小原 京美 アトリエ・ミオス代表
現代美術の存在意義は非日常を示唆する(いつまでも当然そこに存在すると思われている常識の根底を揺るがす)こと。鑑賞者は作品を目の前にして「自分なりの答えを見付けられるか?」が問われている。答えが外れる心配は無用であり、見なかった事にしたり、考えることを放棄しなければ結構です。誰かと一緒に体験したら、相手が感じたことが新たな気付きに発展し、思いもよらない答えが見つけられるかもしれません。そんな対話・挑戦の楽しみを知ったら、ジェットコースターですら『敷かれたレール』を走っているだけの、刺激のないものに感じるでしょう。
一旦話を置いておきます。『多様性』が叫ばれる中、今なお『変わっていること』は敬遠されます。自分の基準が普通で当たり前と思っているから、違う人間を寛容しづらい。だから『違い』は、時に他者と衝突を生む原因になるのでしょう。排除するのではなく、存在を受け入れるのが多様性。でもマイノリティを認める→許容されるの一方通行にならぬようには気を付けて。
ジェットコースターの進路が急に変わることはありませんが、世の中は突然変わります。変わることは当然だし、変わっている人がいるのも当たり前になのに、変化に気付かない・見ない振りをし続けて来たツケを払うような形で突如出現したコロナ。日常が大きく変わった世界、予測不可能な未来を『楽しむ姿勢』を持てるかどうかを試されている気がしてなりませんが、その感覚は現代美術や、自分と違う考え方を持つ人との対峙と良く似ていると感じます。変化に対応する力は、一方方向もしくは一つの解決策しか持たない場合、脆い。想定外のことに対し、どんなことを意識し、大切にするか、自分だけの答えを出す訓練が必要でしょう。
教える側と勉強する側、与える→与えられるが一方通行の関係性で成り立つ教育現場では、独創性のある答えを出すことができません。教師だけが正しい答えを持っていて、それを一方的に開示するのではなく『一緒に体験し、影響を受け合い、互いをリスペクトしながら、相互作用を楽しむ』形が理想です。
当校では長期的な交流を通じ、信頼関係を育む中で、そのような可能性を見出してきました。他者・世の中への関心から、これまでとは違うやり方を考えたり挑戦したりするために必要な『変化に対応する力』を得、不安定で不確実な未来を築く。このことに深い所で自覚的でありながら、今年も確かな歩みを続けて参りたいと思います。