モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

春を呼ぶ祈り

2021-02-26 23:31:44 | 大人 油絵・アクリル


野中 油彩

大竹です。本日ご紹介させて頂くのは野中さんの油彩の作品です。
えんぶりと呼ばれる、春を呼ぶお祭りの舞手を描いています。見ているだけでも凍えてしまいそうな、雪が降り頻る冷たい空気が伝わってきますね。寒さから身を守る為の着物の厚みや、そこに積もる雪の質感は見事としか言えません。これだけの描写へ持っていく為には、長い時間が必要だったかと思います。
人物を引き立たせる為に、背景の色をどう扱うか悩まれていましたが、油彩の性質を生かし、単純なベタ塗りにならない様に様々な色をほんのり滲ませつつ、全体を邪魔しないバランスの取れた仕上がりとなりましたね。
人物の描写も、絵の前で何時間でもじっくりと眺めていられるほど、細部まで丁重に描かれています。黒やグレーが画面全体を占める中で、烏帽子の美しい赤色が鮮やかに引き締めています。着物はガチガチに凍り冷たく重く、凍てつく空気の中、杖の鳴り物を振りながら踊る姿は神聖ですね。暗い画面の中で照らし出される舞手は、手が真っ赤になるほどの雪の冷たさを、まるで感じていないかのように静かな雰囲気を纏います。農民による春への祈りを込めたお祭りである事をこの表情が表していますね。この時世、外に出ることも躊躇われる様な暗く重い冬の中で、暖かく喜びに満ちた春は何よりも待ち遠しいものです。こちらの作品にも、きっと作者の野中さんによる祈りが込められているのでしょう。

残念ながら今年のえんぶりは中止となってしまったそうですが、全ての人へ暖かい春が来てくれる事を願います。

コメント
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