路上で 初めて会話を交わしたかたから サーターアンダーギーをいただいた
初めて と言っても ウォーキングするお姿は よくよく拝見しており
すれ違いざまの雰囲気によっては 会釈をすることもあった ご近所さんである
娘の家から 料理を届けた食器類を まとめて持ち帰るときの玄関前
[お出かけなの?] と お声をかけられ [家に帰るところです]と
初めての会話
これまでに 私が娘の家で 植物の手入れしているところを見かけたこともあったようで
[ここが ご自宅と思っていたわ] とのこと
そして
手作りのサーターアンダーギーを お急ぎ ご自宅から持ってきてくださったというわけ
沖縄のご出身だそうで 私が食べたことのある市販のとは違った 黒糖風味
いつも月刊の冊子を届けてくれているご近所さんからは ストラップ
いただきものには お返しがマナーなのは分かってるけど ご近所さんとは長いお付き合いになるから 物々交換にならないようなタイミングも だいじ
いただきっぱなしでも苦にならない ご近所さんに恵まれた ここは たぶん終の棲家になると思う
私の理想は 夫のリタイヤ後に 房総辺りで 小さくてもいいから 日の出から日没まで陽が当たる家で暮らすこと
だった
ところが あるとき 駅前の住宅展示場へ フラリと立ち寄ったことが 私の人生を狂わせた と言っても過言ではない
いくつかの住宅メーカーを渡り歩いた中の 一か所
鍛えられた営業マンのトークで あれよあれよといううちに 5万円
それは そろそろ築20年になろうとする我が家が建つ土地に どれくらいの家を建てることが可能かを調査してみるための資金だった
20年近いとはいえ 新築するつもりは無かったけれど その気もなくモデルハウスを見学したことの負い目もあって まぁ 我が家の資産価値を知るための5万円ということにしましょう とした その考えも甘すぎて
後に その業種に詳しい友人から聞くところによると [営業マンは5万円を取れたら もう こっちのもの]なのだそう
そして もう一つ 今 思うと 魔のトークとも思える [建てる建てないは別として]
対面の後に 次の話し合いは何月何日と指定され 次の話し合い 次の話し合い となり [建てる建てないは別として]を繰り返しながら 20年前の住まいと比べたら とてつもなく近代的な設備や壁紙などの資料を目の当たりにして動かされる心
その心の底には [建てる建てないは別として] があるので 近代的な住宅で暮らす疑似体験を 巧みな営業トークに乗って楽しんでいたのかもしれない
そうしているうちに いつしか仮の契約と言う段階になり ローンを組む銀行を紹介され ・・・
このような 私の経験を語るに過ぎないにしても これは営業妨害になるのかな? と考えなくもないけれど 最終的には巧みな話術に乗せられた私の失敗体験を いつか何かの折に紹介する必要性を感じていた
言葉巧みに 高齢者が騙されてしまうニュースを見聞きするにつけ その思いは膨らみつつあるところの昨今
当時は50代の私たち夫婦だったから 老化による判断能力の衰えを利用した犯罪には該当しないけれど 今 高齢者となった私からの知恵袋とでも言いますか
幾らかの金銭的損失はともかく 私のように 思い描いていた人生を狂わせてしまうような失敗で 悔やまれる老後を迎えてしまうシニアがいませんように願って
とんとん拍子に建て替えの話は進み 仮契約として100万円
乗り気ではなかった夫も 娘が飼っていたウサギによる部屋の汚れも気になっていたりして 建て替える時期かと妥協できたのかもしれない
けれど 房総方面の小さな家を諦めてない私は 本格的な契約に向かう寸前に まだ決めかねている気持ちを 営業マンに向けて口にしたところ
それまでも 乗り気のない私の態度を うすうす感じていたと思われる その人は [100万円は戻りませんよ!] と それまで見たことのない形相で 私に放ったのである
建て替えとなると 仮住まいが必要となる
そこで浮かび上がった問題が 犬と グランドピアノ
いまでこそペット可の賃貸住宅が増えているけれど 当時は ほとんどがペット不可の上に グランドピアノが占めるスペースである
一時的に家財道具を保管するコンテナの必要性など 具体的な条件が判明していく過程で 夫も仮住まいを確保することに限界を感じ 新たな土地への住み替えを考えるようになっていった
そして 解約する理由として [仮住まいが必須の建て替えには無理があるので 別の土地へ住み替える]との選択をした経緯を 電話で伝えた
ようやく そこで一段落かと思えば そうではなくて
我が家を担当した社員は 新しい土地に当社で建築させてほしい と直々に申し出られたのだったけれど 土地と建築業者の兼ね合いにより それは不可能であることから 丁重に辞退し 息子の将来を重ね合わせてしまう その男性に 夫は[ご縁が切れるわけではないから 近くに来られたらお立ち寄り下さい お酒でも一緒に飲みましょう] と お声をかけた
ありきたりの社交辞令とも思われるセリフではあったけれど 決定的な契約破棄を自覚した苛立ちもあったのでしょう [上半期の決算期で そんな暇はありません]と 明らかに怒りが読み取れる言葉を返して 去って行かれた
支払った105万円のうちの 半分くらいが戻って来たんだっけかな
夫は たびたび 分厚い資料やらを手に お越し下さった職員さんへの謝礼ということで 納得していたけれど
私は [建てる建てないは別として]は 明らかに 判断能力に欠ける私のスキをついた詐欺に近いものがあると あとになって気付かされたのだった
S林が手掛ける住宅は けして悪くないと思う
もし 知友人に新築の予定があるとしたら [S林の家は日本一] と紹介することもあったかもしれないけれど 夫のお誘いに[そんな暇はありません] と 口にするような社員を育てる会社であることを思うと ね
どうか [5万円] と [建てる建てないは別として]には 十分に気を付けて の思いを込めた 今日のつぶやきである
房総の小さな家での暮らしは失ってしまったけど 通りすがりのご近所さんをも楽しませてくれる オリーブのオウチも 悪くない