白日夢 Ⅲ

2007-02-19 06:39:52 | 折りに触れ思うこと

猫に選ばれた私

午後のうたた寝から覚めると、部屋の中に猫が居た。
猫?何処から入ってきたのだろう。
猫はあまり好きではないし、飼ってもいない。
窓も玄関も閉まっている。
それにしてもこの猫、野良猫ではない。
毛並みは良いしなかなかの眉目秀麗?
私をじっと見て、やがて玄関に向かって歩き出すのだけれど、
数歩行っては立ち止まり振り向いては手招きをし「ついて来い」と言った。
確かにそう言ったのだ。
猫が言葉を喋ったのか、それとも私が猫語を理解したのか、そこの所はよく分からないのだけれど、確かに「ついて来い」と聞こえたのだ。

5分ほど歩くとそこは新興住宅地、とある小さな新築間もない家の前へ来ると招き猫は振り向いて「入れ!」と言った。
居間へ通されると南に面した出窓の上に、威風堂々とした一回り大きな猫が寝そべっていた。舐め回すように私を見て品定めをしたのか、おもむろに口を開いたのだ。  「ずいぶん長い間宝くじを買い続けているけど、そんなに金が欲しい理由は何だ」 そうかそういう事か、これはチャンスだとしばし考えた。涙ながらに生活困窮を訴えた方が良いのか、いや小賢しい事は止めよう、しかし正直者は馬鹿を見る、いややっぱり成功法で行くべきだ。

「私は、今のところ健康です。職にも就いています。そこそこの給料も貰っています。世間並みの交際も出来ています。暖かい布団に寝て食べるものも充分です。でもここまで生きてきた中で、足を向けては寝れない程お世話になった人が7人います。その人たちにお礼がしたい!いいえ私の中で青写真は出来ていて出来れば100万円ずつ渡したい!
勿論その時々に充分感謝の言葉も気持ちも表したけど、それでは足りないのです。情けは人の為ならず、あなた達が私にかけてくれた情けはこうやってあなた達自分に返ってくるんですよ! そう言って彼らを幸せにしたいのです」

私は一気にまくし立てた。

 

それから私は、猫を見ると会釈をするようになった。