物は愛犬にさせればいい。それから二カ月、アレキサンドルは一向に起きる様子がなかった。そのうちに、彼に共鳴して仕事を休む者が続出した。村会はこれを重視し、その対策と してアレキサンドルを兵糧攻めにすることにした。こうすれば彼はやがて降参するだろう。愛犬がいつも食料を買いにいくブイロー夫人の食料店に、アガタ(マルレーヌ・ジョベール)というセクシー・ガールがいた。彼女はアレキサンドルに大いに興味をもち、近づいた。ある日、アガタは食料を持ってアレキサンドルの家を訪ねた。そのうちにアレキサンドルがベッドから腰を上げ、外へ出る日がきた。村人にとり、それは奇跡だった。ことの起こりは、彼の愛犬が家出したからだった。彼は一日も犬なしでは暮せないのだ。アレキサンドルの親友サンガンを始め、村人たちはやっと愁眉を開いた。彼がいよいよ野良仕事を始めると思ったからだ。ところが、犬が見つかると釣にいったり散歩をしたり、三〇〇エーカーの畑は荒れるに任せっぱなしだった。そのうちにアレキサンドルとアガタが結婚することになった。教会での式も終わりに近づいた頃、花嫁アガタがふと示した仕草で急にアレキサンドルは、死んだ女房を思い出したからたまらない。恐れをなした彼は、教会の入口で待っていた愛犬を連れて表へ飛び出し、すたこらさっさと逃げ出した。 (Movie walkerより)


フランスの長閑な農村を舞台に、念願だったぐうたら生活を手に入れた男が巻き起こす珍騒動を描いたイヴ・ロベール監督のフレンチコメディです。

アレキサンドルは妻と結婚した翌日から10年間、朝から晩まで休みなく働かされ、犬を飼う事さえ一年以上かかって(サンガンのところで生まれた子犬をずっと預けっ放しだった)やっとお許しが出る始末で、鬱憤が溜まって爆発状態。何しろ妻は指パッチンで自在に夫を操り、夫の後をつけ回してさぼっていないか監視はするわ、自分がスピード違反で捕まった際に目にした警察の無線機をちゃっかり夫の監視に利用するわで恐妻ぶりを存分に発揮していましたのでね。

ところが、突然妻とその両親が事故死してしまいます。(きっかけを作ったのは彼の愛犬なんですけど😁 )葬儀を済ませた彼が惰眠を貪りたくなる気持ちもわかるというものです。この愛犬がまた実に賢く、アレキサンドルの世話を甲斐甲斐しくします。
でもものには限度というものがあります。心配したサンガンや村人たちが、外に出るよう説得しますが、アレキサンドルは聞く耳を持たず、愛犬に買い物をさせ、ベッドで全て事足りるようにして引き籠りを続けていました。

そのうち、彼と同じように働き詰めの農夫や、子供たちが彼の真似をするようになります。サンガンの中にも、本当は彼のようにぐうたらしたい気持ちがあるのですが、このまま皆がアレキサンドルのような生活をするようになれば、村の秩序は崩壊してしまうので、村長を巻き込み何とか彼を外に出そうとあれやこれやの手を尽くしますが、どうにもうまくいきません。

ところが、アレキサンドルに興味を示したアガタの登場で事態は好転。
突然いなくなった愛犬を探して外に出た彼は、やがてアガタと付き合うようになり遂に結婚を決意します。それを聞いたサンガンたちは大喜び。

ところが、結婚式当日、隣に並んだ花嫁の指パッチンの仕草に、前妻との生活を思い出したアレキサンドルは、まっぴらごめんと逃げ出してしまうのです。
アガタは彼が村の大地主だと知ると、更なる富を求めて彼を酷使しようと考えていたのだから、これはアレキサンドルに同情してしまうし、逃げ出して正解だと共感してしまうラストでした。

彼がずっと仕事をせずにぐうたらできるのは、地主であり、これまで働きづめで貯めたお金があるからです。定年後の日本人がのんびり老後を楽しめる時代は既に過去のものとなりつつあります。定年自体が延長され、このままでは死ぬまで働かなければ生活が成り立たないことにもなりかねません。その意味でもアレキサンドルの生き方はやり過ぎ感はありますが羨ましい限りです。

映画に登場する動物たちの、のんびりした姿に癒されます。
妻の目を盗んでキツツキや水鳥たちを眺めるアレキサンドルは実に羨ましそう。
妻たちの葬儀の後でアレキサンドルがまずしたのは、あひるやウサギ、牛を囲いから出すことでした。その後放し飼い状態の彼らが実にのびのび暮らしているのに癒されます。そして何より、愛犬の可愛さ、賢さがたまらなく最早主役と言ってもいいような存在感がありました😁

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